第69回(2012.10.09) 「プロジェクトマネジメントを楽しむ」 その69
「世界が変化している。原理・原則を知って変化に対応しよう」
―ビジネスの基本に戻ろう(7)―
−変わる基本、変わらぬ基本の理解−
渡辺 貢成
 kosei.watanabe@sweet.ocn.ne.jp
(有)経営組織研究所


−変わる基本、変わらぬ基本の理解−
「世界が変化している。原理・原則を知って変化に対応しよう」―ビジネスの基本に戻ろう(1)― 12年04月

「世界が変化している。原理・原則を知って変化に対応しよう」―ビジネスの基本に戻ろう(2)― 12年05月
「世界が変化している。原理・原則を知って変化に対応しよう」―ビジネスの基本に戻ろう(3)― 12年06月
「世界が変化している。原理・原則を知って変化に対応しよう」―ビジネスの基本に戻ろう(4)― 12年07月
「世界が変化している。原理・原則を知って変化に対応しよう」―ビジネスの基本に戻ろう(5)― 12年08月
「世界が変化している。原理・原則を知って変化に対応しよう」―ビジネスの基本に戻ろう(6)― 12年09月

A.今月はITシステムの話をしよう
 今月は情報産業の歴史を振り返って見ると、この産業は驚きとともにスタートし、夢と希望を与え続けてきた産業だから面白い。

B.言われて見るとそのとおりです。関係者は夢に向かって、よく勉強しています。一つを理解しきれないうちに、次の技術が開発され、実用され、新しいビジネスが次々に誕生しました。

A.業務のIT化は手作業で行っていた業務を機械化(コンピュータ処理できる仕組みをつくること)することから始まった。これを「IT化のステージ1」という。業務の機械化によって多くの単純作業がなくなり、人々はより付加価値の高い仕事ができるようになった。その後PC(パソコン)が発達し社員全員がPCを使って仕事をするようになると、IT化により効率のよい仕事の仕方、更にはIT化によって従来できなかった業務ができるようになり、結果的には業務改革が実現された。業務改革を実現した企業が業績を延ばすと、多くの企業は成功した業務改革ができるソフトを導入することを考えるようになった。日本企業は米国企業のIT投資額の半額近い予算を計上し、IT化ステージ2が始まった。

B.それはいわゆるソリューション・パッケージ称するものの導入ですね。勉強しながら、新しいシステムを導入し、より高い仕事がこなせて楽しい思いをしました。

A.それは良い時代だったねといいたい。

B.何故ですか?

A.君はシステムを導入するとき、投資効果を考え、その投資効果を経営者に説明し、許可を得て、システムを導入したのかな。

B.いいえ、会社は予算をとり、希望者に申込みをさせます。ITシステム導入の裁定委員会は申し込み案件を調査し、時流に即しているか定性的に眺め優先順位を決め、予算内であればITシステム導入の意思決定していました。

A.わかった。多くの会社が同じ取り扱いをしているようだね。では、再度質問するが、ITシステムプロジェクトが終了したときの評価基準は何かね。

B.納期どおり、予算どおり、テストを合格した品質を納めたことが評価されます。QCDが目標ですから当然といえます。ITプロジェクトは変化が早いので、変更が多いので有名です。この中でQCDの目標値に到達するのは至難の業ですから評価の対象になります。

A.説明ありがとう。ところでC君、きみは今の解答に対し、どのように感じるかね。

C.少し、おかしいのではないかと考えます。ITシステムの導入の目的はシステムを納入させることではなく、経営的な効果を挙げることです。そのためには導入に先立ち、当該システムの導入で、経営の何がかわり、どのような経営的効果があり、投資金額が何年で回収できるという投資効果を評価するべきです。もちろん数値で表せない投資効果についても何らかの基準を決めて評価するべきと考えます。

B.Cさん、あなたの言うことは正論です。しかし、私たちが実施しているITシステムは変更が多いことで有名です。私たちは米国産のソリューション・パッケージを導入しています。これは投資効果が評価されたシステムです。しかし、米国企業というビジネス組織のビジネス習慣の中で得られた評価です。日本で採用するときは、システムを日本の商習慣に当てはめないと活用できません。米国産という血統つきのシステムを導入し、それぞれの業務とお見合いさせないと、どこを変更させるかわかりません。事前に変更がわからない中で細かい評価をしたところで、変更があれば評価が変わります。評価が変わったことを詳細に検討評価しても経営効果が向上するわけではありません。定性的評価を重視するべきです。そのため、日本ではITシステム導入は経費として処理しています。大きな声でいえませんが税金免除の効果が大きいと思いますよ。

C.これは大変ユニークな論理ですね。まあ、今回は50%理解したとします。では次の質問をさせてください。小さな投資効果は無視するとして、大きな投資効果は企業競争力の改善や意思決定の早さ等があげられます。経験のない新しい問題をどのように協議していますか。もし、稟議制度が残されていつならば、経験のない人々が全員一致しても価値ある結果を得たとはいえませんね。
その他の業務遂行体制で、情報の伝達が途中で途絶えていないでしょうか。日本の階層組織は適所に適材が配備されておらず、重要な情報の上位伝達が滞っています。この問題は解決しましたか。重要課題が先送りされている現実はどうなのですか。

A.Cさん、ご意見ありがとう。いろいろと問題がありそうだな。この問題は来月の討議課題として、先送りしよう!



以上
プロジェクトマネジメントを楽しむ バックナンバー
第1回 プロジェクトを楽しむには多くの仕掛けがいる
第2回 PMを楽しむ仕掛けは時間が生み出す
第3回 基礎をしらないとPMは楽しくならない
第4回 仕事を減らす楽しみを覚えよう   (2)  (3)

第7回 行動の中から楽しみを生み出そう(1)
第8回 行動を頭に合わせよう(2)
第9回 行動を頭に合わせよう(3)
第10回 目的があって仕事がある(1)   (2)   (3)

第13回 日本の『現場力』を再度強化しよう(1) 
  (2)   (3)  (4)  (5)  (6)  (7)  (8)  (9)  (10)

第23回 「何か変だな」(1)〜「お客様は神様か?」
第24回 「何か変だな」(2)〜「頭を使う人々が、(生産性に)頭を使わないのはなぜ?」
第25回 「何か変だな」(3)〜「問題と課題の違いがわかるかな?」
第26回 「何か変だな」(4)〜「資格を取っても役に立たない?」
第27回 「何か変だな」(5)〜「「物事」とは何か?」
第28回 「何か変だな」(6)〜「タテマエとホンネ」とは何か?
第29回 「何か変だな」(7)〜「カタカナ言葉と漢字」
第30回 「何か変だな」(8)〜「これからは日本の時代って本当?」
第31回 「何か変だな」(9)〜「ものづくりは技術が基盤って本当?」
第32回 「何か変だな」(10)〜「サービスはタダか、サービスはマネーか?」
第33回 「何か変だな」(11)〜「少子化問題と一人っ子政策の討論」
第34回 「何か変だな」(12)〜「何か変だな!講演会」
第35回 「何か変だな」(13)〜「何か変だな!講演会2」
第36回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(1)〜PMOに消火活動チームの設置
第37回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(2)〜働く女性のために小学校の低学年児童の居残りは学校が面倒を見たら!
第38回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(3)〜アイデアは出すことより、実行+が難しい。実行が難しいから、皆考えなくなる
第39回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(4)〜How to の時代からWhat toへの転換
  (5)  (6)  (7)  (8)  (9)  (10)  (11)  (12)  (13)  (14)  (15)

第51回 「プロジェクトを実践して楽しもう!」(1)〜What toからHow to enjoy project managementへの転換
第52回 「プロジェクトを実践して楽しもう!」(2)―緊急時の対策― 〜What toからHow to enjoy project managementへの転換
  (3)  (4)  (5)  (6)  (7)

第58回 「プロジェクトを実践して楽しもう!」―情報を活用する能力(1)―〜What toからHow to enjoy project managementへの転換
  (2)  (3)  (4)  (5)

第63回 「世界が変化している。原理・原則を知って変化に対応しよう」―ビジネスの基本に戻ろう(1)― −変わる基本、変わらぬ基本の理解−
  (2)  (3)  (4)  (5)  (6)  (7)  (8)  (9)  (10)  (11)  (12)

第75回 「世界が変化している中で、日本人は自分のことをよく知っているのか」―勉強をしたバカとは何か勉強しよう(1)― 
  (2)  (3)  (4)  (5)  (6)   (7)   (8)  (9)  (10) (11)   (12)

第87回 “想定外”と“ゼロベース発想”−(1)
  (2)   (3)  (4)  (5)     (6)   (7)    (8)   (9)    (10)  (11)   (12)  

第99回 「日本人がグローバリゼーション下で勝ち抜くための発想転換」―グローバル市場で“勝ち抜くための戦略”−(1)

第159回 「日本人がグローバリゼーション下で勝ち抜くための発想転換」(73)―日本がグローバル市場で勝ち抜くためへの反省と提案−(1)

 
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