第14回(2008.02.08) 「プロジェクトマネジメントを楽しむ」 その14
日本の『現場力』を再度強化しよう(2)
渡辺 貢成
 kosei.watanabe@sweet.ocn.ne.jp
(有)経営組織研究所

第14回「日本の『現場力』を再度強化しよう」(2)

1. 前回
現場力の構成の話をした。
T.基本編
@ PMの基本原則を実行させる能力(P2M、PMBOKの実施能力)
A プロジェクト成功の仕組みを理解できる能力
B 契約を正しく理解できる能力(発注者・受注者の役割と責任が明確で、実行している)
C 標準を正しく実施させる能力(関係者が同じ発想で業務できる)
D 評価基準をきめ、実施させる能力(正しく評価されているとの安心感)
重要だがこのコーナーでは取り上げない。
U.応用編
現場力は基礎があって応用力がないと成り立たない。経験と知恵の世界だからである。次回以降応用編に取り組む、までが先月号である。

2.今回は予定の変更で応用編をお預け、簡単な基本から始める。
今私は多くのテーマを抱えているが、日本プロジェクトマネジメント協会でPMAJジャーナルという機関紙の編集長をしている。今回の特集号のテーマは「ITプロジェクトのリスクマネジメント」である。IT産業を業としている人には腹の立つ話になるが、調べれば調べるほどビジネスの基本、PMの基本を知らない人々がIT産業を支えている。ITプロジェクトの失敗率が高い理由を理解できる。これは日本の商習慣に関連するため、一概にITに関連する人々の欠陥を指摘できないのだが、簡単な基本のおさらいから始める必要を感じた。そこで応用編から始める予定を変更する。

(1) あなたはPMBOKを活用していますか?
 IT業は多くがPMBOK派である。わが社はPMBOKだからP2Mはいらないとよくいわれる。誰が何を使うのも、それは自由である。しかし、以下のことを理解していないとPMBOKという優れたPMツールは使えない。
@ 構想計画が完了し、プロジェクト計画書ができていること
プロジェクトマネジメントの基本の一つにプロジェクトライフサイクルマネジメントがある。プロジェクトは突然詳細設計に入るのではなく、プロジェクトの概念を固め、要求仕様を確定してからPMBOKは始まる。構想計画なしにプロジェクトを始めるのは基本中の基本を守っていない問題で、プロジェクトの失敗は当然の結果である。では何故PMBOKは構想計画をやらないのかを知っておく必要がある。
理由:PMBOKの資格者はPMPである。PMPは構想計画を取り扱わない。構想計画はMBA資格者の役割である。米国はユニオンがあり、PMP資格者が構想計画を実施してもかまわないが、それはPMP資格としての業務ではない。PMPは20万人以上存在するが、MBAも10万人以上存在する。それぞれ役割分担がある。
米国は戦略志向の国である。最近PMI(米国PM協会)は日本でP2M発表後急遽にプログラムマネジメントのスタンダードを発表した。続いてポートフォリオマネジメントのスタンダードを発表した。ポートフォリオマネジメントでは戦略が取り入れられているが、ここでも企業戦略に従ってプロジェクトを選定するのが、ポートフォリオマネジャーの役割となって、プログラムマネジャーは選ばれたマルチプロジェクトを束ねて、利益を如何に増大させるかがプログラムマネジャーの役割と記してある。PMPは定められたプロジェクトを確実に効率よく実施することが役割として記されている。

A 日本では何をするべきか
構想計画は本来発注者が行うものである。日本の発注者はグローバル化にむけた企業のIT化とは何か本当は良くわかっていない。相変わらず同業他社がやっているから負けまいとしているらしい。正しくはIT化の問題ではなく、自社の特徴である、強み、弱み、それの対応という基本問題を正しく把握していない。そこで業者はソリューションパッケージを持ち込んで、これは米国で成功したパッケージですと推奨している。パッケージだけですべての企業が成功するなら経営者は要らなくなる道理である。

ではどうするか。日本では構想計画を発注者と受注者が真剣に取り組んで(これは企業の将来を左右する問題だから)纏め上げる必要がある。日本では構想計画を重要視していないから予算を十分に取っていない。このことに問題がある。20%の労力(金額)でプロジェクト成功の80%を確保することができる。構想計画の20%を10%にすると残りの80%の金が2倍になる可能性も高いという過去の実績を重視する必要がある。この道理を多くの人は知らずに、失敗を繰り返している。日本では「段取り八分といって、段取りで仕事の80%が完了する」ことを、昔の人は経験で学んでいる。
更に追記すると、日本ではMBAが活躍する場がなく、ほとんど機能していない。逆に日本ではPMPが構想計画をすることに何ら障害がない。米国の経営者が実施していることを、日本では経営者が自分の役割と考えていないから、ミドルが真剣に取り組まないと、この問題は永遠に解決されない問題として残される。この問題を先送りすると社会現象として、ITが3K産業化し、ITを目指し人口が減少する。これに対し社会では今、オフショアがあるといっているが、発注者に実力がなくなると、オフショアで成果を出すことも不可能となる。
以上



プロジェクトマネジメントを楽しむ バックナンバー
第1回 プロジェクトを楽しむには多くの仕掛けがいる
第2回 PMを楽しむ仕掛けは時間が生み出す
第3回 基礎をしらないとPMは楽しくならない
第4回 仕事を減らす楽しみを覚えよう   (2)  (3)

第7回 行動の中から楽しみを生み出そう(1)
第8回 行動を頭に合わせよう(2)
第9回 行動を頭に合わせよう(3)
第10回 目的があって仕事がある(1)   (2)   (3)

第13回 日本の『現場力』を再度強化しよう(1) 
  (2)   (3)  (4)  (5)  (6)  (7)  (8)  (9)  (10)

第23回 「何か変だな」(1)〜「お客様は神様か?」
第24回 「何か変だな」(2)〜「頭を使う人々が、(生産性に)頭を使わないのはなぜ?」
第25回 「何か変だな」(3)〜「問題と課題の違いがわかるかな?」
第26回 「何か変だな」(4)〜「資格を取っても役に立たない?」
第27回 「何か変だな」(5)〜「「物事」とは何か?」
第28回 「何か変だな」(6)〜「タテマエとホンネ」とは何か?
第29回 「何か変だな」(7)〜「カタカナ言葉と漢字」
第30回 「何か変だな」(8)〜「これからは日本の時代って本当?」
第31回 「何か変だな」(9)〜「ものづくりは技術が基盤って本当?」
第32回 「何か変だな」(10)〜「サービスはタダか、サービスはマネーか?」
第33回 「何か変だな」(11)〜「少子化問題と一人っ子政策の討論」
第34回 「何か変だな」(12)〜「何か変だな!講演会」
第35回 「何か変だな」(13)〜「何か変だな!講演会2」
第36回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(1)〜PMOに消火活動チームの設置
第37回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(2)〜働く女性のために小学校の低学年児童の居残りは学校が面倒を見たら!
第38回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(3)〜アイデアは出すことより、実行+が難しい。実行が難しいから、皆考えなくなる
第39回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(4)〜How to の時代からWhat toへの転換
  (5)  (6)  (7)  (8)  (9)  (10)  (11)  (12)  (13)  (14)  (15)

第51回 「プロジェクトを実践して楽しもう!」(1)〜What toからHow to enjoy project managementへの転換
第52回 「プロジェクトを実践して楽しもう!」(2)―緊急時の対策― 〜What toからHow to enjoy project managementへの転換
  (3)  (4)  (5)  (6)  (7)

第58回 「プロジェクトを実践して楽しもう!」―情報を活用する能力(1)―〜What toからHow to enjoy project managementへの転換
  (2)  (3)  (4)  (5)

第63回 「世界が変化している。原理・原則を知って変化に対応しよう」―ビジネスの基本に戻ろう(1)― −変わる基本、変わらぬ基本の理解−
  (2)  (3)  (4)  (5)  (6)  (7)  (8)  (9)  (10)  (11)  (12)

第75回 「世界が変化している中で、日本人は自分のことをよく知っているのか」―勉強をしたバカとは何か勉強しよう(1)― 
  (2)  (3)  (4)  (5)  (6)   (7)   (8)  (9)  (10) (11)   (12)

第87回 “想定外”と“ゼロベース発想”−(1)
  (2)   (3)  (4)  (5)     (6)   (7)    (8)   (9)    (10)  (11)   (12)  

第99回 「日本人がグローバリゼーション下で勝ち抜くための発想転換」―グローバル市場で“勝ち抜くための戦略”−(1)
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