1.先月7月号の解説
7月号では、デミング博士がいなければ日本の品質がこれほど向上しなかったことは確かである。しかし、米国の現場力ではデミング博士は多分成功しなかったと思う。日本の『現場力』には世界でまねのできない何かがある。そこでGEのウェルチ社長は、この日本の現場力を徹底的に研究し採用した。ところが日本ではバブル崩壊後、米国かぶれのコンサルタントの言を用いて、「成果主義」を取り入れ、残念ながら日本の現場力を破壊する方向へシフトしている話しをした。
2.今月号:強い『現場力』とは何か?
強い現場力とは何か、という前に全ての企業の現場力それ自体が同じものではない。現場力を企業別に分類整理してみる。
分類T 対象顧客の業種、地域性
1) グローバル対応企業の現場力
2) 国内顧客対応の現場力
3) 公共投資(国の税金を当てにした)対応業務の現場力
4) 国の補助を当てにした産業の現場力
5) 税金を使う団体の現場力
分類U 業界別
1) 製造業(量産企業)
2) 製造業(B2B)
3) プラント業界
4) 土建業界
5) IT業界
6) その他
分類V 規模別
1)10人の現場力
2)100人の現場力
3)1,000人の現場力
この分類に従って話しを進めると何年かかってもこのメルマガは終わらない。そこで分類Tの対象顧客の業種、地域性を取り上げる。冗談で言うならば5.税金を
使う団体の現場力は世界最強である。税金を使う天下り団体をつくるから国が滅びるまで継続でき、何をしなくても運営できる仕組みをつくり上げている。これが最強であるが、民間にとってモデルケースとならないので、これは取り上げない。そこでグローバルな顧客を対称にしているエンジニアリング企業と国内の顧客を対象とするIT産業の現場力につき、その相違をここで比較してみることにした。
3.プラントエンジニアリング企業の現場力とIT産業の現場力比較
◎ エンジニアリング産業が実施する原子力、石油、宇宙開発等のプロジェクトは@大規模A高額案件B危険性C国際性という特徴があり、正しく仕事をすることが要求されている。そのため契約に対する概念、構想計画を固め、設計を前倒しに進める手法が採用され、業務上のトラブルが比較的少なくなる努力を発注者、受注者ともども実行し、Win/Winの関係をつくり上げている。
◎IT産業は近年急速に業務が広がっており、発注者、受注者ともども社会の要請に追従できる体制になっていない(仕事が多すぎて対応できない)。この業界の最大の課題は構想計画を確実に実施し、発注者社内で効率のためのプロジェクトか、業務改革のためのプロジェクトかを明確に定義し、社内でコンセンサスをとって業務を進めるべきところを、十分に考慮されているとは限らない。二番目が契約に対する概念である。契約の概念が明確でないと、正しい業務の進め方ができない。他方プラント系は海外プロジェクトを実施して、多くの経験をつみ合理的な業務遂行のノウハウを取得している。次回はエンジニアリング産業の特徴を更に掘り下げてみる。
以上
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