第95回(2014.12.30) 「プロジェクトマネジメントを楽しむ」 その95
「日本人がグローバリゼーション下で勝ち抜くための発想転換」
−アベノミクスを成功させるためにー
―“想定外”と“ゼロベース発想”−(9)
渡辺 貢成
 kosei.watanabe@sweet.ocn.ne.jp
(有)経営組織研究所


“想定外”と“ゼロベース発想”−(1)
“想定外”と“ゼロベース発想”−(2)
“想定外”と“ゼロベース発想”−(3)
“想定外”と“ゼロベース発想”−(4)
“想定外”と“ゼロベース発想”−(5)
―“想定外”と“ゼロベース発想”−(6)
“想定外”と“ゼロベース発想”−(7)
“想定外”と“ゼロベース発想”−(8)
―“想定外”と“ゼロベース発想”−(9)


A.先月はDさんからアベノミクスにおける“ゼロベース発想”は成功しているBM(ビジネスモデル)を基礎に置きながら『戦略的な+α』を考える訓練をすると提案があり、“ゼロベース発想”1,2,3が提案された。今月はFさんから“ゼロベース発想”4を提案することになっている。

F.日本は島国で、天然資源(太陽、水、地熱、人材)に恵まれていますが、時に大災害に遭遇します。国民は災害を他人事と考えず、多くの人々が復興に協力してきました。また、日本は元寇を除いて近隣大国からの侵入に遭わず、幸福な国といえます。この恵まれた地理的条件が災いし、地政学に疎く、戦略に乏しい欠点があります。ビジネスの世界では戦後一貫して「モノづくり:技術」という戦術しかありませんでした。戦略を必要とするグローバリゼーション下でも製品が良ければ売れると信じ込み、ひたすら高性能、高品質を売り物にしてきました。先月号の発想は「モノを売る」時の戦略的優位性をつくり出すための“ゼロベース発想”でした。しかし、高品質、高性能で勝負するなら、ブランド化戦略に欠けています。

その例を挙げます。日本の和牛は世界的に有名です。近年、農協は香港に和牛を売り込みに行きました。香港の料理店は「当店はブランド和牛を使っている。あなたのブランド証明書を見せろと」いわれ、「食べてみればわかる」と答えて顰蹙を買いました。売れているのは品質証明書付の和牛(オーストラリア産)でした。農協のおじさんがうまいよと言っても、一流レストランは失敗が許されないので、口約束を採用しないのは常識ですが、日本でお山の大将である農協を信用しない彼らの態度に驚いたようです。

ブランド化は企業なり、業界なりが世界に向けてモノの品質を保証するもので、定量的な数値を示すことで、常に一定以上の品質を提供しますという約束が評価されることで、その保証書が権威化し、ブランドとなります。
今説明しました“ゼロベース発想”4はブランド化戦略です。

料理店ではミッテランの5星のように外部の権威が鑑定することでブランド化ができます。料理店の場合は単に料理がうまいだけでなくサービスの質も評価の対象です。これを“ゼロベース発想”4.1とします。
最近はラーメン店を世界に広めるためにノウハウをマニュアル化しているのが“ゼロベース発想”4.2です。自国民でなく、文化のことなる現地人に任せて、基準値以上のラーメンを提供し、その品質が常に基準値を上回れることができるように書かれたマニュアルが提供され、マニュアルに従って実施し、従業員が基準値を超える製品を提供できるまで、実施訓練をし、その成果を確認し、契約上のサインをします。しかし。製品とサービスが一定になるようなQA(品質保証)計画書をつくらせ、自己チェックシステムを内蔵させます。言葉を替えると店舗運営サービスのブランド化です。
 “ゼロベース発想”4.3は本品質を保証しても、短期間に集客す能力が必要となります。Webを見た人に食欲を湧かせる内容をもつ表現能力が求められ、IT活用の技術と、写真と言葉による刺激を与えるために『Webセールス・コピーライティング術』が求められます。

A.“ゼロベース発想”4Xは基本的にはブランド化ということになるが、顧客に最初に購買意欲を湧かせる技を持ち、手っ取り早く商売が成立させることも考慮せよということだな。

F.その通りです。“ゼロベース発想”4の事例として貝印刃物の話をします。
 貝印刃物は日本刀づくりで有名な美濃関市で起業した会社で、現在使い捨て刃物の国内シェア70%を誇っている。商品構成は剃刀事業22%、キッチン用刃物38%、美容刃物19%、特殊用途19%で、世界で有名なブランドをつくりあげています。現在は3代目社長で、33歳の若さで社長となったが、米国の販売会社が円高で債務超過となり撤退を余儀なくされたが、新社長は一念発起して日本刀の技術を使った調理用刃物開発プロジェクトを2001年に立ち上げた。日本刀の製造法は鉄を複数回折り曲げて鍛造することで、切れ味、粘り強さ、仕上げにでる波紋の美しさを持った商品を開発し、旬(シュン)と命名して、2002年に売り出した。美しい波紋、日本刀の持つ神秘さ、その形の良さ、切れ味の素晴らしさで、米国の料理専門家のみならず、家庭の主婦に愛されて、売れに売れる商品に仕上げた。新社長は日本刀という世界に広がっているブランドを再現した企画で、見ただけで美しい波紋でコピーライティング以上の効果を上げてきた。利用者は皆、切れ味と調理時間の短縮を評価し、この包丁を私の命とまで言っている。

A.日本刀という神秘性のある刃物の再現は乾坤一擲、開発者達を奮い立たせたんだと思うな。日本にはこのような立派な芸術品が日本人のDNAの中に温存されており、それらの活用は大いに期待できるのではないかな。Fさんありがとう。

F.ありがとうございます。来月は“ゼロベース発想”5Xのお話をしたいのですが、如何でしょうか。

A.それは結構だ、期待しているよ。



以上

プロジェクトマネジメントを楽しむ バックナンバー
第1回 プロジェクトを楽しむには多くの仕掛けがいる
第2回 PMを楽しむ仕掛けは時間が生み出す
第3回 基礎をしらないとPMは楽しくならない
第4回 仕事を減らす楽しみを覚えよう   (2)  (3)


第7回 行動の中から楽しみを生み出そう(1)
第8回 行動を頭に合わせよう(2)
第9回 行動を頭に合わせよう(3)
第10回 目的があって仕事がある(1)   (2)   (3)

第13回 日本の『現場力』を再度強化しよう(1)
 
  (2)   (3)  (4)  (5)  (6)  (7)  (8)  (9)  (10)

第23回 「何か変だな」(1)〜「お客様は神様か?」
第24回 「何か変だな」(2)〜「頭を使う人々が、(生産性に)頭を使わないのはなぜ?」
第25回 「何か変だな」(3)〜「問題と課題の違いがわかるかな?」
第26回 「何か変だな」(4)〜「資格を取っても役に立たない?」
第27回 「何か変だな」(5)〜「「物事」とは何か?」
第28回 「何か変だな」(6)〜「タテマエとホンネ」とは何か?
第29回 「何か変だな」(7)〜「カタカナ言葉と漢字」
第30回 「何か変だな」(8)〜「これからは日本の時代って本当?」
第31回 「何か変だな」(9)〜「ものづくりは技術が基盤って本当?」
第32回 「何か変だな」(10)〜「サービスはタダか、サービスはマネーか?」
第33回 「何か変だな」(11)〜「少子化問題と一人っ子政策の討論」
第34回 「何か変だな」(12)〜「何か変だな!講演会」
第35回 「何か変だな」(13)〜「何か変だな!講演会2」
第36回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(1)〜PMOに消火活動チームの設置
第37回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(2)〜働く女性のために小学校の低学年児童の居残りは学校が面倒を見たら!
第38回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(3)〜アイデアは出すことより、実行+が難しい。実行が難しいから、皆考えなくなる
第39回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(4)〜How to の時代からWhat toへの転換
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第51回 「プロジェクトを実践して楽しもう!」(1)〜What toからHow to enjoy project managementへの転換
第52回 「プロジェクトを実践して楽しもう!」(2)―緊急時の対策― 〜What toからHow to enjoy project managementへの転換
  (3)  (4)  (5)  (6)  (7)

第58回 「プロジェクトを実践して楽しもう!」―情報を活用する能力(1)―〜What toからHow to enjoy project managementへの転換
  (2)  (3)  (4)  (5)

第63回 「世界が変化している。原理・原則を知って変化に対応しよう」―ビジネスの基本に戻ろう(1)― −変わる基本、変わらぬ基本の理解−
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第75回 「世界が変化している中で、日本人は自分のことをよく知っているのか」―勉強をしたバカとは何か勉強しよう(1)― 
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第87回 「日本人がグローバリゼーション下で勝ち抜くための発想転換」−アベノミクスを成功させるためにー
“想定外”と“ゼロベース発想”−(1)

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第99回 「日本人がグローバリゼーション下で勝ち抜くための発想転換」―グローバル市場で“勝ち抜くための戦略”−(1)
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