第115回(2016.08.19) 「プロジェクトマネジメントを楽しむ」 その115
「日本人がグローバリゼーション下で勝ち抜くための発想転換」(29)
−アベノミクスを成功させるためにー
―グローバル市場で“勝ち抜くための戦略”−(17)
渡辺 貢成
 kosei.watanabe@sweet.ocn.ne.jp
(有)経営組織研究所
第99回 「日本人がグローバリゼーション下で勝ち抜くための発想転換」―グローバル市場で“勝ち抜くための戦略”−(1) 
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A.先月はA町が立派な「第5次中期基本計画」が策定されており、“アベノミクス”の地方創生事業計画として、国から認知され、本年度分の業務予算を獲得したという話だった。Iさんから見ると立派な案でも、不足するところを見つけることは容易だと思う。新しい提案をされると思うが、どのようなアプローチをするのかね。

I.私はこのたびA町の広報から「第5次中期基本計画」を見ることができました。その出来の素晴らしさに感心しました。そこで実施する手法を変えましたので、その手順をお話しします。

@)検討会で町の担当者と知り合ったので、「A町案全般について勉強をさせてもらうため、色々とご質問をさせていただきたい。そして計画書の表面的な部分だけでなく、奥にある重要な考えをお聞きしたいと願っています。理由は、A町の現状と将来に関し、どの程度まで考えているかの実態を知りたい」という申し込みしました。
このアプローチをする理由は私が町にとって未知の人間だからです。
まず、A町から信頼を勝ち取る手順が必要です。

@ 説明を聞く。質問をした内容の確認と、優れた計画書であることをほめます。
相手が正しく理解したことを知りA町担当者は安心と相手に対する信頼の入り口にまで降りてきてくれます。(ここでは質問の質の高さで高得点を獲得します)

A A町案は格調があること、住民への気配り、住民の協力に対する期待が明確にありうること等正しく評価します。また、相手が自信ある内容を大きくほめる作業が、信頼構築のはじめです。

B 次に書かれていない重要案件をそれとなく質問します。何年先を見ているか、グローバル社会に通用する内容かを、質問します。

C ここで2種類の答えが返ってきます。何らかの策を持っているグループとこれから考えますというグループに分かれます。後者は「昔からの仲良しメンバーで課題を解決するグループ」で、前者は、「現在解決策を持たなくても、他者の力を借りてでも課題を解決する心構えを持っているグループ」です。後者は典型的な日本的村社会グループです。前者には次の勉強の機会を貰う必要があります。後者にはこれ以上の追及をしないことにします。関係性が壊れるからです。

A. 面白いね。通常の質問は3つのアプローチがある。「なぜ?」「もし〜だったら?」
「どうすれば?」というように切り込んでいくと思うが?

I.おっしゃる通りですね。でも、大切なことは人間関係を構築することが、最初のアプローチだと考えます。企画した人たちに自分たちの最も大切に思っている部分を理解するまえに、小さなところで、欠点を指摘することは失礼なことだと思います。それ以上に悲しいことは質問者が「企画者が真剣に考えて出した企画の価値を理解する」という、質問者にとって大きな収益を失うことです。

相手を理解することの大切さの事例:「ポストドクター再教育」の話をします。
文部省は技術開発促進の手段として、多くのドクターを社会に送り出す考えを実行しました。しかし、結果約10,000人を超すドクターが就職できないまま、ポストドクターという名称で大学に居残りする状況となりました。
文科省はポストドクターを就職させるための講座を開発する企画案を募集しました。審査の結果、7大学、1研究機関が合格し、1年間講座を3年間、文科省予算で実施しました。最初の1年目で実行した講座を改善し、2年目で効果を見るという形で講座を進めました。
ドクターコースの研究発表会での討議を90分講座に組み込みました。研究発表の後の質疑応答がありました。優秀な生徒が、研究発表の内容の弱点をどんどん追及していきます。
私は講師の立場として、優秀な学生に「あなたは今発表した人の論文からあなたの知らない何を学んだか」質問しました。有能な学生は相手の良さを答えることができませんでした。私の考えですが『日本人は特に高偏差値エリートは米国の権威から学ぶ以外、日本人から学ぶことはないと思っているようです。この発想は日本人のエリートの劣等感の裏返しです。
私たちは日々、優れた人々の発想、行動を見て学ぶことで、バランスの取れた人間になっていきます。人の欠点を見て、俺が優れていると思っても、何の価値も得ることはできません。

この講座以後は、質問者はまず、相手の良さを評価し、その後XX箇所を修正すると価値が高くなるという手法に改めました。人との付き合いの第一歩は相手を評価することから始めるが、戦略の初歩と考えてください。この講座は“ポストドクター問題”の1場面としてNHKのクローズアップ現代で放映され、また彼らの就職に貢献しました。


以上

プロジェクトマネジメントを楽しむ バックナンバー
第1回 プロジェクトを楽しむには多くの仕掛けがいる
第2回 PMを楽しむ仕掛けは時間が生み出す
第3回 基礎をしらないとPMは楽しくならない
第4回 仕事を減らす楽しみを覚えよう   (2)  (3)


第7回 行動の中から楽しみを生み出そう(1)
第8回 行動を頭に合わせよう(2)
第9回 行動を頭に合わせよう(3)
第10回 目的があって仕事がある(1)   (2)   (3)

第13回 日本の『現場力』を再度強化しよう(1)
 
  (2)   (3)  (4)  (5)  (6)  (7)  (8)  (9)  (10)

第23回 「何か変だな」(1)〜「お客様は神様か?」
第24回 「何か変だな」(2)〜「頭を使う人々が、(生産性に)頭を使わないのはなぜ?」
第25回 「何か変だな」(3)〜「問題と課題の違いがわかるかな?」
第26回 「何か変だな」(4)〜「資格を取っても役に立たない?」
第27回 「何か変だな」(5)〜「「物事」とは何か?」
第28回 「何か変だな」(6)〜「タテマエとホンネ」とは何か?
第29回 「何か変だな」(7)〜「カタカナ言葉と漢字」
第30回 「何か変だな」(8)〜「これからは日本の時代って本当?」
第31回 「何か変だな」(9)〜「ものづくりは技術が基盤って本当?」
第32回 「何か変だな」(10)〜「サービスはタダか、サービスはマネーか?」
第33回 「何か変だな」(11)〜「少子化問題と一人っ子政策の討論」
第34回 「何か変だな」(12)〜「何か変だな!講演会」
第35回 「何か変だな」(13)〜「何か変だな!講演会2」
第36回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(1)〜PMOに消火活動チームの設置
第37回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(2)〜働く女性のために小学校の低学年児童の居残りは学校が面倒を見たら!
第38回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(3)〜アイデアは出すことより、実行+が難しい。実行が難しいから、皆考えなくなる
第39回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(4)〜How to の時代からWhat toへの転換
  (5)  (6)  (7)  (8)  (9)  (10)  (11)  (12)  (13)  (14)  (15)

第51回 「プロジェクトを実践して楽しもう!」(1)〜What toからHow to enjoy project managementへの転換
第52回 「プロジェクトを実践して楽しもう!」(2)―緊急時の対策― 〜What toからHow to enjoy project managementへの転換
  (3)  (4)  (5)  (6)  (7)

第58回 「プロジェクトを実践して楽しもう!」―情報を活用する能力(1)―〜What toからHow to enjoy project managementへの転換
  (2)  (3)  (4)  (5)

第63回 「世界が変化している。原理・原則を知って変化に対応しよう」―ビジネスの基本に戻ろう(1)― −変わる基本、変わらぬ基本の理解−   
  (2)  (3)  (4)  (5)  (6)  (7)  (8)  (9)  (10)  (11)  (12)

第75回 「世界が変化している中で、日本人は自分のことをよく知っているのか」―勉強をしたバカとは何か勉強しよう(1)― 
  (2)  (3)  (4)  (5)  (6)  (7)  (8)   (9)  (10)  (11)  (12) 

第87回 「日本人がグローバリゼーション下で勝ち抜くための発想転換」−アベノミクスを成功させるためにー
“想定外”と“ゼロベース発想”−(1)

  (2)  (3)   (4)   (5)   (6)  (7)   (8)   (9)   (10)   (11)    (12)  

第99回 「日本人がグローバリゼーション下で勝ち抜くための発想転換」―グローバル市場で“勝ち抜くための戦略”−(1)
 
第159回 「日本人がグローバリゼーション下で勝ち抜くための発想転換」(73)―日本がグローバル市場で勝ち抜くためへの反省と提案−(1)

 
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