第99回 「日本人がグローバリゼーション下で勝ち抜くための発想転換」―グローバル市場で“勝ち抜くための戦略”−(1)
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A.先月はZさんから21世紀【電子・コミュニティ バーチャル→リアル空間】型地政学的戦略として、成功させるに必要な改善点の話をきいた。
「電子・コミュニティ空間」は多様化されることで付加価値が高くなる空間だと思われる。電子コミュニテ空間の好事例がこれから集められ、更に改善させると期待している。今月はアベノミクスの成長戦略であるテーマをYさんにお願いしている。
Y.今月は成長路線の重要なテーマとしての観光ビジネスに焦点をあてます。幸い2015.6.にT.デービット・アトキンソン著『新観光立国論―イギリス人アナリストが提言する21世紀の「所得倍増計画」』、U.寺島実郎著『「新・観光立国論―モノづくり国家を超えてー』が出版されました。両書とも優れた内容なので、それぞれ紹介します。
T.デービット・アトキンソン著「新・観光立国論」の内容
1.著者から見た日本の観光政策の問題点の指摘
@ GDPは基本的に人口に比例する。特殊な政策をとらないと今後GDPは減少する。
A 移民を嫌う日本は「短期移民(観光立国)」政策を盛り上げGDP増加に貢献せよ。
B 「観光立国」としての4つの条件:「気候」、「自然」、「文化」、「食事」に恵まれ
・気候:極端に寒くなく、極端に暑くない。
・自然:先進国の人々は都市化が進んでいるので、雄大な自然、動植物環境
・文化:芸術、遺跡、ファッション、エンターテイメント類
・食事:その国の名前がついている国、フランス、イタリア、中国、スペイン、日本
日本はこの4条件を満たす稀有の国だが、なぜか観光後進国である。その理由は官の政策がアンチ観光促進だからである。
・ハブ空港がなく、地方空港との連携が悪く、地方空港の客を韓国に取られている。
・入国手続きでは、自国民に比して外人用窓口が少なく、長蛇の列に配慮しない。
・空港から首都圏へのアクセスに新幹線・リニアを使わない。時間短縮という顧客サービスの発想がなく、最終便到着以前に首都圏へのアクセス交通が終了している。(外国人が困っても無関心。また、自国の新幹線輸出のサポートもしない。
C 国としての観光マーケッティング、観光ロジスティックスの不備
・アベノミクスが求めている観光庁の戦略は現在の1300万人を2020年に2,000万人、2030年に3.000万人としているが、観光客の自然増ねらいである。観光庁の政策は2つの意味でマーケッティング音痴である。優れた計画は有用なデータから生まれる。世界のGDPに占める観光産業の割合は9%である。日本は観光立地として恵まれていながら2%である。政策の第一は日本国の観光産業のポテンシャルを産出すること。2番目が現在の観光客と観光収入を産出すると3,000万人まで到達しても観光収入は9%にならない。今の観光客の一人あたりの消費単価が小さいからである。そこで次の手は『上客を狙う』、『上客用のメニューをつくる』という発想となる。日本の官僚は高偏差値エリートというが責任を持って収益増を考える努力をしない。能力を出し惜しむ官僚のもとでアベノミクスは成功しない。
・日本人は『外人が求めている魅力ある観光資源とは何かを理解していない』。日本人がしめす『おもてなしの精神、新幹線の正確な時間、治安のよさ』を体験するために外人は日本に来ない。発想の転換がもとめられる。
・観光ロジステティックスとしての空港内、列車内、町、観光案内の優れた表示が必要であるが、遅れている。観光立国を望むなら、リピーター客を増やすという発想は不可欠である。ここでも能力を出し惜しむ官に任せると成功しない。
2.著者の日本観光立国としての提案:
2.1 日本を観光大国として飛躍させるための戦略:
@日本の観光立国としてのビジョンと将来(ポテンシャル)計画の実施:
・トップダウンで考える目標:2030年までに8,200万人を目指す。
『賢者は歴史に学び、愚者は経験に学ぶ』という欧州の格言がある。日本の現状を肯定して将来を見据えるのではなく。世界の観光業のGDPに占める割合は9%を実行可能な目標値とみなし、当てはめると、45兆円になる。日本のGDPは500兆円の2%で10兆円であるから35兆円の増収になる。これは日本が本来目標とするべき観光客数は5,600万人になる。アベノミクスが求める2020年2,000万人を5,600万人に修正するべきである。そして2030年に8,200万人を考えることが理にかなっている。
・トップダウンビジョンが決まれば、それを達成するための国内整備や海外宣伝等具体的
な案を出すことができる。規制緩和も目標がきまれば官は反対しない。達成のための具
体的な内容は本書に具体的に説明してあるので検討して欲しい。
A. 面白い発想だ。この発想とアドバンストP2M戦略が示すバーチャル(ポテンシャル)計画で可能性を認識し、実践でリアウな数値を工夫しながら目標を達成するという手法になっているね。
Y.その通りです。ご理解ありがとうございます。次回寺島案で更に詳しく説明します。
以上
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