第6回「仕事を減らす楽しみを覚えよう」(3)
前回は「他人の時間を使って自分の仕事を減らす手法を覚えよう」である。これは最も簡単でありながら、一般人があまりやりたがらない方法で、通称「権限委譲の手法」という。人々は一度手に入れた権限は離したがらないのが人情である。権限とは自己の影響力の大きさで、自己満足を満たすからである。しかし、自己満足していると時間の節約にならない。権限委譲して楽をしようというという提案であった。
今回は「スタンダードを使うと手間が1/10になるよ」である。日本人は基本的に標準化やマニュアルが嫌いである。情報関連のマニュアルを読むと腹が立ってくる。マニュアルの内容がわからないからヘルプに尋ねる。わからない最大の理由はカタカナ語の意味がわからないことである。そのためヘルプに依存すると、更にわからない単語で説明してくれる。これでは読んでもわからない。かくかくしかじか、私もマニュアル嫌いである。
PMのスタンダードというと世界中の人々はPMBOKという。PMBOKの1996年版と2004年発行の第3版を比較すると後者は格段に充実している。PMBOKそのものがマニュアル化している。PMBOKはIDEFの思想で構成され、業務がプロセス化されている。例えば、インプット情報は契約、プロジェクト作業範囲記述書、組織のプロセス資産等、このインプット情報が揃うと、これこれの知識やツールを使って業務プロセスを実施すればアウトプットとしてプロジェクト憲章が得られると丁寧に指示している。IT関連者はPMBOK信奉者だ。P2Mの話を持っていっても耳すら貸してくれない。そのことはよしとしよう。信奉者だからどの程度PMBOKで仕事をしているか確認すると皆使っていますという。
「このプロジェクトは契約書がありますか」
「まだです」
「スコープが決まっていますか」
「まだ、あいまいです」
「WBSを書いていますか」
「いえ、つくっていません」
「WBSがなくてどのように工程管理しますか」
「おおまかにやっています」
3版をよく見るとわかるが、インプット資料、アウトプット資料が標準化されて、整えておかないとPMBOKを有効に使うことができない。インプット情報の標準テンプレートを数種作っておくと簡単な変更で再利用でき、テンプレートそのものが業務上のチェックリストともいえる。テンプレートがあると、業務の大きなところから仮決めをして仕事を進めることができる。変更覚悟であるが、仮決めをして仕事を進めると、意外と変更に手間がかからない。仕事の80%は段取りで、仮決めでも段取りの仕事は進められる。1日かかった仕事でも変更は1時間でできる。それはテンプレートがあっての変更だからである。仮決めでもテンプレートで行うと結構顧客に対し、プレッシャーを掛けることができる。顧客が真剣に考えはじめるからである。仮決めでも証拠が残るから追加の対象になるし、駄目でも、変更履歴が残るから、後々便利である。
Web進化論という面白い本に書いてあった。日本人は物知りだが成果物が少ない、米国人は日本人より物知りではないが、成果物をつくる。使わないものを勉強して、俺は知っているよといっても、最近は物知りを尊敬しなくなった。
今月の結論:
「資格とかけて何と解く」
「足の裏の米粒と解く」
「その心は」
「取っても、食べられない」
これは日本の現状を表しているかもしれない。しかし、資格を取ったら、資格を活かす工夫をして、業務を合理的に進めるのがプロフェッショナルではないだろうか。
以上
|