第32回(2009.08.07) 「プロジェクトマネジメントを楽しむ」 その32
「何か変だな」(10)〜「サービスはタダか、サービスはマネーか?」
渡辺 貢成
 kosei.watanabe@sweet.ocn.ne.jp
(有)経営組織研究所

「顧客は神様か?」−(1)08年11月号
「頭を使う人々が、(生産性に)頭を使わないのはなぜ?」−(2)08年12月号
「問題と課題の違いがわかるかな?」−(3)09年1月号
「資格を取っても役に立たない?」−(4)09年2月号
「物事」とは何か?(5)09年3月号
「タテマエとホンネ」(6)09年4月号
「カタカナ言葉と漢字」(7)09年5月号
「これからは日本の時代って本当?」(8)09年6月号
「ものづくりは技術が基盤って本当?」(9)09年7月号
−「サービスはタダか、サービスはマネーか?」(10) 09年8月号

A.最近はよく勉強しているね。感心しているんだ。今回はわたしから質問するよ。
日本では「サービスします」はタダで提供しますという意味だよね。

B.次の質問は、欧米では「サービスには金を払うのが常識だ」。
  質問は「どっちがいいか?」でしょう。
  そりゃー、誰だってタダがいいですよ。日本人なら皆そう考えていますよ。
  レストランでチップを払うなんて煩わしいですよね。日本はいい国です。

A.やあ! 先手を打たれたね。
健康保険を払っているから、使ったほうが得だといって、老人が病院をサロン代わりに使っていたよね。それでどうなった。老人医療費が高くて健康保険制度が危険に瀕しているよね。「これ、どう思う」。

B.健康保険が老人のサロン代に使われたら困りますよ。

A.では、ビジネスの世界で考えてみよう。IT産業では2・4・2・3の法則があると、「プロマネの失敗学」という本に書いてあった。IT産業では当初オーナー側の要件規模が2であったものが、工程の進捗で4に膨れ上がる。これではサービスの範囲を超えるので、受注者は必死になって2倍にまで下げる。受注者の努力が決まり、ほっとすると、また仕事が進行する中で、新しい要求が出され、結果的に3倍に膨れ上がってしまう、という法則だ。
「これって、正しいビジネスのやり方と思う?」

B.難しいですね。発注者の考え方では「ITの仕事では、やってみないとわからないことが多い。一括受注をしたということは、やって見なければわからないことを含めて、大枠として一定の金を出したから、細かいことを言わずに、仕事を終わらせるまで、受注者は誠心誠意、努力できる業者を選んだ。少しのサービスは発注者の権利だ」と、思っていますよね。
  ですが、「欧米ではこの問題をどのように考えていますか?」

A.欧米のビジネスは単純で簡単だね。わかっていることは全部書き上げて、その範囲内で契約するね。契約書に書いてないことはすべて、全て追加発注になるね。

B.日本人的な感覚で申し訳ないのですが、「プロジェクトなどは、やってみなければわからないことが多いのではないですか。やってみたら、これも必要、あれも必要となって契約金額がどんどん増えたら、怖くて業者に発注できませんね」。日本人でよかったと思いますよ。

A.では一括受注で、「全ての要求をサービスとさせられる業者だったら」君は怖くないのかね。

B.私が、受注者のプロジェクトマネジャーだったら、殺されてしまいますね。

A.その通り。米国では両者にとって都合の良い方法を採用している。新規性のあるプロジェクトは何が起こるかわからないから、米国の発注者は、これらのプロジェクトでの追加金を恐れて、一括発注をせずに、かかった費用は払いましょうという「コスト+フィー(一般管理費と一定の利益経費)」契約をしている。業者はリスクを負わされる必要もなく仕事ができるので、プロジェクトマネジャーは安心だ。

B.なるほど、うまい手があるんですね。でも、日本人とすると少しぐらいおまけがあると、得をしたという実感があり、うきうきした気分になりますよね。使った費用を全部貰えるのは有難いが、努力のやり甲斐がないですね。

A.それも一理あるね。しかし、考えてごらん。サービスが金になる国の発注者は、「自分の要求が、幾らかかるかということを認識しており、投資が回収できるものを絞り込み、上司を説得し、株主を説得できるものしか発注の対象としない。日本人の要求はサービス(タダ)だから、要求しただけ得だという感覚で、自分の要求が幾らになるかわからずに行っている。よく調べると趣味的な要求が多い。実はこの要求は受注者の赤字の原因になるだけでなく、自社の施設或いはシステムの運用コストを押し上げて、毎年多くの運用費、保守費用を払っているという認識がない。典型的な例が国や地方自治がつくる施設類だ。国は建設費の半分を負担するが、受け取った地方自治は建設費の半額と、運営費の全額を負担することになる。無駄に近い施設の運用コストで、大切な予算が使われて、必要なものへの配分がなくなっているという現実がある。本当は「サービスコスト」を認識する感覚がないと、正しい金の使い方ができないんだよ。裏話をしよう。プロマネの失敗学では、トラブルが発生すると、この著者は発注者から依頼されて、トラブルを解決している。
 「緊急事態ですから、すべての要求は後回しにして、クリティカルな要件だけを立ち上げます。これでいいですね」と念をおしてシステムの立ち上げをする。これは発注者要求でいうと1に当たる。要求1でシステムが立ち上がると、安心して、それ以上の要求をしないところが多い。「ここで初めて2:4:2:3:1の法則が成り立ちます」
  という話を聞いた。

B.ありがとうございました。勉強になりました。



プロジェクトマネジメントを楽しむ バックナンバー
第1回 プロジェクトを楽しむには多くの仕掛けがいる
第2回 PMを楽しむ仕掛けは時間が生み出す
第3回 基礎をしらないとPMは楽しくならない
第4回 仕事を減らす楽しみを覚えよう   (2)  (3)

第7回 行動の中から楽しみを生み出そう(1)
第8回 行動を頭に合わせよう(2)
第9回 行動を頭に合わせよう(3)
第10回 目的があって仕事がある(1)   (2)   (3)

第13回 日本の『現場力』を再度強化しよう(1) 
  (2)   (3)  (4)  (5)  (6)  (7)  (8)  (9)  (10)

第23回 「何か変だな」(1)〜「お客様は神様か?」
第24回 「何か変だな」(2)〜「頭を使う人々が、(生産性に)頭を使わないのはなぜ?」
第25回 「何か変だな」(3)〜「問題と課題の違いがわかるかな?」
第26回 「何か変だな」(4)〜「資格を取っても役に立たない?」
第27回 「何か変だな」(5)〜「「物事」とは何か?」
第28回 「何か変だな」(6)〜「タテマエとホンネ」とは何か?
第29回 「何か変だな」(7)〜「カタカナ言葉と漢字」
第30回 「何か変だな」(8)〜「これからは日本の時代って本当?」
第31回 「何か変だな」(9)〜「ものづくりは技術が基盤って本当?」
第32回 「何か変だな」(10)〜「サービスはタダか、サービスはマネーか?」
第33回 「何か変だな」(11)〜「少子化問題と一人っ子政策の討論」
第34回 「何か変だな」(12)〜「何か変だな!講演会」
第35回 「何か変だな」(13)〜「何か変だな!講演会2」
第36回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(1)〜PMOに消火活動チームの設置
第37回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(2)〜働く女性のために小学校の低学年児童の居残りは学校が面倒を見たら!
第38回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(3)〜アイデアは出すことより、実行+が難しい。実行が難しいから、皆考えなくなる
第39回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(4)〜How to の時代からWhat toへの転換
  (5)  (6)  (7)  (8)  (9)  (10)  (11)  (12)  (13)  (14)  (15)

第51回 「プロジェクトを実践して楽しもう!」(1)〜What toからHow to enjoy project managementへの転換
第52回 「プロジェクトを実践して楽しもう!」(2)―緊急時の対策― 〜What toからHow to enjoy project managementへの転換
  (3)  (4)  (5)  (6)  (7)

第58回 「プロジェクトを実践して楽しもう!」―情報を活用する能力(1)―〜What toからHow to enjoy project managementへの転換
  (2)  (3)  (4)  (5)

第63回 「世界が変化している。原理・原則を知って変化に対応しよう」―ビジネスの基本に戻ろう(1)― −変わる基本、変わらぬ基本の理解−
  (2)  (3)  (4)  (5)  (6)  (7)  (8)  (9)  (10)  (11)  (12)

第75回 「世界が変化している中で、日本人は自分のことをよく知っているのか」―勉強をしたバカとは何か勉強しよう(1)― 
  (2)  (3)  (4)  (5)  (6)   (7)   (8)  (9)  (10) (11)   (12)

第87回 “想定外”と“ゼロベース発想”−(1)
  (2)   (3)  (4)  (5)     (6)   (7)    (8)   (9)    (10)  (11)   (12)  

第99回 「日本人がグローバリゼーション下で勝ち抜くための発想転換」―グローバル市場で“勝ち抜くための戦略”−(1)
  (2)     (3)   (4)    (5)   (6)   (7)    (8)   (9)   (10)    (11)   (12)   (13)   (14) 
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