第66回(2012.07.13) 「プロジェクトマネジメントを楽しむ」 その66
「世界が変化している。原理・原則を知って変化に対応しよう」
―ビジネスの基本に戻ろう(4)―
−変わる基本、変わらぬ基本の理解−
渡辺 貢成
 kosei.watanabe@sweet.ocn.ne.jp
(有)経営組織研究所


−変わる基本、変わらぬ基本の理解−
「世界が変化している。原理・原則を知って変化に対応しよう」―ビジネスの基本に戻ろう(1)― 12年04月

−変わる基本、変わらぬ基本の理解−
「世界が変化している。原理・原則を知って変化に対応しよう」―ビジネスの基本に戻ろう(2)― 12年05月

−変わる基本、変わらぬ基本の理解−
「世界が変化している。原理・原則を知って変化に対応しよう」―ビジネスの基本に戻ろう(3)― 12年06月




A.今月は契約書に添付される書類の話をしましよう。
私たちは契約書なしで仕事をさせられるケースが多い。従って契約書に添付する書類と言ってもわからないかもしれないが、海外の大きなプラント契約では技術仕様書(Technical Specification)とファイナンス仕様書(Finance Specification)が添付されます。簡単に言えば技術の仕様書と金銭的な条件を書いたもので、技術仕様書には守るべき法律・条令、スタンダード、プラクティスが添付されている。この知識はグローバル関連の仕事をする時役に立つから理解しておいた方がいい。当時100億円のプラント輸出でドミニカ共和国というサトウキビとバナナが主産業のカリブ海の島に石油製油所を建設する仕事でね、積み上げて1メーターぐらいになる英語の書類が送られてきた。

B.見積もり期間はどのくらいでしたか。

A.4ヶ月ぐらいでとても全部読みきれない。契約書は翻訳し、間違いなく読めるようにし(理由:契約書の英語はラテン語から来ているので辞書を引いても簡単にわからないから)、技術仕様車は英文でくまなく読んだ。ただ、この手の英語はwill, would, shall, should, adhereなどの単語が書かれており、その正しい意味の相違がわからず苦労したね。
B.それは何を意味するのですか

A.「絶対に守れ」、「守るのだけど場合によっては変更を認めるかも知れない」と読み取ることもできる。その言葉のニュアンスは母国語の人間しかわからないと思った。

B.契約方式で勉強になったことは何でしたか。

A.契約書とその添付書類の優先順位のことが書いてある。まず、最優先書類は契約書です。次が発注者の技術仕様書、ファイナンス仕様書、次がスタンダード、プラクティスの順だ。これは各書類内の記載事項で相互に矛盾があった場合、この優先順位で判断せよといっている。

B.受注者が契約書に添付した見積仕様書は認められていますか。

A.認められているが、発注者の提供した書類より優先順位が低いと書いてある。

B.では、見積金額はその仕様書に基づいた金額なのにおかしいですね。

A.いやいや、そうとも云えないんだ。私たちが出す見積もりに添付する書類は顧客の書類より膨大になるので、かれらはそれを読んでいる暇がないんだ。内容はその後の打ち合わせで確認していく事項なので仕方がない。

B.その他、学ぶことがありましたか。

A.シェル石油の技術仕様書の最初に、この製油所は“Minimum Requirement”で設計せよと書かれてあった。「最低限の仕様で設計しなさい」という指示です。

B.それはどのような意味ですか。

A.シェル石油の説明によると、プラントはシンプルで、必要最低限の仕様で設計しなさいという意味です。理由を聞くと、シンプルなものは故障が少なく、運転も誤りなく操作でき、安心だというのです。

B.日本のお客さんはあれも欲しい、これも加えろときりがないのに比べると大違いですね。

A.次は、スタンダードに関する思想です。できるだけ業界や社会がつくったスタンダードを採用します。そして自社に当てはまらない時は、そこの部分だけを取り出して、シェルはこのように改定すると書かれています。

B.それは、どのような利点があるのですか?

A.簡単です。シェルはオランダの会社ですが、米国のAPI(American Petroleum Standard)を採用しています。APIスタンダードを知っている人間は世界中に大勢います。多くの人々がシェルの仕事に参加できるという利点をシェルは社会に提供しています。そして都合の悪い部分だけは勉強してくださいねと要求している。その変更箇所が少ないことで関係者が助かっています。

B.日本企業のスタンダードは企業ごとに違うため、業者の労力が増えます。

A.欧米の企業は関係者が残業しなくてもできるシステムを、社会全員で守っているところが素晴らしいと思いました。従ってシェルの仕事は打ち合わせ頻度が極端に少ないことで助かりました。日本の顧客の半数の時間で作業が終了しました。

以上


プロジェクトマネジメントを楽しむ バックナンバー
第1回 プロジェクトを楽しむには多くの仕掛けがいる
第2回 PMを楽しむ仕掛けは時間が生み出す
第3回 基礎をしらないとPMは楽しくならない
第4回 仕事を減らす楽しみを覚えよう   (2)  (3)

第7回 行動の中から楽しみを生み出そう(1)
第8回 行動を頭に合わせよう(2)
第9回 行動を頭に合わせよう(3)
第10回 目的があって仕事がある(1)   (2)   (3)

第13回 日本の『現場力』を再度強化しよう(1) 
  (2)   (3)  (4)  (5)  (6)  (7)  (8)  (9)  (10)

第23回 「何か変だな」(1)〜「お客様は神様か?」
第24回 「何か変だな」(2)〜「頭を使う人々が、(生産性に)頭を使わないのはなぜ?」
第25回 「何か変だな」(3)〜「問題と課題の違いがわかるかな?」
第26回 「何か変だな」(4)〜「資格を取っても役に立たない?」
第27回 「何か変だな」(5)〜「「物事」とは何か?」
第28回 「何か変だな」(6)〜「タテマエとホンネ」とは何か?
第29回 「何か変だな」(7)〜「カタカナ言葉と漢字」
第30回 「何か変だな」(8)〜「これからは日本の時代って本当?」
第31回 「何か変だな」(9)〜「ものづくりは技術が基盤って本当?」
第32回 「何か変だな」(10)〜「サービスはタダか、サービスはマネーか?」
第33回 「何か変だな」(11)〜「少子化問題と一人っ子政策の討論」
第34回 「何か変だな」(12)〜「何か変だな!講演会」
第35回 「何か変だな」(13)〜「何か変だな!講演会2」
第36回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(1)〜PMOに消火活動チームの設置
第37回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(2)〜働く女性のために小学校の低学年児童の居残りは学校が面倒を見たら!
第38回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(3)〜アイデアは出すことより、実行+が難しい。実行が難しいから、皆考えなくなる
第39回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(4)〜How to の時代からWhat toへの転換
  (5)  (6)  (7)  (8)  (9)  (10)  (11)  (12)  (13)  (14)  (15)

第51回 「プロジェクトを実践して楽しもう!」(1)〜What toからHow to enjoy project managementへの転換
第52回 「プロジェクトを実践して楽しもう!」(2)―緊急時の対策― 〜What toからHow to enjoy project managementへの転換
  (3)  (4)  (5)  (6)  (7)

第58回 「プロジェクトを実践して楽しもう!」―情報を活用する能力(1)―〜What toからHow to enjoy project managementへの転換
  (2)  (3)  (4)  (5)

第63回 「世界が変化している。原理・原則を知って変化に対応しよう」―ビジネスの基本に戻ろう(1)― −変わる基本、変わらぬ基本の理解−
  (2)  (3)  (4)  (5)  (6)  (7)  (8)  (9)  (10)  (11)  (12)

第75回 「世界が変化している中で、日本人は自分のことをよく知っているのか」―勉強をしたバカとは何か勉強しよう(1)― 
  (2)  (3)  (4)  (5)  (6)   (7)   (8)  (9)  (10) (11)   (12)

第87回 “想定外”と“ゼロベース発想”−(1)
  (2)   (3)  (4)  (5)     (6)   (7)    (8)   (9)    (10)  (11)   (12)  

第99回 「日本人がグローバリゼーション下で勝ち抜くための発想転換」―グローバル市場で“勝ち抜くための戦略”−(1)
  (2)    (3)   (4)    (5)   (6)   (7)    (8)   (9)   (10)    (11)   (12)    (13)   (14) 
  (15)   (16)    (17)   (18)  (19)   (20)  (21)   (22)   (23)   (24)   (25)   (26)   (27)   (28)   (29)    (30)   (31)   
 

 
一覧に戻る
スポンサードリンク
読者からのコメント

■本稿に対するご意見,ご感想をお聞かせください.■

は必須入力です
コメント
自由にご記入ください

■氏名またはハンドル名
■会社名または職業
■年齢

  
このコンテンツは「プロジェクトマネージャー養成マガジン」としてメルマガで配信されています.メルマガの登録はこちらからできます.