第16回(2008.04.11) 「プロジェクトマネジメントを楽しむ」 その16
日本の『現場力』を再度強化しよう(4)
渡辺 貢成
 kosei.watanabe@sweet.ocn.ne.jp
(有)経営組織研究所

第16回「日本の『現場力』を再度強化しよう」(4)

1.3月号は
今月は基礎を再度学ぼうと下記の図を示した。

    

日本のIT業界は「構想計画」があることを確認しないでシステムを構築し始めている。基礎を学ぼうと説明しているのは「世界中構想計画なしにプロジェクトをしているところは日本だけということ」に気がついてもらいたいからだ。構想計画とはこの図で真中の概念構築と仕様の確定を意味する。ITは見えないものを取り扱うから、やってみなければ仕様も決まらないとよく言われるが、それは違う。そこで今月号は構想計画の話しをする。

2.構想計画
最近の企業はグローバル競争の中で厳しい戦いを強いられている。そこで競争に勝つためには企業組織の改革や、組織能力の向上を図らなければならない。構想計画は競争に勝つための戦略を考え、投資するプロジェクトの計画を構想することを意味する。実はIT化のための構想計画ではない。企業能力向上のための戦略構想なのだ。正直言って日本の経営者の多くは、業務をIT化するプロジェクトだからといってIT専門者に戦略までゆだねてしまっているが、本当は何をするべきか、よくわかっていない節がある。IT専門家は当然ながら経営者ではないから、何をするべきか、正しい要求が何か良くわからない。そこで米国で成功したツールの導入を考えたりする。また、ベンダーはソリューションと称して米国産のパッケージ等を提案する。
世界中が同じパッケージを使ったら戦略にならないではないかなどと考えない。米国産のパッケージが成功した確率は50%にも満たないとことが本に書かれている。
第一に1980年代に米国は経営的に日本に敗れて、日本の経営の良いとどり(米国的に言うとベストプラクティスという)して、息を吹き返した。しかし製造業は生産部門をアウトソース(オフショアという)して中国に任せてしまった。では何で儲けているかというと金融である。実体経済である貿易上の金額の100倍もの架空の金を創り出し、これを運用して儲けてきた。早い話が危ない金を回してきたが、ここに来て危ない金が危なくなってきた。この話しは構想計画から離れるが、日本人は未だに「米国は全て正しい」という呪文から逃れられないでいる。

日本政府も手をこまねいていたわけではない。構想計画をする人材としてITCという資格者を創出した。しかし、経営とは一般論でないから、経営者か、経営企画担当ではないと、他人の会社の戦略など立てることなどできない。戦略とは本に書いてあることを実行するのではなく、マーケットがどのように変化するのか、自社の強みは何か、弱みは何かを理解して、戦略を練らなければならない。もし受注者が構想計画を実施するならば発注者と共同作業をしなければならない。しかし構想計画をつくるにはMBAクラスを雇い入れて、その対応をしなければならない。この構想計画はソフト大手4社の仕事かもしれない。
構想計画についてはP2Mを勉強するといい。NASAのプログラムではプロダクトをつくるマネジメントはシステムエンジニアリングハンドブックに委ねており、PMBOK系のPMはプロジェクトマネジメントハンドブックに委ねている。構想計画の話しは長くなるのでこの程度の知識の説明で終了する。現場力から離れてしまうからである。若し興味があるならば現場力の話しがまとまったところで取り上げてもよい。とりあえずP2M標準ガイドブックをお読みいただきたい。
そこで次回から現場力強化に向かう。何故かというと日本は今までも、これからも強みは現場か生まれている。現場力が再度復活すると日本は再度復活することは間違いない。

以上



プロジェクトマネジメントを楽しむ バックナンバー
第1回 プロジェクトを楽しむには多くの仕掛けがいる
第2回 PMを楽しむ仕掛けは時間が生み出す
第3回 基礎をしらないとPMは楽しくならない
第4回 仕事を減らす楽しみを覚えよう   (2)  (3)

第7回 行動の中から楽しみを生み出そう(1)
第8回 行動を頭に合わせよう(2)
第9回 行動を頭に合わせよう(3)
第10回 目的があって仕事がある(1)   (2)   (3)

第13回 日本の『現場力』を再度強化しよう(1) 
  (2)   (3)  (4)  (5)  (6)  (7)  (8)  (9)  (10)

第23回 「何か変だな」(1)〜「お客様は神様か?」
第24回 「何か変だな」(2)〜「頭を使う人々が、(生産性に)頭を使わないのはなぜ?」
第25回 「何か変だな」(3)〜「問題と課題の違いがわかるかな?」
第26回 「何か変だな」(4)〜「資格を取っても役に立たない?」
第27回 「何か変だな」(5)〜「「物事」とは何か?」
第28回 「何か変だな」(6)〜「タテマエとホンネ」とは何か?
第29回 「何か変だな」(7)〜「カタカナ言葉と漢字」
第30回 「何か変だな」(8)〜「これからは日本の時代って本当?」
第31回 「何か変だな」(9)〜「ものづくりは技術が基盤って本当?」
第32回 「何か変だな」(10)〜「サービスはタダか、サービスはマネーか?」
第33回 「何か変だな」(11)〜「少子化問題と一人っ子政策の討論」
第34回 「何か変だな」(12)〜「何か変だな!講演会」
第35回 「何か変だな」(13)〜「何か変だな!講演会2」
第36回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(1)〜PMOに消火活動チームの設置
第37回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(2)〜働く女性のために小学校の低学年児童の居残りは学校が面倒を見たら!
第38回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(3)〜アイデアは出すことより、実行+が難しい。実行が難しいから、皆考えなくなる
第39回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(4)〜How to の時代からWhat toへの転換
  (5)  (6)  (7)  (8)  (9)  (10)  (11)  (12)  (13)  (14)  (15)

第51回 「プロジェクトを実践して楽しもう!」(1)〜What toからHow to enjoy project managementへの転換
第52回 「プロジェクトを実践して楽しもう!」(2)―緊急時の対策― 〜What toからHow to enjoy project managementへの転換
  (3)  (4)  (5)  (6)  (7)

第58回 「プロジェクトを実践して楽しもう!」―情報を活用する能力(1)―〜What toからHow to enjoy project managementへの転換
  (2)  (3)  (4)  (5)

第63回 「世界が変化している。原理・原則を知って変化に対応しよう」―ビジネスの基本に戻ろう(1)― −変わる基本、変わらぬ基本の理解−
  (2)  (3)  (4)  (5)  (6)  (7)  (8)  (9)  (10)  (11)  (12)

第75回 「世界が変化している中で、日本人は自分のことをよく知っているのか」―勉強をしたバカとは何か勉強しよう(1)― 
  (2)  (3)  (4)  (5)  (6)   (7)   (8)  (9)  (10) (11)   (12)

第87回 “想定外”と“ゼロベース発想”−(1)
  (2)   (3)  (4)  (5)     (6)   (7)    (8)   (9)    (10)  (11)   (12)  

第99回 「日本人がグローバリゼーション下で勝ち抜くための発想転換」―グローバル市場で“勝ち抜くための戦略”−(1)

第159回 「日本人がグローバリゼーション下で勝ち抜くための発想転換」(73)―日本がグローバル市場で勝ち抜くためへの反省と提案−(1)

 
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