第52回(2011.05.10) 「プロジェクトマネジメントを楽しむ」 その52
「プロジェクトを実践して楽しもう!」(2)
−What toからHow to enjoy project managementへの転換−
渡辺 貢成
 kosei.watanabe@sweet.ocn.ne.jp
(有)経営組織研究所


−What toからHow to enjoy project managementへの転換
「プロジェクトを実践して楽しもう!」(1)−11年04月号
「プロジェクトを実践して楽しもう!」(2)―緊急時の対策― −11年05月号


B.今月は緊急時の対策の話しということでした。原発はその後の経緯を見ていますと、組織的な動きが感じられません。PMではどのように教えていますか。

A.君は国民が知りたいと思っていることをずばりというね。PMでは緊急時の対応についての組織体系や「行動基準」がある。しかし、組織をつくることはできるが、現実には、実行することが難しい。そこで、もっと重要な話しをしたい。

B.緊急チームやその対策以上に重要なことってあるのですか。

A.あるんだな! 緊急時では、普段見えない人間の本性が見えることだな。人の本性を見据えないでチームをつくっても失敗するからだ。ここで人間の種類を分類してみる。

タイプ1型:有望な立場にいる有能な出世志向(5%)
 行動:真っ先に失敗しないことを論理的に考え、当事者とならず、常に原告の地位を確保する。平時の社長有力候補者

タイプ2型:俗人的有能野心家的出世型(20%)
 行動:リーダーの欠点を常に観察し、失敗した証拠を常に用意し、失敗の責任をリーダーに押し付けることで難を逃れる手法を心得ている。

タイプ3型:責任感、実践力、行動型(5%)
 行動:実力があり、難問に直面しても問題解決のアイデアがあり、人々を動かすことができる。

タイプ4型:PM能力を持つ誠実型(20%)
 行動:難局に対し、リーダーを理解し、ともに共に行動する

タイプ5型:平凡・追従者(50%)

B.面白い分析ですね。これをどのように活用するのですか

A.この問題を頭に入れながら、緊急時の組織の話しをする
緊急時はタスクフォースというプロジェクト組織を組まないといけない。緊急時の軍隊組織と思っていい。軍隊は訓練ができており、権限と責任が明確だから素早い動きができる。この組織が緊急時に向いているのは責任者の実践力が評価され、権限と責任が明確なこと、組織には緊急時に必要な専門家を集められ、組織としての能力を強化できることである。

タスクフォースチームの業務は
 @現状の把握
 A緊急な対策(主に短期、中期を見定めた短期)
 B情報の外部への伝達とその一元化
 C上層部への報告と必要な承認行為
 である。

B.何でも今度は想定外の事故だと言うことですが、それでも対応できるのでしょうか。

A.君はいい質問をするね。原発で最大の事故は原子炉停止の際の炉の冷却水喪失である。冷却水喪失の研究は基本事項だからシミュレーションと対策は既にできている。ここには2つの問題が内在する。
 第一がまずタスクフォースチームをつくることがQA(品質保証)計画書にあるか。その責任者は事故対応ができる資格者であるか。

B.QA計画書とは何ですか。

A.原発は危険なものを取り扱うので、モノの製造に関しては資格を持った、組織、個人が計画書に従って製作すること。資格を持った人間が運転することを明記したものだよ

B.モノの品質とは腕のいい職人が注意深くつくらないと品質がよくなりませんよね。日本人はモノ造りに執念を燃やしているのに何故、計画書のような書類をつくると品質がよくなるのですか。おかしいと思いませんか。

A.私も最初はそのように考えた。原子力の製品は鉄の原料を製造する最初から、どのような原料で、どのような製造法で、どのような性能の鉄が作られたか記録されている。その鉄を使って、原子力資格を持った溶接工が、何月何日、何時に溶接したか、事故や故障が起こった後で原因の追跡ができるようになっている。この記録がないと、使用中の製作物の品質は確かですと説明できない。モノについては定期的に検査をすれば安全を確認できる。

B.わかりました。しかし、わざわざモノと念を押しましたね。モノはいいが、人はよくないとかいいたいのですか?

A.鋭いね。原子力発電所の運転員は40年間も「異常なし」が続いているわけだ。緊急時の対応ができる人在育成が難しい。そこで「運転員は定期的にシミュレータを使って仮想事故を起こして訓練しているから安心だ」というタテマエになっている。このタテマエに対し私は3つの心配がある。一つはシミュレーターに今回の事故が想定されていたか。第二が実力と権限が明記された組織になっているか、第三がそれ以外の実力不明の肩書き上位の権限で組織が動かされていないか。この心配は日本の企業文化に根ざしているからだ。

B.日本文化とは常に上司の意見が正しいということですか。簡単に言えば「長いものにはまかれろ」ですね。そういえば発電所から出される情報は自信なげで安心しろといわれてもそのまま信じられませんね。

A.今、懸命に事故と戦っておられる現場の方々にそのご努力に敬意を払い、批判は避けて、先に説明した人材の型とチーム編成を次回以降で考えてみよう。

以上


プロジェクトマネジメントを楽しむ バックナンバー
第1回 プロジェクトを楽しむには多くの仕掛けがいる
第2回 PMを楽しむ仕掛けは時間が生み出す
第3回 基礎をしらないとPMは楽しくならない
第4回 仕事を減らす楽しみを覚えよう   (2)  (3)

第7回 行動の中から楽しみを生み出そう(1)
第8回 行動を頭に合わせよう(2)
第9回 行動を頭に合わせよう(3)
第10回 目的があって仕事がある(1)   (2)   (3)

第13回 日本の『現場力』を再度強化しよう(1) 
  (2)   (3)  (4)  (5)  (6)  (7)  (8)  (9)  (10)

第23回 「何か変だな」(1)〜「お客様は神様か?」
第24回 「何か変だな」(2)〜「頭を使う人々が、(生産性に)頭を使わないのはなぜ?」
第25回 「何か変だな」(3)〜「問題と課題の違いがわかるかな?」
第26回 「何か変だな」(4)〜「資格を取っても役に立たない?」
第27回 「何か変だな」(5)〜「「物事」とは何か?」
第28回 「何か変だな」(6)〜「タテマエとホンネ」とは何か?
第29回 「何か変だな」(7)〜「カタカナ言葉と漢字」
第30回 「何か変だな」(8)〜「これからは日本の時代って本当?」
第31回 「何か変だな」(9)〜「ものづくりは技術が基盤って本当?」
第32回 「何か変だな」(10)〜「サービスはタダか、サービスはマネーか?」
第33回 「何か変だな」(11)〜「少子化問題と一人っ子政策の討論」
第34回 「何か変だな」(12)〜「何か変だな!講演会」
第35回 「何か変だな」(13)〜「何か変だな!講演会2」
第36回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(1)〜PMOに消火活動チームの設置
第37回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(2)〜働く女性のために小学校の低学年児童の居残りは学校が面倒を見たら!
第38回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(3)〜アイデアは出すことより、実行+が難しい。実行が難しいから、皆考えなくなる
第39回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(4)〜How to の時代からWhat toへの転換
  (5)  (6)  (7)  (8)  (9)  (10)  (11)  (12)  (13)  (14)  (15)

第51回 「プロジェクトを実践して楽しもう!」(1)〜What toからHow to enjoy project managementへの転換
第52回 「プロジェクトを実践して楽しもう!」(2)―緊急時の対策― 〜What toからHow to enjoy project managementへの転換
  (3)  (4)  (5)  (6)  (7)

第58回 「プロジェクトを実践して楽しもう!」―情報を活用する能力(1)―〜What toからHow to enjoy project managementへの転換
  (2)  (3)  (4)  (5)

第63回 「世界が変化している。原理・原則を知って変化に対応しよう」―ビジネスの基本に戻ろう(1)― −変わる基本、変わらぬ基本の理解−
  (2)  (3)  (4)  (5)  (6)  (7)  (8)  (9)  (10)  (11)  (12)

第75回 「世界が変化している中で、日本人は自分のことをよく知っているのか」―勉強をしたバカとは何か勉強しよう(1)― 
  (2)  (3)  (4)  (5)  (6)   (7)   (8)  (9)  (10) (11)   (12)

第87回 “想定外”と“ゼロベース発想”−(1)
  (2)   (3)  (4)  (5)     (6)   (7)    (8)   (9)    (10)  (11)   (12)  

第99回 「日本人がグローバリゼーション下で勝ち抜くための発想転換」―グローバル市場で“勝ち抜くための戦略”−(1)
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