第99回(2015.04.21) 「プロジェクトマネジメントを楽しむ」 その99
「日本人がグローバリゼーション下で勝ち抜くための発想転換」(13)
−アベノミクスを成功させるためにー
―グローバル市場で“勝ち抜くための戦略”−(1)
渡辺 貢成
 kosei.watanabe@sweet.ocn.ne.jp
(有)経営組織研究所
第99回 「日本人がグローバリゼーション下で勝ち抜くための発想転換」―グローバル市場で“勝ち抜くための戦略”−(1) 
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A.先月はZさんから“ゼロベース発想”を終わらせて、アベノミクスを成功させるには、グローバル市場での戦いに勝つという発想が必要だ。この20年間“産官学”は過去の政策を継続し、受け身の姿勢をくずしていない。これではグローバリゼーションに勝てない。今月はZさんが勝利の戦略を提供してくれるという。
Z.承知しました。しかし、アベノミクスを成功させるには、過去の政策の欠点を日本の産官学が自覚し、日本独自の習慣からの脱出ことが必要です。

A.その習慣とは何かね。

Z.日本には長年『世間様』という日本を支配する常識があり、誰も世間様に逆らわないという習慣が出来上がっていました。これを指摘したのは脳科学の養老先生です。しかしこの『世間様』は安全運転が大好きで、極端に失敗を嫌います。この『世間様』は一寸法師と違い“「宝物」をだす『打ち出の小槌』”は持っていないが、“「出る杭」を打つ『打ち出の小槌』”を使うのを得意としています。そして『世間様』の忠実な一員は心安らかな地位が保障されますので、この『世間様』は近代的な企業にもまた官僚組織にも巣を広げてきました。

A.君が言いたいことは業績の良いオーナー型経営者は戦略に優れグローバリゼーションで活躍している。しかし、エリート型サラリーマン経営者は安全運転が得意でグローバリゼーションではあまり活躍していない、ということかね。

Z.おっしゃる通りです。しかし、私が申し上げたいことは2つあります。それは日本のエリート(経営者、MBA的コンサルタント)は日本人に対し、強烈な優越感を持っていながら、米国に対し強烈な劣等感を持ち、この20年間グローバリゼーションに対する戦略としては「アメリカでは今何々している『アメリカ出羽の守』という戦略」を国内に押し付けてきました。アメリカの戦略は基本的に日本の製造業潰しと、金融資本主義の実施です。日本のエリートコンサルタントはIT戦略として米国流の経営方式を取り入れてきました。結果はこの「借り物の戦略」は日本のアナログ式経営にマッチしないため、最終段階でデジタル経営のIT化戦略は日本企業の現場はアナログにカストマイズされてしまいました。このため日本の経営は未だに稟議方式です。

A.稟議方式とは経営の経験者(役員)が集まって、全員一致で決議する方式で、経験のない新しいことへの決断には向いていないのではないか。

Z.おっしゃる通りです。経験しないことは実行しないが『安全運転』の決定事項です。
  そのため、グローバリゼーションというリスクの多い事業への参加を彼らは控えてきました。

A.それでは新しい分野に進出しないと企業はつぶれてしまうではないか。

Z.それができたのは官のお手柄です。景気回復に国債(国民の金)を発行し、日銀の国債買い上げを禁じたことで、長年国債は官が運用してきました。結果は既得権益者へ分け前を配分してきたからです。これが第一の問題です。興味のある方は2014年12月に出版された「タックス・イーター」という元大蔵官僚が書いた本をお読みください。

A.二つ目の問題もあるのかね。

Z.日本の官僚政策です。日本の官僚政策は戦後一貫して日本の製造業の発展と農業の保護を堅持してきました。脆弱な日本の産業を米国資本主義から守るためにいろいろな戦術を考えてきました。農業は1ヘクタール農業を基盤として、米国の大規模農業が日本に侵入することを防ぎました。日本のインフラ整備に対し、米国の大企業土木建築企業の侵入を防ぐことや、中小企業を保護するために種々の規制をおこない、日本企業が官の権力構造の中で生きる方式を確立してきました。

A.官僚機構の何が問題なのかね。

Z.官僚機構の2つの特徴が今のグローバリゼーションでは決定的なマイナス要因になっいます。第一が世界標準を取り入れない日本独自の標準を国家規格に取り入れたことで、製品の輸入や、インフラ建設業者の日本国上陸を防いだことです。その結果、日本標準を遵守する日本企業はグローバル社会で活躍できません。
次の問題は先に説明した規制です。すべての省庁は多くの規制を制定しているため、経産省が不都合と考え規制を解除しても、国交省や農水省、文科省の規制に抵触するという複雑構造になっています。そして官僚が何もしなければ、いつまでも既得権益のための規制は続くという絶対権限を官遼は握っていることです。

A.何もしないことが権利というのは素晴らしい発想だね。

Z.アベノミクスを成功させるには2つの構造改革が求められています。
第一が規制緩和です。第二が20年間の空白で企業の組織自体の能力が低下していることです。組織改革も簡単ではありません。そこで提案があります。
アベノミクスの成長戦略はプロジェクトマネジメントで実施することで、プロマネに実施権限を与えることです。第二が地政学型戦略を駆使することです。来月は日本の反省点を、地政学型戦略という新方式で補う提案をします。


以上

プロジェクトマネジメントを楽しむ バックナンバー
第1回 プロジェクトを楽しむには多くの仕掛けがいる
第2回 PMを楽しむ仕掛けは時間が生み出す
第3回 基礎をしらないとPMは楽しくならない
第4回 仕事を減らす楽しみを覚えよう   (2)  (3)


第7回 行動の中から楽しみを生み出そう(1)
第8回 行動を頭に合わせよう(2)
第9回 行動を頭に合わせよう(3)
第10回 目的があって仕事がある(1)   (2)   (3)

第13回 日本の『現場力』を再度強化しよう(1)
 
  (2)   (3)  (4)  (5)  (6)  (7)  (8)  (9)  (10)

第23回 「何か変だな」(1)〜「お客様は神様か?」
第24回 「何か変だな」(2)〜「頭を使う人々が、(生産性に)頭を使わないのはなぜ?」
第25回 「何か変だな」(3)〜「問題と課題の違いがわかるかな?」
第26回 「何か変だな」(4)〜「資格を取っても役に立たない?」
第27回 「何か変だな」(5)〜「「物事」とは何か?」
第28回 「何か変だな」(6)〜「タテマエとホンネ」とは何か?
第29回 「何か変だな」(7)〜「カタカナ言葉と漢字」
第30回 「何か変だな」(8)〜「これからは日本の時代って本当?」
第31回 「何か変だな」(9)〜「ものづくりは技術が基盤って本当?」
第32回 「何か変だな」(10)〜「サービスはタダか、サービスはマネーか?」
第33回 「何か変だな」(11)〜「少子化問題と一人っ子政策の討論」
第34回 「何か変だな」(12)〜「何か変だな!講演会」
第35回 「何か変だな」(13)〜「何か変だな!講演会2」
第36回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(1)〜PMOに消火活動チームの設置
第37回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(2)〜働く女性のために小学校の低学年児童の居残りは学校が面倒を見たら!
第38回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(3)〜アイデアは出すことより、実行+が難しい。実行が難しいから、皆考えなくなる
第39回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(4)〜How to の時代からWhat toへの転換
  (5)  (6)  (7)  (8)  (9)  (10)  (11)  (12)  (13)  (14)  (15)

第51回 「プロジェクトを実践して楽しもう!」(1)〜What toからHow to enjoy project managementへの転換
第52回 「プロジェクトを実践して楽しもう!」(2)―緊急時の対策― 〜What toからHow to enjoy project managementへの転換
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第58回 「プロジェクトを実践して楽しもう!」―情報を活用する能力(1)―〜What toからHow to enjoy project managementへの転換
  (2)  (3)  (4)  (5)

第63回 「世界が変化している。原理・原則を知って変化に対応しよう」―ビジネスの基本に戻ろう(1)― −変わる基本、変わらぬ基本の理解−
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第75回 「世界が変化している中で、日本人は自分のことをよく知っているのか」―勉強をしたバカとは何か勉強しよう(1)― 
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第87回 「日本人がグローバリゼーション下で勝ち抜くための発想転換」−アベノミクスを成功させるためにー
“想定外”と“ゼロベース発想”−(1)

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第99回 「日本人がグローバリゼーション下で勝ち抜くための発想転換」―グローバル市場で“勝ち抜くための戦略”−(1)

第159回 「日本人がグローバリゼーション下で勝ち抜くための発想転換」(73)―日本がグローバル市場で勝ち抜くためへの反省と提案−(1)

 
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