第22回(2008.10.10) 「プロジェクトマネジメントを楽しむ」 その22
日本の『現場力』を再度強化しようーIT産業の遍歴―(10)
渡辺 貢成
 kosei.watanabe@sweet.ocn.ne.jp
(有)経営組織研究所

1.先月9月号の解説
9月号の現場力の話はハードとソフトのエンジニアリングの話しをした。従来はモノをつくるが主体であったが、社会の充実度が高まると、顧客満足度が重要視される。結果はエンジニアリングだけでは済まされない。言葉を変えると「エンジニアリングと心」で成り立つ。サービスがクローズアップされると、逆に手っ取り早く、サービスの手法が取り入れられ、ものごとの基本が無視される傾向が出る。手っ取り早さが現代の風潮で、ここに社会が崩れ始める要因が潜んでいる。旅館のサービスで考えてみると、心だけでおもてなしはできない。顧客を満足させる手順がある。顧客を満足させる設計(空間設計、到着から出発までの綿密な手順、個々の料理、接客術)がある。設計し、実行するまでがエンジニアリングである。心はこの個々の行動において発揮されるので、この基礎となるエンジニアリングなしには、心も顧客に通じない。
9月号ではこの考えに基づき、今グローバルで活躍中のプラント建設業界のエンジニアリングの説明をした。これはものごとの基本の話しである。今回はIT業界の話しをする。

2.プラント建設産業とIT産業のエンジニアリング業務の比較
   

3.IT業界のプロジェクトのライフサイクル設計
@構想計画:構想計画が行われているケースが少ない。プラント建設の発注者はプランとからの製品で食べているから、構想計画が企業の死命を制する。一方、ITプロジェクトの発注者はITを専門とした企業でないから、構想計画に無頓着である。ITプロジェクトの成功率の低さの要因の大きな部分がここに存在する。
A契約:非常に曖昧な契約となっている。構想が明確でないと、発注者社内の経営者の意図、IT専門家、業務の現場間のコンセンサスが得られにくい。現実には行われていないと判断される。(ソフト・システムズ・アプローチが実施されているケースは少ない)
Bソリューションパッケイジ:IT業界では便利なことに、顧客の生産性を高めるパッケージソフトが多く存在する。これらは「エンジニアリング+心」の心の部分で顧客満足度ツールといえる。手っ取り早くこれらのパッケイジが使えれば顧客満足度が上がり、プロジェクトは万々歳である、ことになる。構想計画など不要であると考えるのが人情である。
 外資系のITベンダーはソリューションと称するパッケイジの提供で、発注者に構想計画なしでも大丈夫という魔術を掛けてしまい、IT業界はベンダーが顧客の要求仕様を提案する習慣が生まれた。
C都市計画(EA)の概念の導入
 発注者は便利なソリューションパッケイジに飛びついた。ファッションで言うとカバンはルイビトン、服はサンローラン、靴はXXXと関連性にない組み合わせで都会を歩くから、目が肥えてくるとそのスタイルは「田舎出の成金」に見えてくる。そこで例の外資系ベンダーはバラバラな思想で設計をしては効果が出ないだけでなく、弊害がある。私共が都市計画をしてあげます。企業として統一の取れた設計思想(エンタープライズ・アーキテクチャという思想を提案し、私どもにお任せ下さいと提案し、EAがIT業界で流行となる。しかし、この外資は構想計画の重要性を認識し、経営コンサルティング企業を買収し、ビジネス体制を整えての提案であるが、日本企業はことの重大さを理解していないから、従来からの体制維持で乗り切れると考えている。

ここまでがIT業界のエンジニアリングの遍歴である。この結果がどうなるか来月号のお楽しみである。

以上


プロジェクトマネジメントを楽しむ バックナンバー
第1回 プロジェクトを楽しむには多くの仕掛けがいる
第2回 PMを楽しむ仕掛けは時間が生み出す
第3回 基礎をしらないとPMは楽しくならない
第4回 仕事を減らす楽しみを覚えよう   (2)  (3)

第7回 行動の中から楽しみを生み出そう(1)
第8回 行動を頭に合わせよう(2)
第9回 行動を頭に合わせよう(3)
第10回 目的があって仕事がある(1)   (2)   (3)

第13回 日本の『現場力』を再度強化しよう(1) 
  (2)   (3)  (4)  (5)  (6)  (7)  (8)  (9)  (10)

第23回 「何か変だな」(1)〜「お客様は神様か?」
第24回 「何か変だな」(2)〜「頭を使う人々が、(生産性に)頭を使わないのはなぜ?」
第25回 「何か変だな」(3)〜「問題と課題の違いがわかるかな?」
第26回 「何か変だな」(4)〜「資格を取っても役に立たない?」
第27回 「何か変だな」(5)〜「「物事」とは何か?」
第28回 「何か変だな」(6)〜「タテマエとホンネ」とは何か?
第29回 「何か変だな」(7)〜「カタカナ言葉と漢字」
第30回 「何か変だな」(8)〜「これからは日本の時代って本当?」
第31回 「何か変だな」(9)〜「ものづくりは技術が基盤って本当?」
第32回 「何か変だな」(10)〜「サービスはタダか、サービスはマネーか?」
第33回 「何か変だな」(11)〜「少子化問題と一人っ子政策の討論」
第34回 「何か変だな」(12)〜「何か変だな!講演会」
第35回 「何か変だな」(13)〜「何か変だな!講演会2」
第36回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(1)〜PMOに消火活動チームの設置
第37回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(2)〜働く女性のために小学校の低学年児童の居残りは学校が面倒を見たら!
第38回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(3)〜アイデアは出すことより、実行+が難しい。実行が難しいから、皆考えなくなる
第39回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(4)〜How to の時代からWhat toへの転換
  (5)  (6)  (7)  (8)  (9)  (10)  (11)  (12)  (13)  (14)  (15)

第51回 「プロジェクトを実践して楽しもう!」(1)〜What toからHow to enjoy project managementへの転換
第52回 「プロジェクトを実践して楽しもう!」(2)―緊急時の対策― 〜What toからHow to enjoy project managementへの転換
  (3)  (4)  (5)  (6)  (7)

第58回 「プロジェクトを実践して楽しもう!」―情報を活用する能力(1)―〜What toからHow to enjoy project managementへの転換
  (2)  (3)  (4)  (5)

第63回 「世界が変化している。原理・原則を知って変化に対応しよう」―ビジネスの基本に戻ろう(1)― −変わる基本、変わらぬ基本の理解−
  (2)  (3)  (4)  (5)  (6)  (7)  (8)  (9)  (10)  (11)  (12)

第75回 「世界が変化している中で、日本人は自分のことをよく知っているのか」―勉強をしたバカとは何か勉強しよう(1)― 
  (2)  (3)  (4)  (5)  (6)   (7)   (8)  (9)  (10) (11)   (12)

第87回 “想定外”と“ゼロベース発想”−(1)
  (2)   (3)  (4)  (5)     (6)   (7)    (8)   (9)    (10)  (11)   (12)  

第99回 「日本人がグローバリゼーション下で勝ち抜くための発想転換」―グローバル市場で“勝ち抜くための戦略”−(1)
  (2)     (3)   (4)    (5)   (6)   (7)    (8)   (9)   (10)    (11)   (12)   (13)   (14)  
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