第91回(2014.08.19) 「プロジェクトマネジメントを楽しむ」 その91
「日本人がグローバリゼーション下で勝ち抜くための発想転換」
−アベノミクスを成功させるためにー
―“想定外”と“ゼロベース発想”−(5)

渡辺 貢成
 kosei.watanabe@sweet.ocn.ne.jp
(有)経営組織研究所


“想定外”と“ゼロベース発想”−(1)
“想定外”と“ゼロベース発想”−(2)
“想定外”と“ゼロベース発想”−(3)
“想定外”と“ゼロベース発想”−(4)
―“想定外”と“ゼロベース発想”−(5)


A.先月は原子力発電所のベースとなる原子炉建屋の工程を短縮する具体的な話が聞けて面白かった。誰もわからない問題に挑戦するとき、難しそうだからやめるというのでは研究開発など成り立たない。君の話を聞いて、問題解決の手法はいろいろあるが、難しい問題に遭遇したら、絡み合った難しい問題を解きほぐして誰にでもできるやり方に変形させることが問題解決法だと感じた。

それはさておき、先々月は人間の能力レベルに合わせた問題解決の諸法則があると言っていた。その法則と、今回の提案はリンクしているのかな。

C.問題解決の諸法則は私の経験則です。プロジェクトマネジャーの仕事の一つに人物鑑定があります。人物の能力レベルと問題解決の経験則が一般に一致しています。

BタイプとスーパーBタイプの問題解決経験則
Bタイプ人材は企業の中ではエリートです。役員クラスは通常このジャンルに属します。日本のエリートは受験成功者です。自己の高偏差値に大きなプライドを持っています。しかし高偏差値は正解のある問題解決が得意な人です。正解のない問題に弱いのですが、その弱さをカバーするために、この問題は困難という論法を活用します。この論法を使うエリートは日本では何故か役員にはなれます。上司から見て安全パイだからです。しかし、その先の地位につけません。偉くなる人物は一味違います。これをスーパーBタイプと命名します。彼は最初に問題の難しさを主張し、慎重に対処するべきであると結論付けます。その後Aタイプの人材が問題解決法を提案しますが、彼は反対しません。Aタイプの提案が軌道に乗り始めます。その機会を捉えて、上司に経過報告をおこないます。『Aは私のアドバイスをよく理解し、解決の糸口に到達しそうです。この際組織でバックアップして、問題解決をまとめます』と報告して、問題を自分の傘下で実施することを宣言します。賢く出世するのがスーパーBタイプです。

A.ではAタイプはどのようにして問題を解決するのかな。

C.Aタイプ問題解決の経験則
Aタイプは困難な問題に直面すると、自らの力で解決できるのだと自己暗示をかけます。次に前回もできたから今度もできると、更に自信を裏付けする言葉を口に出します。
自信を待てたら、経験的問題解決の法則を再度確認します。
第一法則「世の中に解決できなかった問題はなかった」ことを復唱します。
第二法則「人間にできる解決策には前例がある」
第三法則「根本的解決は不可能である」
第四法則「問題の中に答えがある」
第五法則「答えは新たな問題をつくる」
地球創世記以来いろいろな問題が起こり、少しづつ解決して今日に至っています。しかし、問題のすべてが解決したのではなく、新たな問題をつくっている。皆は問題解決とは100点以外はダメだと勝手に思い込んでいます。問題は少しづつ解決すると容易で、同時に抵抗に遭いません。こう考えると気が楽くになり、逃げる必要はなくなります。

A.なるほど、気楽に取り組むと前進できる。少しの前進でも問題解決といえるという発想は面白いね。ところで
Cタイプ人材の問題解決法を説明してくれないか

C.『好ましくはないが世間で使われている問題解決の諸法則』を説明します。
第一条「先送り型問題解決の法則」
 君の提案はいい意見だが時期尚早だなという手法
第二条「交渉型問題解決の法則」(足して2で割る方式)
 君たちの意見も入れてWin/Winとしよう
第三条「時間切れ型問題解決の法則」
 この問題は今日中に決めないといけない。反対意見があれば他の解決策を提案してくれ。もしにならばこの案で行こう。この時期では誰も反対できない。
第四条「場の空気型問題解決の法則」
 反対できない場をつくりあげていく手法
実は問題解決の80%はこの手法で行っています。だが、誰でもできるこの手法を提案し、問題解決しても出世の対象にはならないということです。
例外は政治家です。彼はCタイプの問題解決者ですが、売り物は『押しの強さ』です。

A. 君の言う問題解決法をまとめてみると、すべての問題解決手法は時と所をわきまえてうまく使へということになりそうだな。

C.さすが先生ですね。その通りです。しかし長年のプロマネ経験で、私が実行してきたのはすべて初物のゼロベース発想でした。次回は初物ゼロベース発想を披露します。


以上

プロジェクトマネジメントを楽しむ バックナンバー
第1回 プロジェクトを楽しむには多くの仕掛けがいる
第2回 PMを楽しむ仕掛けは時間が生み出す
第3回 基礎をしらないとPMは楽しくならない
第4回 仕事を減らす楽しみを覚えよう   (2)  (3)


第7回 行動の中から楽しみを生み出そう(1)
第8回 行動を頭に合わせよう(2)
第9回 行動を頭に合わせよう(3)
第10回 目的があって仕事がある(1)   (2)   (3)

第13回 日本の『現場力』を再度強化しよう(1)
 
  (2)   (3)  (4)  (5)  (6)  (7)  (8)  (9)  (10)

第23回 「何か変だな」(1)〜「お客様は神様か?」
第24回 「何か変だな」(2)〜「頭を使う人々が、(生産性に)頭を使わないのはなぜ?」
第25回 「何か変だな」(3)〜「問題と課題の違いがわかるかな?」
第26回 「何か変だな」(4)〜「資格を取っても役に立たない?」
第27回 「何か変だな」(5)〜「「物事」とは何か?」
第28回 「何か変だな」(6)〜「タテマエとホンネ」とは何か?
第29回 「何か変だな」(7)〜「カタカナ言葉と漢字」
第30回 「何か変だな」(8)〜「これからは日本の時代って本当?」
第31回 「何か変だな」(9)〜「ものづくりは技術が基盤って本当?」
第32回 「何か変だな」(10)〜「サービスはタダか、サービスはマネーか?」
第33回 「何か変だな」(11)〜「少子化問題と一人っ子政策の討論」
第34回 「何か変だな」(12)〜「何か変だな!講演会」
第35回 「何か変だな」(13)〜「何か変だな!講演会2」
第36回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(1)〜PMOに消火活動チームの設置
第37回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(2)〜働く女性のために小学校の低学年児童の居残りは学校が面倒を見たら!
第38回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(3)〜アイデアは出すことより、実行+が難しい。実行が難しいから、皆考えなくなる
第39回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(4)〜How to の時代からWhat toへの転換
  (5)  (6)  (7)  (8)  (9)  (10)  (11)  (12)  (13)  (14)  (15)

第51回 「プロジェクトを実践して楽しもう!」(1)〜What toからHow to enjoy project managementへの転換
第52回 「プロジェクトを実践して楽しもう!」(2)―緊急時の対策― 〜What toからHow to enjoy project managementへの転換
  (3)  (4)  (5)  (6)  (7)

第58回 「プロジェクトを実践して楽しもう!」―情報を活用する能力(1)―〜What toからHow to enjoy project managementへの転換
  (2)  (3)  (4)  (5)

第63回 「世界が変化している。原理・原則を知って変化に対応しよう」―ビジネスの基本に戻ろう(1)― −変わる基本、変わらぬ基本の理解−
  (2)  (3)  (4)  (5)  (6)  (7)  (8)  (9)  (10)  (11)  (12)

第75回 「世界が変化している中で、日本人は自分のことをよく知っているのか」―勉強をしたバカとは何か勉強しよう(1)― 
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第87回 「日本人がグローバリゼーション下で勝ち抜くための発想転換」−アベノミクスを成功させるためにー
“想定外”と“ゼロベース発想”−(1)

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第99回 「日本人がグローバリゼーション下で勝ち抜くための発想転換」―グローバル市場で“勝ち抜くための戦略”−(1)

第159回 「日本人がグローバリゼーション下で勝ち抜くための発想転換」(73)―日本がグローバル市場で勝ち抜くためへの反省と提案−(1)

 
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