第87回(2014.04.22) 「プロジェクトマネジメントを楽しむ」 その87
「日本人がグローバリゼーション下で勝ち抜くための発想転換」
−アベノミクスを成功させるためにー
―“想定外”と“ゼロベース発想”−(1)

渡辺 貢成
 kosei.watanabe@sweet.ocn.ne.jp
(有)経営組織研究所

―“想定外”と“ゼロベース発想”−(1)

A.13年度のテーマは「勉強したバカとは何か勉強しよう」であった。私が「勉強したバカ」を学んだのは渡部昇一上智大学名誉教授の本であった。教授の母親は「お前、勉強したバカになるなよ!」と厳しくいわれた。「習ったことは状況判断して使え、それができないバカになるな 」と私は推定した。

戦争中の話をしよう。日本軍は局地戦争に強いが、全域戦争で勝てない。具体的に言えば、鬼曹長指揮下の日本軍は恐れられた。陸軍大学、海軍大学出のリーダーの戦いはすべて負けている。優等生の戦略だからである。初戦を勝ち、自信を持って、同じ戦法で戦う。米軍は負けた戦法で、再度トライする。日本軍が同じ戦法を使うことを確認し、大規模攻撃の際、裏をかいた戦略を用いて、日本軍を殲滅させる。これが米軍の常套手段であった。

日本企業の企業戦略も同様である。米国流のMBAの戦略を駆使する。どの企業もMBAの発想を拒否できない。日本のエリートは「米国人に弱く、日本人にめっぽう強く高姿勢である。日本企業の経営IT化プロジェクトは猫も杓子も米国産のソリューション・パッケージの導入である。A社が導入するとB社も導入する。
皆さん、上記の行動に対し、何かおかしさ感じないかな。

B.日本軍のケースでは、鬼曹長は学問的ではないが、経験豊富で相手の状況把握ができているから相手に強い。大学出のエリートは大学の教官から高い点数をもらえる戦略を採用し、まじめにそれを継続します。乃木将軍の二百参高地攻撃の戦法がそうです。

C.IT導入のケースは米国で成功した経営用ITパッケージの活用で自社の戦力増強を図った事例です。結果的に成功していません。戦略以前にグローバリゼーション下で自社は何をすることで、競争力向上を図るかというビジョンがありません。そのため経営者は導入に際し、経営ビジョンを出す代わりに、IT専門家に優れたITシステムを導入せよと権限を委託します。IT専門家はツールを導入することはできるが、経営の知識はない。しかし、『顧客に興味ない問題(グローバリゼーションの話)を取り上げても商売になりません』と、IT専門家は現状にしか興味を持っていません。

D.世界最高の家電業界の戦略は最高級品を世界で売りまくるという自信に満ちた戦略でした。しかし「誰が顧客か」という基本を忘れていた戦略だった。日本の顧客はアメリカしか視野になかった。新興国がグローバリゼーション下でこれほど早く経済成長が進むと誰も考えていなかった。これは日本企業にとって『想定外』なできごとだったと思います。

E.グローバル経済下で勝ち抜くためには政府・官僚機構の活躍が必要です。グローバリゼーションでは産地、消費地間の物資や商品の移動、言葉を変えるとロジスティックスが重要です。グローバリゼーションの動きを察知したのは華僑が最も早く、韓国もサバイバルのため新興国マーケットの開拓をしており、敏感にその発展を理解していました。問題は「米―中間の貿易拡大」です。皆さんなら何を考えますか。
韓国では米中輸送は津軽海峡経由とにらみを付け、釜山に日本の全港湾施設を足した容量の大きなハブ港湾を建設しました。香港は釜山の3倍の施設をつくっています。シンガポールも大きな港湾施設と手続きの簡素化で、多くの船舶の寄港で利益を上げています。

では日本国は何をしたのでしょうか。日本の官は有能な人材を集め、官僚統制に成功しています。外国が関与できない領域(土地に絡む領域、健康・生活に絡む保険領域)を独占的に管理下に置きました。

@ 農地の住宅地への転換規制
A電力の分割独占化
Bインフラ建設の規制、水、港湾、空港、鉄道(大動脈)、道路
C年金・健康・労災・(医療)D金融等です。

『官』は高度成長期にこれら重要領域に当時少ない資金を優先的に上記設備に集中活用したため、日本の経済力は世界一のスピードで上り詰めていきました。効率の良い使い方としては縦系列型インフラ整備方式というビジネスモデルを確立しました。

F.私も発言させてください。高度成長で堅固なシステムが構築されました。この領域は外国勢が侵入できないところです。しかも官の領域内ですから、倒産しない強固な組織ができました。縦系列の組織は『官庁』、『外郭団体』、「大型民間会社」、「外郭団体系列の株式会社」、一般企業という強固な発注の流れを確立しています。

この組織群には競合社不在(談合が成立)で倒産がなく、競争不在のコストが割高な成果物コストを生み出していますが、グローバリゼーション下でも危機感は皆無です。
しかしグローバル競争にさらされる日本企業はそのハンデを背負って外国企業と戦うことになります。

A. いろいろと有益なご意見を出してもらった。アベノミクスが成功するのは容易ではない気がする。従来の発想を正しいとしたら、アベノミクスは成功しないだろう。そのためにはアベノミクスの個々のプロジェクトを検討し、成功させるにはどのような“ゼロベース発想”、『想定外』の発想を考慮するべきか次回以降皆で考えていきたい。


以上

プロジェクトマネジメントを楽しむ バックナンバー
第1回 プロジェクトを楽しむには多くの仕掛けがいる
第2回 PMを楽しむ仕掛けは時間が生み出す
第3回 基礎をしらないとPMは楽しくならない
第4回 仕事を減らす楽しみを覚えよう   (2)  (3)


第7回 行動の中から楽しみを生み出そう(1)
第8回 行動を頭に合わせよう(2)
第9回 行動を頭に合わせよう(3)
第10回 目的があって仕事がある(1)   (2)   (3)

第13回 日本の『現場力』を再度強化しよう(1)
 
  (2)   (3)  (4)  (5)  (6)  (7)  (8)  (9)  (10)

第23回 「何か変だな」(1)〜「お客様は神様か?」
第24回 「何か変だな」(2)〜「頭を使う人々が、(生産性に)頭を使わないのはなぜ?」
第25回 「何か変だな」(3)〜「問題と課題の違いがわかるかな?」
第26回 「何か変だな」(4)〜「資格を取っても役に立たない?」
第27回 「何か変だな」(5)〜「「物事」とは何か?」
第28回 「何か変だな」(6)〜「タテマエとホンネ」とは何か?
第29回 「何か変だな」(7)〜「カタカナ言葉と漢字」
第30回 「何か変だな」(8)〜「これからは日本の時代って本当?」
第31回 「何か変だな」(9)〜「ものづくりは技術が基盤って本当?」
第32回 「何か変だな」(10)〜「サービスはタダか、サービスはマネーか?」
第33回 「何か変だな」(11)〜「少子化問題と一人っ子政策の討論」
第34回 「何か変だな」(12)〜「何か変だな!講演会」
第35回 「何か変だな」(13)〜「何か変だな!講演会2」
第36回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(1)〜PMOに消火活動チームの設置
第37回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(2)〜働く女性のために小学校の低学年児童の居残りは学校が面倒を見たら!
第38回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(3)〜アイデアは出すことより、実行+が難しい。実行が難しいから、皆考えなくなる
第39回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(4)〜How to の時代からWhat toへの転換
  (5)  (6)  (7)  (8)  (9)  (10)  (11)  (12)  (13)  (14)  (15)

第51回 「プロジェクトを実践して楽しもう!」(1)〜What toからHow to enjoy project managementへの転換
第52回 「プロジェクトを実践して楽しもう!」(2)―緊急時の対策― 〜What toからHow to enjoy project managementへの転換
  (3)  (4)  (5)  (6)  (7)

第58回 「プロジェクトを実践して楽しもう!」―情報を活用する能力(1)―〜What toからHow to enjoy project managementへの転換
  (2)  (3)  (4)  (5)

第63回 「世界が変化している。原理・原則を知って変化に対応しよう」―ビジネスの基本に戻ろう(1)― −変わる基本、変わらぬ基本の理解−
  (2)  (3)  (4)  (5)  (6)  (7)  (8)  (9)  (10)  (11)  (12)

第75回 「世界が変化している中で、日本人は自分のことをよく知っているのか」―勉強をしたバカとは何か勉強しよう(1)― 
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第87回 「日本人がグローバリゼーション下で勝ち抜くための発想転換」−アベノミクスを成功させるためにー
“想定外”と“ゼロベース発想”−(1)
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第99回 「日本人がグローバリゼーション下で勝ち抜くための発想転換」―グローバル市場で“勝ち抜くための戦略”−(1)
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