第58回(2011.11.25) 「プロジェクトマネジメントを楽しむ」 その58
「プロジェクトを実践して楽しもう!」―情報を活用する能力(1)―
−What toからHow to enjoy project managementへの転換−
渡辺 貢成
 kosei.watanabe@sweet.ocn.ne.jp
(有)経営組織研究所


−What toからHow to enjoy project managementへの転換

「プロジェクトを実践して楽しもう!」(1)−11年04月号
「プロジェクトを実践して楽しもう!」(2)―緊急時の対策― −11年05月号
「プロジェクトを実践して楽しもう!」(3)―緊急時の対策― −11年06月号
「プロジェクトを実践して楽しもう!」(4)―緊急時の対策― −11年07月号
「プロジェクトを実践して楽しもう!」(5)―緊急時の対策― −11年08月号
「プロジェクトを実践して楽しもう!」(6)―緊急時の対策― −11年09月号
「プロジェクトを実践して楽しもう!」(7)―緊急時の対策― −11年10月号
「プロジェクトを実践して楽しもう!」―情報を活用する能力(1)― −11年11月号


B.先月号で、「インターネットの普及で情報のコストが只同然となり、権力に関連する重要情報が社会にあふれるようになり、権力構造が変わったこと。この事実に気がつき、情報を有効に活用する能力を持つと、グローバル規模の大きな権力を獲得できること」を示唆されました。その課題の一つに「効果的な経営のデジタル化」があります。今月号は情報の活用能力の話だと大いに期待しています。

A.今回から「プロジェクトを実践して楽しもう!」は−情報を活用する能力−を取り上げることにした。わかりやすく製造業に関する事例を話そう。

事例1.PC(パーソナル・コンピュータ)の新メーカーが出現し、世界を揺るがせた:
日本の製造業に敗れた米国製造業は1980年代にマルコム・ボルトリッジ賞を設定し、日本企業に勝つ方策として、経営の品質向上を決意した。その行動の第一が「経営のデジタル化」である。米国インテルは新しいBM(ビジネス・モデル)を開発し、日本製造業に決定的なダメージを与えた。

B.それは何ですか。

A.それを答える前に、世界一になった日本製造業はその優位性を更に高める努力の代わりに、傲慢にも「最早米国から学ぶものなし」といい、バブル経済に突入してしまった。日本の製造業は製品技術、生産技術、製品品質を日本国内企業の縦系列化方式で、世界制覇を成し遂げてきた。誰もが、この日本式精密な製造方式を破ることができないと考えられていたが、これを破ったのは「デジタル化技術」であった。

米国インテルはPCの重要部品メーカーであって、PCの製造メーカーではない。しかし、当時先進国でのPC需要は飽和状態であり、低所得層の需要を喚起するため低価格PCを製造する必要があった。この課題を解決するために、インテルはPCの製造に「デジタル化技術」の活用を考えた。着目点は日本の縦系列型製造方式というBM(ビジネスモデル)を破壊することである。 そこで実施したのは@PC構成部品の標準仕様をきめ、世界中から標準部品を提供ができる仕組みを考えた。A次に部品を取り付けるマザーボードのデジタル化標準設計を行い、台湾の企業にそのノウハウを開示し、資金を提供し、グローバル向けPCの製造を任せた。その結果、PCはグローバル水平分業型製造方式というBMが成立し、先進国PCの1/3の価格で市場へ提供できるようになった。この価格低下の結果、新興国でもPCが急速に普及し、インテルとウィンドウズだけが独占的に膨大な数のPCに搭載され、莫大な収益を得る体制を築いた。

B.先生、今まで先進国は「技術と資金」を独占することで、グローバル市場に君臨していたのに、何故、新興国に大切な技術と資本を提供したのでしょうか。

A.それはいい質問だね。植民地政策時代の先進国は、植民地の国民への教育を禁じていた。しかし、現代は先進国での需要は横ばいであり、新興国の需要の伸びに期待することなしには繁栄できないとの判断で、新興国に技術と資本を提供し、安い製品を生産させ、新興国需要を喚起することと、自国並びに他の先進国の低価格品需要を喚起し、投下資本の収益回収で理を上げるBMを確立したといえる。残念ながら先進国が技術・資本の提供することに対するリスクマネジメントが日本の経営者に不足しており、日本の製造業が大きなダメージを受けている。

B.先生、韓国のサムスンはこの流れにいち早く便乗し、現在は隆々たる企業になっていますが、日本企業はなぜ、この対応ができなかったのでしょうか。

A.日本のエリートの傲慢さ、デジタル技術に対する理解の貧困さだと思うよ。

B.そのわけ(理由)は何ですか。

A.日本のエリート(官僚、経営者、コンサルタント)は米国発の新しいアイデアを拝借することで生き続けてきた。ところが米国の製造業は自国での生産に見切りをつけ、新興国に生産委託をしたことにより、米国の新しいビジネスの中心がIT産業と金融にシフトして行った。
 残念ながら日本のエリートは辛抱強く、「アメリカ出羽の守(米国産アイデア)」を20年間待ち続けたんだな。

B.それでは、何故サムスンに負けたのでしょうか。

A.デジタル技術活用の第二の事例として「サムスンの話」をしよう。

B.サムスンのBMは何だったのですか。

A.サムスンのBMは「日本出羽の守」なんだ。
日本が「アメリカ出羽の守」で成功した事例に倣い、製造業世界一の日本の真似に徹底したんだな。日本からは製品、生産、製造技術を徹底的に取り入れ模倣してきた。しかし、彼らは日本企業が実施していない2つの大切なことを確立させた。第一はグローバルを対象とした顧客関係性を確立すること(ドラッカーの教えを守る)。第二が組織内の徹底したデジタル化で、組織能力の徹底的な整備を行い、日本製品の模倣から新製品提供までの開発期間を徹底的に短縮する戦略を採用したことだ。これは「松下二番手商法の採用」ともいえる。サムスンは最初に日本製品に勝てない先進国市場をあきらめ、ターゲットを新興国市場に求め、顧客関係性を確立していった。同時に二番手商法として日本の新製品を解体調査し、新興国に不必要な機能を削除し、新興国のニーズを取り入れた機能を付加して商品化し、新興国市場で圧勝した。米国の新興国への「資本と技術」の供与で、新興国市場が想像以上に早く拡大したことを日本のエリートは傲慢さのゆえに無視してきた結果が、サムスンの勝利となっている。


以上


プロジェクトマネジメントを楽しむ バックナンバー
第1回 プロジェクトを楽しむには多くの仕掛けがいる
第2回 PMを楽しむ仕掛けは時間が生み出す
第3回 基礎をしらないとPMは楽しくならない
第4回 仕事を減らす楽しみを覚えよう   (2)  (3)

第7回 行動の中から楽しみを生み出そう(1)
第8回 行動を頭に合わせよう(2)
第9回 行動を頭に合わせよう(3)
第10回 目的があって仕事がある(1)   (2)   (3)

第13回 日本の『現場力』を再度強化しよう(1) 
  (2)   (3)  (4)  (5)  (6)  (7)  (8)  (9)  (10)

第23回 「何か変だな」(1)〜「お客様は神様か?」
第24回 「何か変だな」(2)〜「頭を使う人々が、(生産性に)頭を使わないのはなぜ?」
第25回 「何か変だな」(3)〜「問題と課題の違いがわかるかな?」
第26回 「何か変だな」(4)〜「資格を取っても役に立たない?」
第27回 「何か変だな」(5)〜「「物事」とは何か?」
第28回 「何か変だな」(6)〜「タテマエとホンネ」とは何か?
第29回 「何か変だな」(7)〜「カタカナ言葉と漢字」
第30回 「何か変だな」(8)〜「これからは日本の時代って本当?」
第31回 「何か変だな」(9)〜「ものづくりは技術が基盤って本当?」
第32回 「何か変だな」(10)〜「サービスはタダか、サービスはマネーか?」
第33回 「何か変だな」(11)〜「少子化問題と一人っ子政策の討論」
第34回 「何か変だな」(12)〜「何か変だな!講演会」
第35回 「何か変だな」(13)〜「何か変だな!講演会2」
第36回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(1)〜PMOに消火活動チームの設置
第37回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(2)〜働く女性のために小学校の低学年児童の居残りは学校が面倒を見たら!
第38回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(3)〜アイデアは出すことより、実行+が難しい。実行が難しいから、皆考えなくなる
第39回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(4)〜How to の時代からWhat toへの転換
  (5)  (6)  (7)  (8)  (9)  (10)  (11)  (12)  (13)  (14)  (15)

第51回 「プロジェクトを実践して楽しもう!」(1)〜What toからHow to enjoy project managementへの転換
第52回 「プロジェクトを実践して楽しもう!」(2)―緊急時の対策― 〜What toからHow to enjoy project managementへの転換
  (3)  (4)  (5)  (6)  (7)

第58回 「プロジェクトを実践して楽しもう!」―情報を活用する能力(1)―〜What toからHow to enjoy project managementへの転換
  (2)  (3)  (4)  (5)

第63回 「世界が変化している。原理・原則を知って変化に対応しよう」―ビジネスの基本に戻ろう(1)― −変わる基本、変わらぬ基本の理解−
  (2)  (3)  (4)  (5)  (6)  (7)  (8)  (9)  (10)  (11)  (12)

第75回 「世界が変化している中で、日本人は自分のことをよく知っているのか」―勉強をしたバカとは何か勉強しよう(1)― 
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第87回 “想定外”と“ゼロベース発想”−(1)
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第99回 「日本人がグローバリゼーション下で勝ち抜くための発想転換」―グローバル市場で“勝ち抜くための戦略”−(1)
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