第75回(2013.04.19) 「プロジェクトマネジメントを楽しむ」 その75
「世界が変化している中で、日本人は自分のことをよく知っているのか」
―勉強をしたバカとは何か勉強しよう(1)―

渡辺 貢成
 kosei.watanabe@sweet.ocn.ne.jp
(有)経営組織研究所



A.新年度になったね。昨年度は世界がどう変わってきたかを議論してきたが、先月の議論で「勉強したバカ」が話題になった。情報が多い世界に住みながら自分のことをよく知らない人が大勢いるとは由々しき問題だな。本年度は私達で「日本人は今何を考えるべきか」議論してみたい。まず、ここ10年間、日本人が行動してきた問題点の反省を含めて検討しようじゃないか。

B.実は昨年皆さん方と議論して、私の知的レベルが上がったためか、何かまわりの人と話があわなくなって困っています。自分が確信を持って話とことを周囲は受け付けてくれなくって失望し、今は苛立ちに変わっています。

C.私も以前なら美徳と思ったことが、行き過ぎた美徳が多すぎると感じるようになった。

A.具体的な話を聞かないと分からないが、大方想像がつくよ。 

D.私は違和感より日本の現状を心配しています。なんら有効な手を打っていないから心配です。

A.その通りだな。君が思う現状を話してくれたまえ。

D.わかりました。ロバート・J・シャピロ著「2020」10年後の世界新秩序を予測する」によると、日本とヨーロッパ各国は2つの点で衰退するだろうと予測しています。理由は「グローバリゼーション」に乗り遅れたこと、「少子・高齢化」が始まっていることです。日本は戦後一貫してアメリカの真似をして成功し、発想がその延長で今日に至っており、グローバリゼーションの真の意味を理解してこなかったと思います。

B.それはどういうことかね。

D.1989年に始まるソ連を中心とした共産主義体制の崩壊で、欧米、日本は中国やインドの膨大な労働力や資源にアクセスできるようになりました。しかし、新興国には技術と金がありません。そこで國際金融資本は現実の貿易で回っている実経済の金額を上回る金をつくり出す方式を考えました。デリバティブというリスクをヘッジする金融です。これで貿易額の100倍以上の金がグローバル市場で回り始めました。国際金融資本は新興国へ膨大な金と技術を提供することで新興国という大きなマーケットを創り出しました。これを可能ならしめたのはインターネットの普及と関連するICT技術です。この効果を欧州、日本は過小評価してきました。

C.そういえば、MS(マイクロ・ソフト)とインテルは新興国むけの低価格PC(パソコン)の発売を目論んだ。MSのOSとインテルのMPU以外のすべての部品に関する技術情報を公開し、必要に応じて資金援助し、従来の1/3以下の価格で発売できる体制を整え、莫大な収益をあげている。アップルはiPodの開発では、iTuneという店をネット上で開き、安値で音楽を購入できるBM(ビジネス・モデル)を開発し、独占的な販売に成功し、一挙に株価総額で最高企業に復活したね。

B.韓国のサムスンは新興国市場に狙いを定め、各国の消費者の潜在ニーズを掴み、日本企業が開発した家電製品をいち早く改良し、不要機能を削除し、各国のニーズを取り入れた安値製品を販売し、一人勝ちする体制を築いてしまった。

D.その通りです。グローバル市場は規制のない社会です。独占的な企業がグローバルの持つ特徴を生かすことで、独占的利益をえる市場だということを日本の企業は理解していなかった。

B.そういえば日本の家電産業はまだ数社で、国内市場で自滅的安値競争をしているね。

D.問題は「ものづくり=技術」、良い製品は世界中に売れるという傲慢な考えが日本人の中に生まれていたことです。これに対し、サムスンは私の見る限り、松下幸之助の2番手商法を取り入れています。(2番手商法とは顧客との関係性構築を商売の第一とし、顧客の潜在ニーズを取り入れた商品を提供する。金のかかる技術開発は当面おこなわず、競争相手の技術を取り入れる。新商品が市場で認知するまでの期間に開発企業は広告費に多額の金を使う。2番手企業はその間無駄金は使わず、量産体制を準備して時を待つ。新商品が売れ始めると口コミで爆発的売れ出す。準備の整わない開発企業は生産が間に合わず2番手企業が売りまくり漁夫の利を得る)。
 日本の家電各社は優秀な人材を集めていながら、グローバル市場の認識の甘さ、サムスンという企業が韓国企業でありながら、54%の外資に支配される企業であることを理解していない。「ものづくり=技術」とは職人の発想で、日本人全員がマスコミのキャンペーンに毒された「勉強したバカ」だった。

A.Dさんありがとう。今日の“落ち”は痛烈だったな。来月もこの調子でたのむ。

以上

プロジェクトマネジメントを楽しむ バックナンバー
第1回 プロジェクトを楽しむには多くの仕掛けがいる
第2回 PMを楽しむ仕掛けは時間が生み出す
第3回 基礎をしらないとPMは楽しくならない
第4回 仕事を減らす楽しみを覚えよう   (2)  (3)

第7回 行動の中から楽しみを生み出そう(1)
第8回 行動を頭に合わせよう(2)
第9回 行動を頭に合わせよう(3)
第10回 目的があって仕事がある(1)   (2)   (3)

第13回 日本の『現場力』を再度強化しよう(1) 
  (2)   (3)  (4)  (5)  (6)  (7)  (8)  (9)  (10)

第23回 「何か変だな」(1)〜「お客様は神様か?」
第24回 「何か変だな」(2)〜「頭を使う人々が、(生産性に)頭を使わないのはなぜ?」
第25回 「何か変だな」(3)〜「問題と課題の違いがわかるかな?」
第26回 「何か変だな」(4)〜「資格を取っても役に立たない?」
第27回 「何か変だな」(5)〜「「物事」とは何か?」
第28回 「何か変だな」(6)〜「タテマエとホンネ」とは何か?
第29回 「何か変だな」(7)〜「カタカナ言葉と漢字」
第30回 「何か変だな」(8)〜「これからは日本の時代って本当?」
第31回 「何か変だな」(9)〜「ものづくりは技術が基盤って本当?」
第32回 「何か変だな」(10)〜「サービスはタダか、サービスはマネーか?」
第33回 「何か変だな」(11)〜「少子化問題と一人っ子政策の討論」
第34回 「何か変だな」(12)〜「何か変だな!講演会」
第35回 「何か変だな」(13)〜「何か変だな!講演会2」
第36回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(1)〜PMOに消火活動チームの設置
第37回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(2)〜働く女性のために小学校の低学年児童の居残りは学校が面倒を見たら!
第38回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(3)〜アイデアは出すことより、実行+が難しい。実行が難しいから、皆考えなくなる
第39回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(4)〜How to の時代からWhat toへの転換
  (5)  (6)  (7)  (8)  (9)  (10)  (11)  (12)  (13)  (14)  (15)

第51回 「プロジェクトを実践して楽しもう!」(1)〜What toからHow to enjoy project managementへの転換
第52回 「プロジェクトを実践して楽しもう!」(2)―緊急時の対策― 〜What toからHow to enjoy project managementへの転換
  (3)  (4)  (5)  (6)  (7)

第58回 「プロジェクトを実践して楽しもう!」―情報を活用する能力(1)―〜What toからHow to enjoy project managementへの転換
  (2)  (3)  (4)  (5)

第63回 「世界が変化している。原理・原則を知って変化に対応しよう」―ビジネスの基本に戻ろう(1)― −変わる基本、変わらぬ基本の理解−
  (2)  (3)  (4)  (5)  (6)  (7)  (8)  (9)  (10)  (11)  (12)

第75回 「世界が変化している中で、日本人は自分のことをよく知っているのか」―勉強をしたバカとは何か勉強しよう(1)― 
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第87回 “想定外”と“ゼロベース発想”−(1)
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第99回 「日本人がグローバリゼーション下で勝ち抜くための発想転換」―グローバル市場で“勝ち抜くための戦略”−(1)
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