第71回(2012.12.14) 「プロジェクトマネジメントを楽しむ」 その71
「世界が変化している。原理・原則を知って変化に対応しよう」
―ビジネスの基本に戻ろう(9)―
−変わる基本、変わらぬ基本の理解−
渡辺 貢成
 kosei.watanabe@sweet.ocn.ne.jp
(有)経営組織研究所


−変わる基本、変わらぬ基本の理解−
「世界が変化している。原理・原則を知って変化に対応しよう」―ビジネスの基本に戻ろう(1)― 12年04月

「世界が変化している。原理・原則を知って変化に対応しよう」―ビジネスの基本に戻ろう(2)― 12年05月
「世界が変化している。原理・原則を知って変化に対応しよう」―ビジネスの基本に戻ろう(3)― 12年06月
「世界が変化している。原理・原則を知って変化に対応しよう」―ビジネスの基本に戻ろう(4)― 12年07月
「世界が変化している。原理・原則を知って変化に対応しよう」―ビジネスの基本に戻ろう(5)― 12年08月
「世界が変化している。原理・原則を知って変化に対応しよう」―ビジネスの基本に戻ろう(6)― 12年09月
「世界が変化している。原理・原則を知って変化に対応しよう」―ビジネスの基本に戻ろう(7)― 12年10月
「世界が変化している。原理・原則を知って変化に対応しよう」―ビジネスの基本に戻ろう(8)― 12年11月


A.今月もITシステムの話をしよう(3)
 先月は日本国内でITがどのように発展してきたか、順次説明してきた。そこでBさん、Cさんに、これからの日本はどうなるか考えてくださいとお願いした。しかし、Cさんから海外のITはどのように展開したか説明して欲しいと要求された。確かに、将来を考えるなら、グローバルで活躍している企業群がどのように考え、どのように発展してきたか調べる必要はある。では何年ごろから知りたいかな。

C.1987年にマルコム・ボルトリッジ賞(MBP)が創設されたころからお願いします。何故米国はMBPを創出したのですか。

A.それはいい質問だ。多くの日本人はその理由をよく知らない。その話をしよう。まず、米国の製造業の考え方だ。米国の製造業といえば自動車産業だ。自動車産業は「テーラーの科学的管理法」を一貫して採用してきた。ここで簡単に科学的管理法の一部を説明する。
・一流の作業者の作業を単純な要素動作に分析し、各要素動作に要する時間を測定する。
・避けられない中断や遅れについて、その分の時間を余裕率として定め、作業の最適時間を決定する。
・テーラーは同じ仕事について2種類の賃率を設けた。時間内に達成した人は「多額の成功報酬」を与え、失敗者には「低額の損出報酬」を与えた。この科学的管理法は米自動車産業が日本に破れるまで続けられた。

B.日本は何で勝ったのですか。

A.君達は日本のお家芸である改善で勝ったと思っているだろう。しかし、本当はデミング博士の指導によって成就されたものだ。日本で有名なデミング博士は米国では知られていなかった。彼の主張は統計的品質管理法で内容の一部を下記に示す。
・全品検査をやめ、品質は統計的手法で向上させる。(完成後欠陥を見つけるのではなく、欠陥を防止する手法)
・ 数値割り当てを規定する作業標準を排除せよ
・ 問題を見逃さない。全体(設計、受け入れ材料、製造、保守、改良、トレーニング、監視、再教育)を継続的に向上させる

C.テーラーは「品質」と「コスト」はトレードオフで検査を厳しくすると品質は高くなるが、不良品が増え、コストが上がるといっていました。デミングは統計的品質管理で品質の向上はコスト削減になると言っています。

A.日本の製造業が勝てたのはデミング博士のお陰だ。これは典型的な「変わらぬ基本」と「変わる基本」の事例だ。テーラーの科学的管理法は第二次大戦で米国に勝利をもたらした「変わらぬ基本」であった。このため米国人は「デミングの統計的品質管理」を無視し、その結果米国製造業は日本に敗れた。米国は80歳のデミング博士を米国呼び戻し「日本に勝つための戦略」を頼んだ。彼は米国再生の秘策「『製品の品質』で競争したら米国は決して日本に勝てない。しかし、『経営者の品質』の勝負なら米国が勝てる」を提示し、「経営の品質」を高めるという「新しい基本」をまとめ、MBP(マルコム・ボルトリッジ賞)を創出した。

B.製造業の勝敗の話はわかりましたが、米国のITはその後どのように展開したのですか。

A.米国はデミング博士の経営14原則に従い、日本が製品の品質を向上するために限りなく無駄を排除する方式を経営に取り入れた。1990年代にMITのマイケル・ハマー教授がビジネスルールを抜本的に変えるBPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)を提案した。BPRは企業活動に関するある目標(売上高、利益率など)を設定し、それを達成するために業務の内容や業務の流れ、組織構造を分析し最適化する手法である。米国では多くの企業がBPRを採用し、高度な情報システムが採用し、このBPRを達成した。

B.日本はその後どのような経営をしたのでしょうか。

A.日本企業はBPRを一種の改善で、改善は日本のお家芸だからとBPRを無視した。

C.日本の経営者の考えがわかります。日本企業の改善は「製品の改善」であり、米国の改善は「経営組織能力の改善」です。日本の経営者はデミング博士が睨んだように製品しか頭になく、経営の改善を試みたことがない様に思います。意思決定が未だに稟議方式です。

A.君は相変わらず鋭いね。1990年代に日本は経営改革をしなった。次に起こった流れは2000年代初期に「経営のデジタル化設計(DBD)」が米企業で起こり、生産性が飛躍的に伸びた。ここでも日本企業は基本的なことは何もしなかった。次回はその話をする。


以上
プロジェクトマネジメントを楽しむ バックナンバー
第1回 プロジェクトを楽しむには多くの仕掛けがいる
第2回 PMを楽しむ仕掛けは時間が生み出す
第3回 基礎をしらないとPMは楽しくならない
第4回 仕事を減らす楽しみを覚えよう   (2)  (3)

第7回 行動の中から楽しみを生み出そう(1)
第8回 行動を頭に合わせよう(2)
第9回 行動を頭に合わせよう(3)
第10回 目的があって仕事がある(1)   (2)   (3)

第13回 日本の『現場力』を再度強化しよう(1) 
  (2)   (3)  (4)  (5)  (6)  (7)  (8)  (9)  (10)

第23回 「何か変だな」(1)〜「お客様は神様か?」
第24回 「何か変だな」(2)〜「頭を使う人々が、(生産性に)頭を使わないのはなぜ?」
第25回 「何か変だな」(3)〜「問題と課題の違いがわかるかな?」
第26回 「何か変だな」(4)〜「資格を取っても役に立たない?」
第27回 「何か変だな」(5)〜「「物事」とは何か?」
第28回 「何か変だな」(6)〜「タテマエとホンネ」とは何か?
第29回 「何か変だな」(7)〜「カタカナ言葉と漢字」
第30回 「何か変だな」(8)〜「これからは日本の時代って本当?」
第31回 「何か変だな」(9)〜「ものづくりは技術が基盤って本当?」
第32回 「何か変だな」(10)〜「サービスはタダか、サービスはマネーか?」
第33回 「何か変だな」(11)〜「少子化問題と一人っ子政策の討論」
第34回 「何か変だな」(12)〜「何か変だな!講演会」
第35回 「何か変だな」(13)〜「何か変だな!講演会2」
第36回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(1)〜PMOに消火活動チームの設置
第37回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(2)〜働く女性のために小学校の低学年児童の居残りは学校が面倒を見たら!
第38回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(3)〜アイデアは出すことより、実行+が難しい。実行が難しいから、皆考えなくなる
第39回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(4)〜How to の時代からWhat toへの転換
  (5)  (6)  (7)  (8)  (9)  (10)  (11)  (12)  (13)  (14)  (15)

第51回 「プロジェクトを実践して楽しもう!」(1)〜What toからHow to enjoy project managementへの転換
第52回 「プロジェクトを実践して楽しもう!」(2)―緊急時の対策― 〜What toからHow to enjoy project managementへの転換
  (3)  (4)  (5)  (6)  (7)

第58回 「プロジェクトを実践して楽しもう!」―情報を活用する能力(1)―〜What toからHow to enjoy project managementへの転換
  (2)  (3)  (4)  (5)

第63回 「世界が変化している。原理・原則を知って変化に対応しよう」―ビジネスの基本に戻ろう(1)― −変わる基本、変わらぬ基本の理解−
  (2)  (3)  (4)  (5)  (6)  (7)  (8)  (9)  (10)  (11)  (12)

第75回 「世界が変化している中で、日本人は自分のことをよく知っているのか」―勉強をしたバカとは何か勉強しよう(1)― 
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第87回 “想定外”と“ゼロベース発想”−(1)
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第99回 「日本人がグローバリゼーション下で勝ち抜くための発想転換」―グローバル市場で“勝ち抜くための戦略”−(1)
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