第31回(2009.07.14) 「プロジェクトマネジメントを楽しむ」 その31
「何か変だな」(9)〜「ものづくりは技術が基盤って本当?」
渡辺 貢成
 kosei.watanabe@sweet.ocn.ne.jp
(有)経営組織研究所

「顧客は神様か?」−(1)08年11月号
「頭を使う人々が、(生産性に)頭を使わないのはなぜ?」−(2)08年12月号
「問題と課題の違いがわかるかな?」−(3)09年1月号
「資格を取っても役に立たない?」−(4)09年2月号
「物事」とは何か?(5)09年3月号
「タテマエとホンネ」(6)09年4月号
「カタカナ言葉と漢字」(7)09年5月号
「これからは日本の時代って本当?」(8)09年6月号
−「ものづくりは技術が基盤って本当?」(9)09年7月号

B.私もこのコーナーのお陰で勉強が楽しくなりました。新聞を見ますと、日本はものづくりだ、技術だと今でも騒がれています。その通りで日本はものづくり、技術もいい。液晶も、太陽発電パネルも世界一といわれていますよね。昔半導体メモリのDRAMで開発・設計、生産の現場技術者、技能者すべてが抜群で製品性能は優れ、世界制覇したと聞きましたが、いつの間にか、韓国のサムスンに世界市場を奪われてしまいましたね。液晶も1997年では日本80%韓国20%が、2003年では日本は30%を割り、韓国39%、台湾32%です。よくわからないのですが、新聞がウソをついているのですかね?

A.ははん! なかなか鋭い質問を用意してきたね。新聞が言っている技術や製品は世界一は本当ですよ。

B.製品が世界一でなぜ負けてしまうのですかね?

A.君も勉強しているから、考えてごらんよ

B.でも、新聞だけでなく、偉い学者先生も、ものづくりは技術が大切だといっていますよ。おまけに、巧みの技を学ばせる学校までつくっていますよね。私ごときが判るわけありませんよ。

A.なるほど。その通りだね。でも、新聞も、偉い先生も皆正しいよ。サムスンは日本の半導体製造メーカーから日本の技術を聞き出して、日本の技術で、韓国市場プラス米国市場に狙いをつけて、大きな設備投資をした結果、日本の製品より数段安価な商品をつくった。全部日本の技術だから、新聞や学者先生の発言はすべて正しいよ。

B.それじゃ経営者が悪いってことになりますよね。

A.日本の経営者は悪くないよ。国内の競争相手に負けまいと頑張っているからね。ただ、目が国内しか考えていなかっただけだよね。

B.でも、それじゃ国際競争に勝てませんよね

A.いい質問だね。でも政府が推進している政策を見てごらん。日本を代表する国際空港の成田は3,000メータ級滑走路が1本だよね。その代わりローカル空港は各県にある。韓国は成田の空港の3倍以上のものを建設し、いまやハブ空港としての機能を発揮している。コンテナ船の釜山基地は日本国内のコンテナ船港すべてを集めた規模を持っている。今、米国、中国間貿易は日本海経由が最短距離で、日本行きのコンテナも釜山経由が多いと聞いているよ。

B.それでは、国の競争力がなくなりませんか。

A.では聞くけれど、国の政策とは誰が決めるの。国民でしょ。皆が選んだ政党が決めているよね。日本の国民が選挙でグローバルなことを考えたことある。韓国に勝つことを考えたことがある。国民が目先のことを考え、ローカル空港が欲しい。港が欲しい、道路が欲しい。目先の小さなことに興味が集中しているよね。韓国民は日本に勝つことを考えているが、日本人は小さなことに執念を燃やしている。小さなことが気になり、コンセンサスを求めるから、大儀がなくなるってしまう。日本では国民の意欲が目先になっているから総論賛成、各論反対で皆先送りになる。政府や役所を非難できないよね。

B.なるほどね。ITのプロジェクトでもお客さんは、大きなところに関心がなく、細かいことをたくさん追加してきます。人のことをいえませんね。自分がやれといわれると、安全な選択をしていますね。経営者が安全な選択をするのもわかりますね。でも、日本はよくなるのですかね。

A.いい質問だね。ここで君の最初の質問にお答えする。日本は「技術はあるが、戦略がない」。韓国は「日本の技術を使って、戦略で金もうけしている」。
日本はミドルの質がいいし、金もあるから、潜在的に希望はある。これは世界的に見て、うらやましい状況だが、社会がコンセンサスを求めすぎるので「戦略崩壊自助努力の原理」(小さいことが優先され、戦略的大儀が消滅する原理)が働き、気がついたら戦略が自然消滅しているんだ。戦略を決断できる人材がトップにならないと何時までも問題は解決できないね。国も各省庁もばらばらな戦略で一貫性がない。政党は私が言わなくとも皆わかっている。
そうそう。この6月に「戦略の失敗学」という本が出版された。ミリオンセラーとなった畑村先生の「失敗学のすすめ」は技術を中心に失敗学が書かれていたが、今や戦略のほうが役に立ちそうだね。

B.ありがとうございました。また勉強になりました。



プロジェクトマネジメントを楽しむ バックナンバー
第1回 プロジェクトを楽しむには多くの仕掛けがいる
第2回 PMを楽しむ仕掛けは時間が生み出す
第3回 基礎をしらないとPMは楽しくならない
第4回 仕事を減らす楽しみを覚えよう   (2)  (3)

第7回 行動の中から楽しみを生み出そう(1)
第8回 行動を頭に合わせよう(2)
第9回 行動を頭に合わせよう(3)
第10回 目的があって仕事がある(1)   (2)   (3)

第13回 日本の『現場力』を再度強化しよう(1) 
  (2)   (3)  (4)  (5)  (6)  (7)  (8)  (9)  (10)

第23回 「何か変だな」(1)〜「お客様は神様か?」
第24回 「何か変だな」(2)〜「頭を使う人々が、(生産性に)頭を使わないのはなぜ?」
第25回 「何か変だな」(3)〜「問題と課題の違いがわかるかな?」
第26回 「何か変だな」(4)〜「資格を取っても役に立たない?」
第27回 「何か変だな」(5)〜「「物事」とは何か?」
第28回 「何か変だな」(6)〜「タテマエとホンネ」とは何か?
第29回 「何か変だな」(7)〜「カタカナ言葉と漢字」
第30回 「何か変だな」(8)〜「これからは日本の時代って本当?」
第31回 「何か変だな」(9)〜「ものづくりは技術が基盤って本当?」
第32回 「何か変だな」(10)〜「サービスはタダか、サービスはマネーか?」
第33回 「何か変だな」(11)〜「少子化問題と一人っ子政策の討論」
第34回 「何か変だな」(12)〜「何か変だな!講演会」
第35回 「何か変だな」(13)〜「何か変だな!講演会2」
第36回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(1)〜PMOに消火活動チームの設置
第37回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(2)〜働く女性のために小学校の低学年児童の居残りは学校が面倒を見たら!
第38回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(3)〜アイデアは出すことより、実行+が難しい。実行が難しいから、皆考えなくなる
第39回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(4)〜How to の時代からWhat toへの転換
  (5)  (6)  (7)  (8)  (9)  (10)  (11)  (12)  (13)  (14)  (15)

第51回 「プロジェクトを実践して楽しもう!」(1)〜What toからHow to enjoy project managementへの転換
第52回 「プロジェクトを実践して楽しもう!」(2)―緊急時の対策― 〜What toからHow to enjoy project managementへの転換
  (3)  (4)  (5)  (6)  (7)

第58回 「プロジェクトを実践して楽しもう!」―情報を活用する能力(1)―〜What toからHow to enjoy project managementへの転換
  (2)  (3)  (4)  (5)

第63回 「世界が変化している。原理・原則を知って変化に対応しよう」―ビジネスの基本に戻ろう(1)― −変わる基本、変わらぬ基本の理解−
  (2)  (3)  (4)  (5)  (6)  (7)  (8)  (9)  (10)  (11)  (12)

第75回 「世界が変化している中で、日本人は自分のことをよく知っているのか」―勉強をしたバカとは何か勉強しよう(1)― 
  (2)  (3)  (4)  (5)  (6)   (7)   (8)  (9)  (10) (11)   (12)

第87回 “想定外”と“ゼロベース発想”−(1)
  (2)   (3)  (4)  (5)     (6)   (7)    (8)   (9)    (10)  (11)   (12)  

第99回 「日本人がグローバリゼーション下で勝ち抜くための発想転換」―グローバル市場で“勝ち抜くための戦略”−(1)
  (2)     (3)   (4)    (5)   (6)   (7)    (8)   (9)   (10)    (11)   (12)   (13)   (14) 
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