|
第4回(2007.04.13) 「プロジェクトマネジメントを楽しむ」 その4
仕事を減らす楽しみを覚えよう
渡辺 貢成 kosei.watanabe@sweet.ocn.ne.jp
(有)経営組織研究所 |
◆ 第4回「仕事を減らす楽しみを覚えよう」
前回は「基礎を知らないとPMは楽しくならない」というサブタイトルで、ゴルフの話をした。人がゴルフに楽しさを感じるのはゴルフそのものより「進歩しているというプロセスを楽しんでいる」ともいえる。だとすると最低の基礎ができていないと上達しないから、楽しむというのには基礎を知ること、身に付けることが大切だという話をした。今回はPMを楽しむ本論に入る前に、基礎編として「仕事を楽しむ基本を学ぼう」という話をする。
日本のサラリーマンは残業多い。残業を楽しんでやっているわけではない。仕事がどんどん増えるから仕方なしにやっている。でも、仕事が嫌いであったら残業など耐えることはできない。これは「仕事は好きだけど、残業を楽しんでいるわけではない」という状態である。この状態からの脱出が実は「仕事を減らす楽しさ」の活用である。仕事を減らす楽しさは、文字通り、楽をする愉しさである。本当の楽しさは工夫をし、それが成功したときの愉しさである。それでは仕事を減らす手法を皆で考えてみたい。
1. 頼まれた仕事は小さくともプロジェクトと考え、処理する方法を考える
仕事には必ず「使命・目的・目標」がある。まず、紙に書いてみる。
・ 使命:何をするのか
・ 目的:なぜそれをするのか
・ 目標:ゴールである。何ができたらその仕事は成功か
と自問する。この中で最も大切なのは目的である。通常は使命が最も大切だと考える。これは大切だが、使命を守っていたのでは、言われたとおりだから仕事は減らない。仕事を減らすとは代替案を考えることである。目的が達成されれば仕事の内容を変えることができるという点が重要である。仕事を減らす人は目的展開という手法を活用する。
例示しないとわかりにくい。昔、原子力発電所の仕事をしていた。発電所内の放射線濃度の高いところの仕事をロボットにさせるため、現場の調査を含めて研究し、ロボットの設計案を提案した。最後の段階で担当役員から、ロボットの設計をなぜロボットメーカーにやらせないのかと詰問された。客先の担当者から御社は至急ロボット製作の実績表を持参し、役員に説明してくれと依頼された。営業から実績表をつくらせているからチェックし、コメントをくれという依頼を受けた。
この小プロジェクトの使命・目的・目標は何か自問する。
・ 使命:ロボット製作の実績表をつくり、顧客役員に説明する
・ 目的:顧客が当社のロボット実績で、ロボット発注のための評価をするための資料
・ 目標:顧客を説得できる実績表の作成と、説得性ある資料を作成し、顧客を説得する
ここで皆さんなら何に気がつきますか。「ロボットメーカーでない当社が、ロボット製作実績でロボットメーカーに勝てるわけがない。負ける資料を作って何になる」ですよね。日本人は顧客が言うと逆らわずにハイハイとすぐ資料を整えて説明にいく。ではこの問題は解決するかというと、顧客要求資料の説明では説得力に欠け、問題がこじれて長引くだけの結果になることが理解できた。
ここで部下に命じて原点に戻らせた。
@ この仕事はロボットをつくるのが目的ではない
A 原子力発電所内の改善すべき問題点をよく知っているエンジニアリング企業が、顧客の代行として、問題解決のための提案をしている仕事である。ロボット会社は発電所内でロボットが何をするのか提案できない。ロボット会社にやらせたいのであれば、当社がつくった仕様書をベースにロボット会社に発注すればよいという趣旨の資料作成する
B 顧客代行業務とは何かわからせる資料をつくる
この3点を満たす資料の作成でこの小プロジェクトは成功すると踏んでBの資料作成を行った。@内容は発電所でロボットに実施させる作業のすべてを示す。A作業の手順を表の上段に書く、B各作業を行う手段を次の行に示す、C手段を2,3の異なった方法(要素技術)を併記する、D手段ごとに方法を検討し、方法の一つを選択する。Dすべての手段に対する選ばれた方法をとりあげるとロボットの仕様は固まる。
実際には、この一覧図をA1用紙に書き、顧客に作業の妥当性、要素技術の選択を2時間かけて検討してもらった。その結果顧客の選択と当社の提案が一致しており、顧客はエンジニアリング会社の役割が自分たちの代行業務であることを十分理解し、ロボット会社云々は言わず契約が決まった。
本件は原点に戻り仕事を増やさなかった事例であるが、多くの仕事は習慣的で行っているものの、本質に戻ってよく考えると、やらなくてもよい仕事が多いこと。目的が一致していればやり方を変えることで仕事を大いに減らすことができる。この考えを常に心がけると仕事は減るし、仕事をしたという充実感が生まれ、仕事が愉しいものになること請け合いである。
|
プロジェクトマネジメントを楽しむ バックナンバー |
第1回 プロジェクトを楽しむには多くの仕掛けがいる
第2回 PMを楽しむ仕掛けは時間が生み出す
第3回 基礎をしらないとPMは楽しくならない
第4回 仕事を減らす楽しみを覚えよう (2) (3)
第7回 行動の中から楽しみを生み出そう(1)
第8回 行動を頭に合わせよう(2)
第9回 行動を頭に合わせよう(3)
第10回 目的があって仕事がある(1) (2) (3)
第13回 日本の『現場力』を再度強化しよう(1)
(2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9) (10)
第23回 「何か変だな」(1)〜「お客様は神様か?」
第24回 「何か変だな」(2)〜「頭を使う人々が、(生産性に)頭を使わないのはなぜ?」
第25回 「何か変だな」(3)〜「問題と課題の違いがわかるかな?」
第26回 「何か変だな」(4)〜「資格を取っても役に立たない?」
第27回 「何か変だな」(5)〜「「物事」とは何か?」
第28回 「何か変だな」(6)〜「タテマエとホンネ」とは何か?
第29回 「何か変だな」(7)〜「カタカナ言葉と漢字」
第30回 「何か変だな」(8)〜「これからは日本の時代って本当?」
第31回 「何か変だな」(9)〜「ものづくりは技術が基盤って本当?」
第32回 「何か変だな」(10)〜「サービスはタダか、サービスはマネーか?」
第33回 「何か変だな」(11)〜「少子化問題と一人っ子政策の討論」
第34回 「何か変だな」(12)〜「何か変だな!講演会」
第35回 「何か変だな」(13)〜「何か変だな!講演会2」
第36回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(1)〜PMOに消火活動チームの設置
第37回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(2)〜働く女性のために小学校の低学年児童の居残りは学校が面倒を見たら!
第38回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(3)〜アイデアは出すことより、実行+が難しい。実行が難しいから、皆考えなくなる
第39回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(4)〜How to の時代からWhat toへの転換
(5) (6) (7) (8) (9) (10) (11) (12) (13) (14) (15)
第51回 「プロジェクトを実践して楽しもう!」(1)〜What toからHow to enjoy project managementへの転換
第52回 「プロジェクトを実践して楽しもう!」(2)―緊急時の対策― 〜What toからHow to enjoy project managementへの転換
(3) (4) (5) (6) (7)
第58回 「プロジェクトを実践して楽しもう!」―情報を活用する能力(1)―〜What toからHow to enjoy project managementへの転換
(2) (3) (4) (5)
第63回 「世界が変化している。原理・原則を知って変化に対応しよう」―ビジネスの基本に戻ろう(1)― −変わる基本、変わらぬ基本の理解−
(2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9) (10) (11) (12)
第75回 「世界が変化している中で、日本人は自分のことをよく知っているのか」―勉強をしたバカとは何か勉強しよう(1)―
(2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9) (10) (11) (12)
第87回 “想定外”と“ゼロベース発想”−(1)
(2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9) (10) (11) (12)
第99回 「日本人がグローバリゼーション下で勝ち抜くための発想転換」―グローバル市場で“勝ち抜くための戦略”−(1)
(2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9) (10) (11) (12) (13) (14) (15) (16) (17) (18) (19) (20) (21) (22) (23) (24) (25) (26)
(27) (28) (29) (30) (31) (32) (33) (34) (35) (36) (37) (38) (39) (40) (41)
一覧に戻る
|
スポンサードリンク |
|
|
読者からのコメント |
■本稿に対するご意見,ご感想をお聞かせください.■
■は必須入力です
|
|
このコンテンツは「プロジェクトマネージャー養成マガジン」としてメルマガで配信されています.メルマガの登録はこちらからできます. |