第25回(2009.01.09) 「プロジェクトマネジメントを楽しむ」 その25
「何か変だな」(3)
〜「問題と課題の違いがわかるかな?」
渡辺 貢成
 kosei.watanabe@sweet.ocn.ne.jp
(有)経営組織研究所

「顧客は神様か?」−(1)08年11月号
「頭を使う人々が、(生産性に)頭を使わないのはなぜ?」−(2)08年12月号
−「問題と課題の違いがわかるかな?」−(3)

A.今日はクイズから入るね。「問題とは何か定義せよ?」と質問されたら、どのように答える。
B.問題とは何か知っていますけれど、定義せよと攻め寄られると困りますね。しいて言えば『「ありのままの姿」と「あるべき姿」とのギャップ、或いはそこに何らかの障害物があるのが問題ですかね』。
A.なかなかいい答えだね。では「課題とは何か定義せよ?」といわれたらどうする。
B.難しいですね。課題とは「解決するべき問題ですかね?」
A.問題は「問題だ!問題だ!」と叫べばいいが、課題はその問題を解決するところまでが含まれているんだよ。ところが現代の日本人は「問題はスキだが、課題には興味がないらしい」。ここが問題だね。
B.分かったような、分からない話ですね。問題だって嫌いですよ。なぜ、問題が好きだというのですか。
A.マスコミを見てごらんよ。毎日、新聞やテレビで「問題だ! 問題だ!」と騒いでいる。しかし、ただ騒ぐだけで課題にしていないよね。「円高になった!たいへんだ。
  輸出が減って不景気になる。日本はこれから苦難の道が待っている」とこんな調子だよね。
B.考えてみると何か変ですね。お金を出して買った新聞から教えてもらうことが「ただ、大変だ」だけでは問題ですよね。
A.実は彼らは問題をアピールしているだけで、「日本には早急に解決すべき、これらの課題がある」という具体的な提案らしきものがない。「原材料の輸入品が安くなると、このようなメリットが生まれ、この種の産業は有望だ」などなど具体的な提案が欲しいよね。
B.問題を課題にするには、まず検討し、何をしたらこれらの問題が解決するのかという提案までが含まれるのですね。うちの部長などは「売上げが下がった。皆で頑張って、売上げを元にもどそう」と発破をかけますが、それは課題になっていないといいたいのですね。
A.君の会社の部長は、「問題の鸚鵡返し的課題提案」といって最低の上司の見本だよね。実践的な良い事例を話してあげよう。
  昔の話だが原子力発電所で工事をしていた。安全旬間になると本社からの伝言を伝えるために安全管理部長がわざわざ現場まで来て、「安全に気を配って業務を進めるように」という社長通達を伝える。現場所長は、何時もは鸚鵡返し戦法で行くのだが、今回は無災害記録更新のために、積極的な具体案を現場員に提示した。現場での災害の多くは「ヒヤリ、ハット」という軽いものが多く、具体的には現場の工事残材による踏み抜き、簡易足場からの転倒が主だ。これをなくす戦法を考えた。
@ 掃除のおばさんを10名程度雇い、常時現場の清掃を心がける。
A 足場は元請が施工することにし、各工事業者は工事前日の15時までに工事計画と工事場所の指定をする。
 B.問題を「具体的実施案としての課題」に展開させ、これを実行したわけですね。その結果はどうなりました。
 A.@の対策で工事現場が見違えるようにきれいになった。そこで工事がしやすくなり、けが人の心配が減った。Aの対策で足場が安定したこと、前日の15時までに工事計画を提出させたことで、工程がスムーズに進んだ。更に足場の安定で工事の品質が向上したという期待外の効果もあったね。
 B.それは大成功ですね。安全を鸚鵡返しに連呼しても何の成果も出ませんよね。
 A.お陰で、原子力発電所福島地区の防災協議会でこの成果を発表した結果、これが評価され、参加の各工事業者全社がこの手法を採用することに決まり、最後は全国防災協議会で採択され、日本の原子力発電所の工事現場は見違えるように綺麗になり災害が減ったと聞いている。
 B.今日はいいお話を聞きました。『問題を課題にしよう!ですね』
以上



プロジェクトマネジメントを楽しむ バックナンバー
第1回 プロジェクトを楽しむには多くの仕掛けがいる
第2回 PMを楽しむ仕掛けは時間が生み出す
第3回 基礎をしらないとPMは楽しくならない
第4回 仕事を減らす楽しみを覚えよう   (2)  (3)

第7回 行動の中から楽しみを生み出そう(1)
第8回 行動を頭に合わせよう(2)
第9回 行動を頭に合わせよう(3)
第10回 目的があって仕事がある(1)   (2)   (3)

第13回 日本の『現場力』を再度強化しよう(1) 
  (2)   (3)  (4)  (5)  (6)  (7)  (8)  (9)  (10)

第23回 「何か変だな」(1)〜「お客様は神様か?」
第24回 「何か変だな」(2)〜「頭を使う人々が、(生産性に)頭を使わないのはなぜ?」
第25回 「何か変だな」(3)〜「問題と課題の違いがわかるかな?」
第26回 「何か変だな」(4)〜「資格を取っても役に立たない?」
第27回 「何か変だな」(5)〜「「物事」とは何か?」
第28回 「何か変だな」(6)〜「タテマエとホンネ」とは何か?
第29回 「何か変だな」(7)〜「カタカナ言葉と漢字」
第30回 「何か変だな」(8)〜「これからは日本の時代って本当?」
第31回 「何か変だな」(9)〜「ものづくりは技術が基盤って本当?」
第32回 「何か変だな」(10)〜「サービスはタダか、サービスはマネーか?」
第33回 「何か変だな」(11)〜「少子化問題と一人っ子政策の討論」
第34回 「何か変だな」(12)〜「何か変だな!講演会」
第35回 「何か変だな」(13)〜「何か変だな!講演会2」
第36回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(1)〜PMOに消火活動チームの設置
第37回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(2)〜働く女性のために小学校の低学年児童の居残りは学校が面倒を見たら!
第38回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(3)〜アイデアは出すことより、実行+が難しい。実行が難しいから、皆考えなくなる
第39回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(4)〜How to の時代からWhat toへの転換
  (5)  (6)  (7)  (8)  (9)  (10)  (11)  (12)  (13)  (14)  (15)

第51回 「プロジェクトを実践して楽しもう!」(1)〜What toからHow to enjoy project managementへの転換
第52回 「プロジェクトを実践して楽しもう!」(2)―緊急時の対策― 〜What toからHow to enjoy project managementへの転換
  (3)  (4)  (5)  (6)  (7)

第58回 「プロジェクトを実践して楽しもう!」―情報を活用する能力(1)―〜What toからHow to enjoy project managementへの転換
  (2)  (3)  (4)  (5)

第63回 「世界が変化している。原理・原則を知って変化に対応しよう」―ビジネスの基本に戻ろう(1)― −変わる基本、変わらぬ基本の理解−
  (2)  (3)  (4)  (5)  (6)  (7)  (8)  (9)  (10)  (11)  (12)

第75回 「世界が変化している中で、日本人は自分のことをよく知っているのか」―勉強をしたバカとは何か勉強しよう(1)― 
  (2)  (3)  (4)  (5)  (6)   (7)   (8)  (9)  (10) (11)   (12)

第87回 “想定外”と“ゼロベース発想”−(1)
  (2)   (3)  (4)  (5)     (6)   (7)    (8)   (9)    (10)  (11)   (12)  

第99回 「日本人がグローバリゼーション下で勝ち抜くための発想転換」―グローバル市場で“勝ち抜くための戦略”−(1)

第159回 「日本人がグローバリゼーション下で勝ち抜くための発想転換」(73)―日本がグローバル市場で勝ち抜くためへの反省と提案−(1)

 
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