第90回(2014.07.18) 「プロジェクトマネジメントを楽しむ」 その90
「日本人がグローバリゼーション下で勝ち抜くための発想転換」
−アベノミクスを成功させるためにー
―“想定外”と“ゼロベース発想”−(4)

渡辺 貢成
 kosei.watanabe@sweet.ocn.ne.jp
(有)経営組織研究所


“想定外”と“ゼロベース発想”−(1)
“想定外”と“ゼロベース発想”−(2)
“想定外”と“ゼロベース発想”−(3)
―“想定外”と“ゼロベース発想”−(4)


A.先月は問題解決の諸法則と個人の資質とがリンクしている話が面白かった。今月は具体的な事例で説明してもらえると読者も喜ぶと思う。どうかな。

C.私が実施した事例をお話しします。
ある日当社にA電力から電話があった。B地区の原発は岩盤が深く、そのため建設工期が他の原発より4か月長い。A電力は工期の長い原子炉建屋の工程短縮研究をゼネコンに依頼をした。石油火力を原発に変えると一日1億円燃料費が安くなるためで、研究費としてX億円用意した。ゼネコンは「4か月の短縮は無理だ」と回答した。
A電力は困りプラント建設の当社に研究依頼を打診してきた。

A.御社は原子炉建屋の建設経験があるの?

C.ありませんが、関係者を集めて討議しました。関係者の意見は下記の通り。
@原子炉建屋設計は耐震が難しく、経験がないとできない
A経験のあるゼネコンが無理と言っている。経験のない我々ができるわけがない
B本件はわれわれの本業ではない。成功しても次のビジネスにならず、失敗すれば本業も取れなくなる。わが社にメリットがない。

一つ一つもっともな意見である。このままの意見を本部長に報告しようと考えた。しかし本部長は切れ者である。「どうすればできるか」というゼロベース視点で、少しは討議したかと、切り替えされる。『お世話になっているA電力が困っている問題に、わが社の助言を電力は求めているのだよ』という鋭い本部長の質問がでたら、私は答えられない。これでは電力の責任者として失格だと思った。そこで発想を切り替えした。

・皆さんの意見は100%賛成です。だが、我々の立場はゼネコンが考えられなかった問題を、従来と別の発想で考え、ゼネコンを支援する立場です。私たちの本業はPM(プロジェクトマネジメント)です。最近の原発の工程のすべてを調査し、工程間のやりくりで工期短縮できる箇所を探すのがPM技術です。ゼネコンと一緒に考えてみませんか。
・しかし、ゼネコンがノーと言っています。ゼネコンが協力してくれますか?
・大丈夫です。ゼネコンが協力する条件で、電力にOKしましょう。
・わかりました。それなら検討します。
皆で、検討した結果を下記にまとめる。

@ 国内最新の典型的な原子力発電所の工程表とB地区の工程表の相違を検討する。
これと比較して、工程短縮のアイデアがでなかったとしても、原発工程の有益な種々の問題点を発見できるので、その評価は60点とみなしてもらう。
A 米国の最新の原子力発電所の工程を調査し、工程短縮のアイデアが出なかったとしても米国企業の種々の技術、ノウハウを獲得できその評価を70点とみなしてもらう。
B 国内外の工程表の中から、小さい最善策で1か月でも短縮できれば80点とみなせる。
理由はプラント建設には大勢の業者が参加し、全業者がトラブルなく工事を完了させることは皆無だ。どこかの業者のトラブルを吸収する余裕を元請けは工程に加味している。少しの余裕の積み重ねで、1か月くらいの余裕を生み出せる。この詳細な調査で、業者をコントロールするノウハウを獲得でき、これは80点以上の価値を生み出す。
C ゼネコンが工程管理以外の新しい工法の開発に成功すれば90点となる
D その工法が有効で4か月工程短縮ができれば100点となる。
この理論を構築し、社内を納得した。

A.面白い論理だね。A電力は納得したかね。

C.これも“ゼロベース”説得法を考えました。

C.本件調査は条件付きでお引き受けします。

K.(顧客担当官)どうやって、4か月短縮するのかね。

C.逆にお伺いします。4か月短縮を厳守なさる根拠をお教え願いたい。

K.他原発より4か月工程が長いからだ。

C.4か月が絶対条件ではなく、1か月でも早ければ30億円の利益を生み、目的達成と考えてよろしいですね。4か月に拘束されないと小さなアイデアなら、それぞれの段階の責任者は短縮するアイデアを出すでしょう。これら小さな改善を集めると、1か月の短縮は可能と思います。当社はゼネコンを支援して、小さなアイデアを出してもらうヒントで彼らを誘導します。

A.受注できたのかね

C.できました。国内調査、海外調査をすませ、帰国後ゼネコンは業界の名誉にかけて新しい耐震構造を開発し、4か月短縮に成功し、その後の原発工程はすべて短縮されました。

A.それにしてもなぜ、原子炉建屋の経験のない御社が受注できたのかね。

C.企業秘密ですが、わが社はシェル石油からの依頼で、世界で最初に石油精製プラントの工程管理をするITシステムを構築しました。A電力はこの技術を買ってくれました。


以上

プロジェクトマネジメントを楽しむ バックナンバー
第1回 プロジェクトを楽しむには多くの仕掛けがいる
第2回 PMを楽しむ仕掛けは時間が生み出す
第3回 基礎をしらないとPMは楽しくならない
第4回 仕事を減らす楽しみを覚えよう   (2)  (3)


第7回 行動の中から楽しみを生み出そう(1)
第8回 行動を頭に合わせよう(2)
第9回 行動を頭に合わせよう(3)
第10回 目的があって仕事がある(1)   (2)   (3)

第13回 日本の『現場力』を再度強化しよう(1)
 
  (2)   (3)  (4)  (5)  (6)  (7)  (8)  (9)  (10)

第23回 「何か変だな」(1)〜「お客様は神様か?」
第24回 「何か変だな」(2)〜「頭を使う人々が、(生産性に)頭を使わないのはなぜ?」
第25回 「何か変だな」(3)〜「問題と課題の違いがわかるかな?」
第26回 「何か変だな」(4)〜「資格を取っても役に立たない?」
第27回 「何か変だな」(5)〜「「物事」とは何か?」
第28回 「何か変だな」(6)〜「タテマエとホンネ」とは何か?
第29回 「何か変だな」(7)〜「カタカナ言葉と漢字」
第30回 「何か変だな」(8)〜「これからは日本の時代って本当?」
第31回 「何か変だな」(9)〜「ものづくりは技術が基盤って本当?」
第32回 「何か変だな」(10)〜「サービスはタダか、サービスはマネーか?」
第33回 「何か変だな」(11)〜「少子化問題と一人っ子政策の討論」
第34回 「何か変だな」(12)〜「何か変だな!講演会」
第35回 「何か変だな」(13)〜「何か変だな!講演会2」
第36回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(1)〜PMOに消火活動チームの設置
第37回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(2)〜働く女性のために小学校の低学年児童の居残りは学校が面倒を見たら!
第38回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(3)〜アイデアは出すことより、実行+が難しい。実行が難しいから、皆考えなくなる
第39回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(4)〜How to の時代からWhat toへの転換
  (5)  (6)  (7)  (8)  (9)  (10)  (11)  (12)  (13)  (14)  (15)

第51回 「プロジェクトを実践して楽しもう!」(1)〜What toからHow to enjoy project managementへの転換
第52回 「プロジェクトを実践して楽しもう!」(2)―緊急時の対策― 〜What toからHow to enjoy project managementへの転換
  (3)  (4)  (5)  (6)  (7)

第58回 「プロジェクトを実践して楽しもう!」―情報を活用する能力(1)―〜What toからHow to enjoy project managementへの転換
  (2)  (3)  (4)  (5)

第63回 「世界が変化している。原理・原則を知って変化に対応しよう」―ビジネスの基本に戻ろう(1)― −変わる基本、変わらぬ基本の理解−
  (2)  (3)  (4)  (5)  (6)  (7)  (8)  (9)  (10)  (11)  (12)

第75回 「世界が変化している中で、日本人は自分のことをよく知っているのか」―勉強をしたバカとは何か勉強しよう(1)― 
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第87回 「日本人がグローバリゼーション下で勝ち抜くための発想転換」−アベノミクスを成功させるためにー
“想定外”と“ゼロベース発想”−(1)

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第99回 「日本人がグローバリゼーション下で勝ち抜くための発想転換」―グローバル市場で“勝ち抜くための戦略”−(1)
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