第10回(2007.10.12) 「プロジェクトマネジメントを楽しむ」 その10
目的があって仕事がある(1)〜定義をしないと本質が見えない
渡辺 貢成
 kosei.watanabe@sweet.ocn.ne.jp
(有)経営組織研究所

第10回「目的があって仕事がある」(1)−定義をしないと本質が見えない−

前回はIT問題を考えるに当たって海外からの目で業界を眺めてみた。
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欧米の社会では職業に役割分担があること。役割に対してはそれぞれ資格を持ったプロフェッショナルな人材がいる。人材に対して評価基準が明確である。中国人は評価基準の明確な欧米企業に就職したいと考えている。評価基準のあいまいな日本企業で働くことを好んでいない。
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日本のIT業界も少しづつ変わってきた
大手IT企業は要件定義があいまいな仕事を断り始めた。そして収益が回復し始めたとう話。これは悪い話ではない。要件定義が不明ではオフショア企業からもいずれは受け付けてもらえないよね。


さて、前回までは日本のIT業界に対し、私なりの状況分析を述べてきた。今回は「目的があって仕事がある」というテーマを取り上げた。しかし、このテーマって何か変だよね。「目的のない仕事などありえないから」ね。でも、目的が明確でないからいろいろと問題が発生していることは事実。今回から実践的問題に入るので、ズバリとおかしいなと感じたことを軽く書くことにした。

私は長年プラント建設の仕事をし、海外、国内の仕事をしてきた。国内のプラント建設も30年前は今のITと同じで、長い歴史の中で、WIN/WIMという関係ができるようになった。建設費を値切れば、メンテナンス費用が増えることを顧客が実感して、顧客も合理性を身に付けてきたからだ。

では海外の仕事はどうだろうか。相手がメジャーオイルの場合は合理性に関し厳しいが、逆に仕事はやりやすかった。原理原則が優先されており、理屈が通るからである。理屈が通るから変更や、無理な要求をしない。社会が残業をしなくても生活できる共通理解がある。
 では、日本の顧客はどうだろうか。原理原則がなく、事前にこんな問題が発生するから検討しようというと「先の話で混乱させるな」と怒られる。今度は問題が発生すると、「目の前に問題が発生しているのに、過去のことを取り上げても意味ないだいだろう」とまた叱られる。そして目前の問題が優先されて、人間の生活が後回しにされる。しかし、社会全体が皆同じ考えだと、誰もが当然と考えるようになる。そして結果は3K問題が発生する。

 今回からのテーマは原理原則に立ち戻ってみようというテーマである。「目的があって仕事がある」という極当たり前のことを取り上げた。そこで読者にお願いしたい。原理原則を理解するために「言葉を定義」する習慣を身に付けて欲しい。言葉の定義は「使命・目的・目標」から始める。

米国ではプロジェクトの開始に「使命・目的・目標」を書いてスタッフに配布することになっている。皆さん方はプロジェクトのスタートに「使命・目的・目標」を示したことがありますか。これを書くには各言葉の定義を知らないと書けないという問題にぶつかる。
言葉の定義をする前にアポロプログラムの「使命・目的・目標」(ミッション・記述書)をご自分で書いてみてください。アポロプログラムとはケネディー大統領が、1961年に旧ソ連の有人人工衛星の成功に驚き、米国は1960年代に月面着陸と地球への帰還を命じた宇宙開発プログラムである。結果は1969年7月20日に人類初の月面着陸に成功した。

そこでアポロプログラムの使命とは何か、目的とは何か、目標とは何か定義し、それからミッション記述書を書いてください。
「なぜ、こんなことをするのかって?」
「これがわからないと仕事が始まらないから!」

最近は「使命・目的・目標」を明確にすることが困難なプロジェクトが多くなり、P2Mでは最初の構想計画で「使命・目的・目標」を可視化する。これをプロファイリングマネジメントといいます。PMBOKは構想計画で「使命・目的・目標」が決められた後、プロジェクトマネジメントをするためのPMの知識体系だということを理解してください。

次回は「目的があって仕事がある」(2)で定義の話をする。
以上
  
プロジェクトマネジメントを楽しむ バックナンバー
第1回 プロジェクトを楽しむには多くの仕掛けがいる
第2回 PMを楽しむ仕掛けは時間が生み出す
第3回 基礎をしらないとPMは楽しくならない
第4回 仕事を減らす楽しみを覚えよう   (2)  (3)

第7回 行動の中から楽しみを生み出そう(1)
第8回 行動を頭に合わせよう(2)
第9回 行動を頭に合わせよう(3)
第10回 目的があって仕事がある(1)   (2)   (3)

第13回 日本の『現場力』を再度強化しよう(1) 
  (2)   (3)  (4)  (5)  (6)  (7)  (8)  (9)  (10)

第23回 「何か変だな」(1)〜「お客様は神様か?」
第24回 「何か変だな」(2)〜「頭を使う人々が、(生産性に)頭を使わないのはなぜ?」
第25回 「何か変だな」(3)〜「問題と課題の違いがわかるかな?」
第26回 「何か変だな」(4)〜「資格を取っても役に立たない?」
第27回 「何か変だな」(5)〜「「物事」とは何か?」
第28回 「何か変だな」(6)〜「タテマエとホンネ」とは何か?
第29回 「何か変だな」(7)〜「カタカナ言葉と漢字」
第30回 「何か変だな」(8)〜「これからは日本の時代って本当?」
第31回 「何か変だな」(9)〜「ものづくりは技術が基盤って本当?」
第32回 「何か変だな」(10)〜「サービスはタダか、サービスはマネーか?」
第33回 「何か変だな」(11)〜「少子化問題と一人っ子政策の討論」
第34回 「何か変だな」(12)〜「何か変だな!講演会」
第35回 「何か変だな」(13)〜「何か変だな!講演会2」
第36回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(1)〜PMOに消火活動チームの設置
第37回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(2)〜働く女性のために小学校の低学年児童の居残りは学校が面倒を見たら!
第38回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(3)〜アイデアは出すことより、実行+が難しい。実行が難しいから、皆考えなくなる
第39回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(4)〜How to の時代からWhat toへの転換
  (5)  (6)  (7)  (8)  (9)  (10)  (11)  (12)  (13)  (14)  (15)

第51回 「プロジェクトを実践して楽しもう!」(1)〜What toからHow to enjoy project managementへの転換
第52回 「プロジェクトを実践して楽しもう!」(2)―緊急時の対策― 〜What toからHow to enjoy project managementへの転換
  (3)  (4)  (5)  (6)  (7)

第58回 「プロジェクトを実践して楽しもう!」―情報を活用する能力(1)―〜What toからHow to enjoy project managementへの転換
  (2)  (3)  (4)  (5)

第63回 「世界が変化している。原理・原則を知って変化に対応しよう」―ビジネスの基本に戻ろう(1)― −変わる基本、変わらぬ基本の理解−
  (2)  (3)  (4)  (5)  (6)  (7)  (8)  (9)  (10)  (11)  (12)

第75回 「世界が変化している中で、日本人は自分のことをよく知っているのか」―勉強をしたバカとは何か勉強しよう(1)― 
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第87回 “想定外”と“ゼロベース発想”−(1)
  (2)   (3)  (4)  (5)     (6)   (7)    (8)   (9)    (10)  (11)   (12)  

第99回 「日本人がグローバリゼーション下で勝ち抜くための発想転換」―グローバル市場で“勝ち抜くための戦略”−(1)
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