第76回(2013.05.17) 「プロジェクトマネジメントを楽しむ」 その76
「世界が変化している中で、日本人は自分のことをよく知っているのか」
―勉強をしたバカとは何か勉強しよう(2)―

渡辺 貢成
 kosei.watanabe@sweet.ocn.ne.jp
(有)経営組織研究所

「世界が変化している中で、日本人は自分のことをよく知っているのか」―
−勉強をしたバカとは何か勉強しよう−(1)

A.4月号は面白かった。今月は何か面白い話はないかね。

B.国や地方自治が地域の開発に一生懸命努力をした話をします。

C.それなら美徳ではないですか。先月私が話した、行き過ぎた美徳に何か落ちがありそうですね。

B.日本では地域の産業開発は道路網の整備だとして、東名、中央、山陽、東北各高速自動車道路を推進しました。これに乗り遅れた県が地元の産業振興のために高速道路誘致が知事の仕事になりました。長野県知事はクレバーな人物で、まず冬季オリンピックの誘致に成功しました。この結果高速道路は必然的に国の計画に採用されました。ついで新幹線が建設され、オリンピックには大勢の人々が長野市を訪問し、県知事の戦略は大勝利でした。長野市はホテルも増やし、外来者が増え、大変潤いました。 

C.なにやら、落ちが見えてきました。

A.落ちのある話は、最後まで黙って聞こうじゃないか。

C.申し訳ありません。話を続けてください。

B.長野市は従来名古屋圏と見られていましたが、新幹線のお陰で東京圏に様変わりしました。最初の1年は東京地区からの来訪者が増えましたが、その後長野への来訪者が減りました。それに引き換え、増えたのは長野市民の東京行きです。東京は長野に比べて魅力があったからです。観光客の減少という思惑がはずれた長野市民は約束が違うじゃないかと苦情を云い、次の選挙で県知事を落選させました。

A.役人より、市民のほうが賢いと言うのが落ちかな。

B.一般の人は県知事を「勉強したバカ」と捉えるかもしれません。皆さんはどのように考えですか。

C.私もこの問題では、県知事の落選に、喝采をあびせたが、よく考えてみると、県知事は彼の立場としてよくやったといえます。この問題の本質は2つあります。第一は「道路や鉄道の誘致は地域の発展に欠かせない要素の一つで、必要条件です」。その面で、知事は正しく行動しました。第二の問題は「必要条件はクリアしたが、十分条件は何かを考えるのを忘れていた」ことです。人を引き寄せたいなら「街そのものに魅力を持たせる」ことです。他の都市と差別化した街の魅力とは、「住民そのものが魅力的になる」ことです。魅力ある商品を考える。それを売る人々の熱意や接客で顧客に旅の楽しさを与える工夫をすることなどではないでしょうか。これは県知事にできることではなく、長野市長を含む市民の仕事です。ところが彼らは「集客は自分の仕事だという意識もなく、何もしなかった」のです。その上知事の努力を裏切って落選させたともいえます。市民が集客という努力を市あげて行えば、例え集客に失敗したとしても、自らの至らなさを理解し、知事を落選させず、知事と一緒に次の展開をしたかもしれません。「何もしない人は失敗もせず、反省もできないから、発展もありません。その意味で言えば「勉強したバカ」は長野市長と市民と言えます。

E.「勉強したバカ」というテーマで議論してきました。Bさんの話の途中で、Cさんから「落ちが見えてきた」とチャチャが入りました。その時「県知事は勉強したバカ」といいたいのだと思いました。しかし、Cさんは本当の「勉強したバカ」を市民と指摘しました。これは従来にない発想です。確かに国民が動かないと改革はできないことは事実ですね。勉強になりました。

D.また、マスコミにも問題があります。マスコミは「長野オリンピック誘致で長野市の繁栄は約束された」様な記事を出します。県民や市民はその気になってしまい、誰かが繁栄を持ってきてくれると錯覚するのです。マスコミが悪いと言う判断もありますが、やはり市民がこの絶好の機会をどのように活用するかに懸かっています。

A.政治家やマスコミは起爆剤であると考えることが正しいと言うのだな。その機会をうまく捉えることができないと、「起爆剤が創ってくれた価値」を失ってしまうといいたいわけだ。

C.その通りです。今、日本はアベノミクスで沸きかえっています。しかし、円安になれば成功と言う気分になっている人々もいます。長野市の事例を日本人は学んで欲しいと思っています。そして国民は自分が何で不況脱出に貢献できるかを考えて下さい。

A.今日はまた、「新しい角度で物を見ろ」という教えを得たことに敬意を表しよう。来月もまた発展的な議論をしたい。皆さんよろしく頼みます。


以上


プロジェクトマネジメントを楽しむ バックナンバー
第1回 プロジェクトを楽しむには多くの仕掛けがいる
第2回 PMを楽しむ仕掛けは時間が生み出す
第3回 基礎をしらないとPMは楽しくならない
第4回 仕事を減らす楽しみを覚えよう   (2)  (3)

第7回 行動の中から楽しみを生み出そう(1)
第8回 行動を頭に合わせよう(2)
第9回 行動を頭に合わせよう(3)
第10回 目的があって仕事がある(1)   (2)   (3)

第13回 日本の『現場力』を再度強化しよう(1) 
  (2)   (3)  (4)  (5)  (6)  (7)  (8)  (9)  (10)

第23回 「何か変だな」(1)〜「お客様は神様か?」
第24回 「何か変だな」(2)〜「頭を使う人々が、(生産性に)頭を使わないのはなぜ?」
第25回 「何か変だな」(3)〜「問題と課題の違いがわかるかな?」
第26回 「何か変だな」(4)〜「資格を取っても役に立たない?」
第27回 「何か変だな」(5)〜「「物事」とは何か?」
第28回 「何か変だな」(6)〜「タテマエとホンネ」とは何か?
第29回 「何か変だな」(7)〜「カタカナ言葉と漢字」
第30回 「何か変だな」(8)〜「これからは日本の時代って本当?」
第31回 「何か変だな」(9)〜「ものづくりは技術が基盤って本当?」
第32回 「何か変だな」(10)〜「サービスはタダか、サービスはマネーか?」
第33回 「何か変だな」(11)〜「少子化問題と一人っ子政策の討論」
第34回 「何か変だな」(12)〜「何か変だな!講演会」
第35回 「何か変だな」(13)〜「何か変だな!講演会2」
第36回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(1)〜PMOに消火活動チームの設置
第37回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(2)〜働く女性のために小学校の低学年児童の居残りは学校が面倒を見たら!
第38回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(3)〜アイデアは出すことより、実行+が難しい。実行が難しいから、皆考えなくなる
第39回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(4)〜How to の時代からWhat toへの転換
  (5)  (6)  (7)  (8)  (9)  (10)  (11)  (12)  (13)  (14)  (15)

第51回 「プロジェクトを実践して楽しもう!」(1)〜What toからHow to enjoy project managementへの転換
第52回 「プロジェクトを実践して楽しもう!」(2)―緊急時の対策― 〜What toからHow to enjoy project managementへの転換
  (3)  (4)  (5)  (6)  (7)

第58回 「プロジェクトを実践して楽しもう!」―情報を活用する能力(1)―〜What toからHow to enjoy project managementへの転換
  (2)  (3)  (4)  (5)

第63回 「世界が変化している。原理・原則を知って変化に対応しよう」―ビジネスの基本に戻ろう(1)― −変わる基本、変わらぬ基本の理解−
  (2)  (3)  (4)  (5)  (6)  (7)  (8)  (9)  (10)  (11)  (12)

第75回 「世界が変化している中で、日本人は自分のことをよく知っているのか」―勉強をしたバカとは何か勉強しよう(1)― 
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第87回 “想定外”と“ゼロベース発想”−(1)
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第99回 「日本人がグローバリゼーション下で勝ち抜くための発想転換」―グローバル市場で“勝ち抜くための戦略”−(1)
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