第63回(2012.04.13) 「プロジェクトマネジメントを楽しむ」 その63
「世界が変化している。原理・原則を知って変化に対応しよう」
―ビジネスの基本に戻ろう(1)―
−変わる基本、変わらぬ基本の理解−
渡辺 貢成
 kosei.watanabe@sweet.ocn.ne.jp
(有)経営組織研究所


−変わる基本、変わらぬ基本の理解−
「世界が変化している。原理・原則を知って変化に対応しよう」―ビジネスの基本に戻ろう(1)― 12年04月


B.先生、桜も開き新鮮な気分です。本年度もよろしくお願いします。

A.新年度になったね。これから日本は変わる気がしているが、君はどのように感じているかね。

B.昨年は大震災で色々なことが見えてきました。緊急事態が発生して、誰が頼りになり、誰が駄目なのか見えてしまった感じですね。

A.その通りだ。私が知る限り、日本人はすごいねという評価とまったく駄目だねという極端な評価が表面化したと思う。その第一は震災に直面した被災者の行動とボランティア活動だ。これには世界中が驚きの目で日本人を評価した。その後原発事故問題で役所や電力関係者の対応が想定外という感覚をもっていること、原因究明や、再開に向けて国民が納得できる対応が皆無で、停電が起こるから原発の再開は必要だと他人事だ。

B.先生、われわれプロジェクト・マネジャーは決して想定外などといって逃げたりしません。プロジェクトは常に想定外が起きて当たり前で、私達はすべて対処し、顧客から信頼されています。

A.その通りだ。しかし、世界を更に驚かせたことがある。東電の安易な計画停電に対し、停電される企業にとってこれは死活問題だ。大企業だけでなく中小企業も自主的にウルトラCクラスの節電案を考え、これを実行し、無理と思われた停電を回避した。この日本人の追い詰められた時に発揮する集団のパワーに世界中が感嘆の声を上げているんだ。

B.日本の新聞には何も書いていませんよ。国民を元気にすることより、駄目だ、駄目だとしか彼等は書きませんね。

A.役所の肝いりなしで事態が収拾できたとなるとマスコミも困るのだろう。はっきり言って今まで日本をここまで駄目にしたのは、エスタブリッシュと称する、政治家、役所、マスコミ、経営者、コンサルタント達だな。全く頼りにならないことを実感した。

B.先生、でも日本の下々は頼りになるということですね。希望が持てました。私達は「日本の現場力に期待しよう」ということですか。

A.日本の現場力とは少し違うと思う。人は困った時に基本に返れといわれている。彼等は教科書に書かれていないことは実行しない人種だった。「アメリカではXXで成功している」。「戦略は○○だ」と、自分の考えを出すことなく、失敗しても責任をとらなくて済む方法を長年選んできた。これこそ現代のエスタブリッシュが築き上げてきた今日の堕落だ。ところが震災を経験し彼等が想定外のことは自分で考える以外に解決できないことに気がついた。そして、やってみたらできたという実績は大きい。大げさに言うと日本は再生しそうだ。

B.仰るとおり、少し違った方向が見えてきたのかもしれませんね。

A.自分で、ものを考えるために、今年度はまず、原理・原則を再度学んでもらいたいと思っている。

B.古い原理・原則が役に立つのですか。

A.人間の社会は面白いもので、スパイラルの輪を少しづつ大きくしながら上向きに広がっている。昔の取引は競(せり)で決めていた。或いは値段は売り手/買い手の交渉で決めていた。それが煩わしいと正札制を誰かが始めると、すべてが正札制となる。ところがインターネットが普及すると中古品のオークション(せり売り)が盛んになる。回帰性があるから原理・原則は役に立つ。

B.なるほど、私もゴルフのクラブをオークションで買いました。

A.ビジネスの世界に戻ろう。ビジネスは国境を越えて行われている。ここで使われている基本は、単純で、わかりやすく、便利で、誰とでも共通に使える。ところが日本は島国であったため、独自のビジネス習慣が生まれている。多くの場合、権力者が自分勝手なやり方を押し付け、それが理不尽にも商習慣として通用している場合が多い。しかし、この日本流を押し通していると、ゆがんだ関係性ができ、グローバル競争力が低下してしまう。

B.顧客有利の契約は、最終的には顧客にその弊害が戻っているケースをよく見かけます。結局、双方が損をしていることになりますね。

A.その通りだ。日本のITプロジェクトだが、発注者が世界で通用しない、発注者有利の契約を押し付け(海外の業者には決してそのような要求をしていない)でいる。そのため無償でスコープの拡大や、変更が多く、業者は泣きを見ていることが多い。この変更にカネを払わない習慣はプロジェクトの最初に行うべき構想計画を省略する方式を産み出した。その結果業者が泣きをみるのは当然だが、発注者にも大きな損害を与えている。現実はシステムに過剰な要求が含まれているため、運用費と保守費が高くなる。変更が多いためシステムが複雑となり、保守はシステム構築業者にお願いすることになる。この結果システム開発プロジェクトで損をした費用を業者は回収する。この関係は毎年継続されるため、「できの悪いシステム」が金の卵に変身する。

B.基本が大切だということがよくわかりました。来月もお願いします。



以上


プロジェクトマネジメントを楽しむ バックナンバー
第1回 プロジェクトを楽しむには多くの仕掛けがいる
第2回 PMを楽しむ仕掛けは時間が生み出す
第3回 基礎をしらないとPMは楽しくならない
第4回 仕事を減らす楽しみを覚えよう   (2)  (3)

第7回 行動の中から楽しみを生み出そう(1)
第8回 行動を頭に合わせよう(2)
第9回 行動を頭に合わせよう(3)
第10回 目的があって仕事がある(1)   (2)   (3)

第13回 日本の『現場力』を再度強化しよう(1) 
  (2)   (3)  (4)  (5)  (6)  (7)  (8)  (9)  (10)

第23回 「何か変だな」(1)〜「お客様は神様か?」
第24回 「何か変だな」(2)〜「頭を使う人々が、(生産性に)頭を使わないのはなぜ?」
第25回 「何か変だな」(3)〜「問題と課題の違いがわかるかな?」
第26回 「何か変だな」(4)〜「資格を取っても役に立たない?」
第27回 「何か変だな」(5)〜「「物事」とは何か?」
第28回 「何か変だな」(6)〜「タテマエとホンネ」とは何か?
第29回 「何か変だな」(7)〜「カタカナ言葉と漢字」
第30回 「何か変だな」(8)〜「これからは日本の時代って本当?」
第31回 「何か変だな」(9)〜「ものづくりは技術が基盤って本当?」
第32回 「何か変だな」(10)〜「サービスはタダか、サービスはマネーか?」
第33回 「何か変だな」(11)〜「少子化問題と一人っ子政策の討論」
第34回 「何か変だな」(12)〜「何か変だな!講演会」
第35回 「何か変だな」(13)〜「何か変だな!講演会2」
第36回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(1)〜PMOに消火活動チームの設置
第37回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(2)〜働く女性のために小学校の低学年児童の居残りは学校が面倒を見たら!
第38回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(3)〜アイデアは出すことより、実行+が難しい。実行が難しいから、皆考えなくなる
第39回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(4)〜How to の時代からWhat toへの転換
  (5)  (6)  (7)  (8)  (9)  (10)  (11)  (12)  (13)  (14)  (15)

第51回 「プロジェクトを実践して楽しもう!」(1)〜What toからHow to enjoy project managementへの転換
第52回 「プロジェクトを実践して楽しもう!」(2)―緊急時の対策― 〜What toからHow to enjoy project managementへの転換
  (3)  (4)  (5)  (6)  (7)

第58回 「プロジェクトを実践して楽しもう!」―情報を活用する能力(1)―〜What toからHow to enjoy project managementへの転換
  (2)  (3)  (4)  (5)

第63回 「世界が変化している。原理・原則を知って変化に対応しよう」―ビジネスの基本に戻ろう(1)― −変わる基本、変わらぬ基本の理解−
  (2)  (3)  (4)  (5)  (6)  (7)  (8)  (9)  (10)  (11)  (12)

第75回 「世界が変化している中で、日本人は自分のことをよく知っているのか」―勉強をしたバカとは何か勉強しよう(1)― 
  (2)  (3)  (4)  (5)  (6)   (7)   (8)  (9)  (10) (11)   (12)

第87回 “想定外”と“ゼロベース発想”−(1)
  (2)   (3)  (4)  (5)     (6)   (7)    (8)   (9)    (10)  (11)   (12)  

第99回 「日本人がグローバリゼーション下で勝ち抜くための発想転換」―グローバル市場で“勝ち抜くための戦略”−(1)
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