第23回(2008.11.07) 「プロジェクトマネジメントを楽しむ」 その23
「何か変だな」(1)
〜「お客様は神様か?」
渡辺 貢成
 kosei.watanabe@sweet.ocn.ne.jp
(有)経営組織研究所

1. テーマの全面的変更
 前回まではプロジェクトの現場力について、業界別の相違を話してきた。今月からテーマを変える。テーマは「何か変だな」である。私たちが日頃している習慣が視点を変えるとおかしいなと感じることがある。おかしいなと感じながら習慣がそのまま継続されることで実害が出ていることが多い。そんな問題をテーマすることにきめた。端的な例が日本の常識と、世界の常識が違う問題である。

2.「顧客は神様か?」
B:Aさん、「日本ではお客様は神様だ」が通用していますね。米国でも同じですか?
A:金を払ってくれる人がいないと、われわれは食べていけないよね。米国でも同じじゃない。米国は昔、顧客という発想が薄かったが、製造業で日本に負けたことで、日本企業を見習えということになり、マルコム・ボルトリッジ賞(企業の経営品質賞で大統領が手渡す大きな賞)が創設されたわけ。ここでは顧客満足度が重要なテーマになったわけ。逆に言えば米国では顧客を重要視していなかったともいえるね。
B:日本では発注者が絶大な権力を握っており、気に入らないと出入り差し止めをちらつかせるから、泣くこと地頭には勝てないという格言がありますよね。いつでも無理を聞く羽目になりますよね。これって正しいのですかね。
A.私はPM推進者だから、ビジネスでこの習慣はおかしいと思っていますよ。欧米ではビジネスの出発点は契約です。契約では「発注者と受注者は対等だ」が貫かれている。日本での商習慣では発注者は甲で、受注者は乙という立場だよね。乙は決して甲に損害を与えてはならない。建前ではなく本音では、顧客の損害はある程度許せる範囲内なら受注者がかぶるのは当然だという関係性が成り立っている雰囲気だね。
B.甲・乙の関係性が特命受注の場合ならこの関係はわかりますが、厳しい競争入札の場合はどうなるのですかね。
A.昔は、長い付き合いがあったため、「この次があるよ」という暗黙の了解があってね。多分この関係が、甲優位という習慣を生んだと思うよ。
B.最近はグロ−バル化されたビジネス環境がととのってきたから、企業がドライになってきた。ここでは暗黙の了解などありませんよね。発注者がいいとこ取りし、甲・乙の関係性を残し、不利なところはビジネスライクにいきましょうということではおかしいですよね。
A.ご指摘ごもっとも。Bさんも契約の概念を勉強しなければならないね。なぜ、契約が大切かというと、発注者、受注者にはそれぞれの役割があり、その役割を果たさないとプロジェクトは絶対に成功しないという事実を理解することが大切。この事実をPM関係者(含む顧客)がプロジェクトのスタートで認識することが大切だよ。
B.お話はわかりましたが、お客様にこのことを理解させるのが難しいですね。
A.私はこのようにお願いしています。
 @契約に関する日本の習慣はよくわかっています。欧米との違いもよく理解しています。商業上の習慣を変えることは難しいことも理解しています。この条件の下に次のことを聞いてください。
 A最近はプロジェクトの問題が複雑になってきました。スピードが要求されています。複雑化とは、業者がお客様の真の問題を想定することが難しくなったと言うことです。スピード化とは仕事の進め方でトライアンドエラー的に、問題が発生したら振り出しに戻るという手法が使えないということです。では、どうしたらいいと思いますか
B.それは顧客が自社の持つ問題点をさらけ出して、整理し、問題解決のための課題をまとめ、計画をきちんとさせることですかね。
A.さすがBさんですね。正解です。その手法はなんと言いますか。
B.プロジェクトマネジメントあるいはプログラムマネジメントではないですか?
A.正解ですね。現代はお客様が構想計画を正しく実施し、受注者に提供するか、構想計画を共同で行うか、この方式の重要性を認識され始めました。経済産業省や傘下のIPA(情報処理推進機構)が発注者の責任をまっとうすることを強く推し進めていますよ。これを進めないと日本の常識ではグローバル社会で非難されますからね。

以上


プロジェクトマネジメントを楽しむ バックナンバー
第1回 プロジェクトを楽しむには多くの仕掛けがいる
第2回 PMを楽しむ仕掛けは時間が生み出す
第3回 基礎をしらないとPMは楽しくならない
第4回 仕事を減らす楽しみを覚えよう   (2)  (3)

第7回 行動の中から楽しみを生み出そう(1)
第8回 行動を頭に合わせよう(2)
第9回 行動を頭に合わせよう(3)
第10回 目的があって仕事がある(1)   (2)   (3)

第13回 日本の『現場力』を再度強化しよう(1) 
  (2)   (3)  (4)  (5)  (6)  (7)  (8)  (9)  (10)

第23回 「何か変だな」(1)〜「お客様は神様か?」
第24回 「何か変だな」(2)〜「頭を使う人々が、(生産性に)頭を使わないのはなぜ?」
第25回 「何か変だな」(3)〜「問題と課題の違いがわかるかな?」
第26回 「何か変だな」(4)〜「資格を取っても役に立たない?」
第27回 「何か変だな」(5)〜「「物事」とは何か?」
第28回 「何か変だな」(6)〜「タテマエとホンネ」とは何か?
第29回 「何か変だな」(7)〜「カタカナ言葉と漢字」
第30回 「何か変だな」(8)〜「これからは日本の時代って本当?」
第31回 「何か変だな」(9)〜「ものづくりは技術が基盤って本当?」
第32回 「何か変だな」(10)〜「サービスはタダか、サービスはマネーか?」
第33回 「何か変だな」(11)〜「少子化問題と一人っ子政策の討論」
第34回 「何か変だな」(12)〜「何か変だな!講演会」
第35回 「何か変だな」(13)〜「何か変だな!講演会2」
第36回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(1)〜PMOに消火活動チームの設置
第37回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(2)〜働く女性のために小学校の低学年児童の居残りは学校が面倒を見たら!
第38回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(3)〜アイデアは出すことより、実行+が難しい。実行が難しいから、皆考えなくなる
第39回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(4)〜How to の時代からWhat toへの転換
  (5)  (6)  (7)  (8)  (9)  (10)  (11)  (12)  (13)  (14)  (15)

第51回 「プロジェクトを実践して楽しもう!」(1)〜What toからHow to enjoy project managementへの転換
第52回 「プロジェクトを実践して楽しもう!」(2)―緊急時の対策― 〜What toからHow to enjoy project managementへの転換
  (3)  (4)  (5)  (6)  (7)

第58回 「プロジェクトを実践して楽しもう!」―情報を活用する能力(1)―〜What toからHow to enjoy project managementへの転換
  (2)  (3)  (4)  (5)

第63回 「世界が変化している。原理・原則を知って変化に対応しよう」―ビジネスの基本に戻ろう(1)― −変わる基本、変わらぬ基本の理解−
  (2)  (3)  (4)  (5)  (6)  (7)  (8)  (9)  (10)  (11)  (12)

第75回 「世界が変化している中で、日本人は自分のことをよく知っているのか」―勉強をしたバカとは何か勉強しよう(1)― 
  (2)  (3)  (4)  (5)  (6)   (7)   (8)  (9)  (10) (11)   (12)

第87回 “想定外”と“ゼロベース発想”−(1)
  (2)   (3)  (4)  (5)     (6)   (7)    (8)   (9)    (10)  (11)   (12)  

第99回 「日本人がグローバリゼーション下で勝ち抜くための発想転換」―グローバル市場で“勝ち抜くための戦略”−(1)
  (2)     (3)   (4)    (5)    (6)   (7)    (8)   (9)   (10)    (11)   (12)   (13)   (14) 
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