第17回(2008.05.09) 「プロジェクトマネジメントを楽しむ」 その17
日本の『現場力』を再度強化しよう(5)
渡辺 貢成
 kosei.watanabe@sweet.ocn.ne.jp
(有)経営組織研究所

1.先月4月号は
先月は構想計画の話しをした。先日JAXA(航空宇宙開発機構)で今年のPMAJのPMシンポジウム2008の基調講演をお願いする先生とお話しをしていた中で、昨年からシステムエンジニアリングの勉強会を再開し、宇宙プロジェクトの構想計画を充実させる話しを聞いた。日本のように「歩いてから考えるやり方は無駄が多いこと、予算を余計使ってしまうことがあり、従来と違い国家予算が縮小傾向にあるので、益々構想計画が大切だ」という主旨の話しであった。
この話しは4月号のメルマガの主旨は全く一致していたといえる。

2.今月は現場力に戻る
 日本の現場力は世界に冠たるものがあった。そこで今回は高度成長期時代の話にさかのぼる。日本は高度成長が達成されると、日本的謙虚さがなくなり、おごりの精神が日本国土を覆いつくした。マスコミの論調は「もう米国から学ぶものがなくなった」と豪語した。実際この日本の成功は世界中の注目の的であったから致し方ないともいえる。欧米の使節団が日本に大勢やってきた。残念ながら経団連も経営者自身も、また、大学の経営学の先生方も日本の高度成長の要因を的確に説明できなかった。この結果欧州使節団は帰国後「日本から正しい答えをもらえなかった。説明できなくて成功しているから日本は異質な国だ」というコメントを発表し、日本異質論が世界的な評価となった。日本の成長を正しく評価したのは米国であり、「米国が日本に負けたのは製品の品質に対する考え方が誤っていた。日本に勝つには製品の品質で勝つ必要があるが、製品の品質だけでは日本に勝てない。ではどうするべきか。日本企業の弱いところは経営者のマネジメント能力だ。我々は経営の質で勝負しよう」ということになり、「経営の品質向上」のためのマルコム・ボルトリッジ賞が設定され、経営に磨きをかけるようになった。

ここで米国の現場力を説明する。米国企業は「テーラーの科学的管理法」を全面的に取り入れ100年間これを踏襲して来た。ここでテーラーの科学的管理法の内容を簡単に説明する。
・ 一流の作業者の作業を単純な要素動作に分析し、不要な動作を取り除く
・ 各要素動作に要する時間を測定する
・ 避けられない中断や遅れについて、その分の時間を余裕率として記録するとともに、肉体的疲労回復に必要な休息時間とその回数を求める
・ このようにして1日に何回その作業がを実施できるかを計算することで公正な1日の作業量を決めることができた
このようにして標準時間を決め、標準作業量との比較で賃金を決定した。
これはドラッカーも高く評価しており、米国の労働者の生産性は産業革命以降100年間労働生産性は変わらなかったが、テーラー以降生産性は3〜4%向上するようになった。これに対し労働組合が労働強化としてテーラー方式に強い反発を見せたが、結果は逆で生産性による労働時間の短縮と報酬の増加が得られたことでテーラーは高く評価され、米国では不動の地位を得た。(ドラッカー著「プロフェッショナルの条件」T型フォードで有名なフォード自動車は労働者を製造プロセスごとに役割を決め、如何にスピーディーに作業をこなすかの訓練を授け、量産式流れ作業に従事させ成功させた。このとき社長のフォードは労働者に対し「私が欲しいのは労働者の手と足だ、頭はいらない。彼らは私が考えたことを忠実に実行すればいい」と考えていた。また、テーラーは「現場の人々が思い思いに創意、工夫することは実は効果をもたらさない。最善でもせいぜい平均的な状態にしかならない。私の観察によればむしろ個々の工夫は浅知恵でありマイナスの方が多い。会社全体で見ると経営者かそのスタッフが科学的に考えて生産性を挙げることが遥かに高い」といっている。

これが米国での労働者に対する基本的な考え方となって今日に至っている。「考える必要のない労働者、考える経営者および経営予備軍」という発想である。米国のエンプロイーという言葉は「上から指示されたことをする労働者で成果には関係しない」ことを意味する。成果を考えるのは経営者の仕事だよというのが米国社会的で認知されたものである。

ではこの科学的管理法に対し、一時的にせよ、製造業において日本が何故勝ったのか。この評価がなされていないことが実は問題で、日本は集団主義で勝ったことになっている。これは半分正しい。日本の労働者は頭を使う労働者で、ここが米国との違いである。労働者が頭を使えば勝つのかというと、テーラーのいうように浅知恵的なものがあるともいえる。正しくは、この日本人の「考える労働者」を正しくリードした人物がいるからである。それは来月のお楽しみである。

以上



プロジェクトマネジメントを楽しむ バックナンバー
第1回 プロジェクトを楽しむには多くの仕掛けがいる
第2回 PMを楽しむ仕掛けは時間が生み出す
第3回 基礎をしらないとPMは楽しくならない
第4回 仕事を減らす楽しみを覚えよう   (2)  (3)

第7回 行動の中から楽しみを生み出そう(1)
第8回 行動を頭に合わせよう(2)
第9回 行動を頭に合わせよう(3)
第10回 目的があって仕事がある(1)   (2)   (3)

第13回 日本の『現場力』を再度強化しよう(1) 
  (2)   (3)  (4)  (5)  (6)  (7)  (8)  (9)  (10)

第23回 「何か変だな」(1)〜「お客様は神様か?」
第24回 「何か変だな」(2)〜「頭を使う人々が、(生産性に)頭を使わないのはなぜ?」
第25回 「何か変だな」(3)〜「問題と課題の違いがわかるかな?」
第26回 「何か変だな」(4)〜「資格を取っても役に立たない?」
第27回 「何か変だな」(5)〜「「物事」とは何か?」
第28回 「何か変だな」(6)〜「タテマエとホンネ」とは何か?
第29回 「何か変だな」(7)〜「カタカナ言葉と漢字」
第30回 「何か変だな」(8)〜「これからは日本の時代って本当?」
第31回 「何か変だな」(9)〜「ものづくりは技術が基盤って本当?」
第32回 「何か変だな」(10)〜「サービスはタダか、サービスはマネーか?」
第33回 「何か変だな」(11)〜「少子化問題と一人っ子政策の討論」
第34回 「何か変だな」(12)〜「何か変だな!講演会」
第35回 「何か変だな」(13)〜「何か変だな!講演会2」
第36回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(1)〜PMOに消火活動チームの設置
第37回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(2)〜働く女性のために小学校の低学年児童の居残りは学校が面倒を見たら!
第38回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(3)〜アイデアは出すことより、実行+が難しい。実行が難しいから、皆考えなくなる
第39回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(4)〜How to の時代からWhat toへの転換
  (5)  (6)  (7)  (8)  (9)  (10)  (11)  (12)  (13)  (14)  (15)

第51回 「プロジェクトを実践して楽しもう!」(1)〜What toからHow to enjoy project managementへの転換
第52回 「プロジェクトを実践して楽しもう!」(2)―緊急時の対策― 〜What toからHow to enjoy project managementへの転換
  (3)  (4)  (5)  (6)  (7)

第58回 「プロジェクトを実践して楽しもう!」―情報を活用する能力(1)―〜What toからHow to enjoy project managementへの転換
  (2)  (3)  (4)  (5)

第63回 「世界が変化している。原理・原則を知って変化に対応しよう」―ビジネスの基本に戻ろう(1)― −変わる基本、変わらぬ基本の理解−
  (2)  (3)  (4)  (5)  (6)  (7)  (8)  (9)  (10)  (11)  (12)

第75回 「世界が変化している中で、日本人は自分のことをよく知っているのか」―勉強をしたバカとは何か勉強しよう(1)― 
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第87回 “想定外”と“ゼロベース発想”−(1)
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第99回 「日本人がグローバリゼーション下で勝ち抜くための発想転換」―グローバル市場で“勝ち抜くための戦略”−(1)
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