第96回(2015.01.16) 「プロジェクトマネジメントを楽しむ」 その96
「日本人がグローバリゼーション下で勝ち抜くための発想転換」
−アベノミクスを成功させるためにー
―“想定外”と“ゼロベース発想”−(10)
渡辺 貢成
 kosei.watanabe@sweet.ocn.ne.jp
(有)経営組織研究所


“想定外”と“ゼロベース発想”−(1)
“想定外”と“ゼロベース発想”−(2)
“想定外”と“ゼロベース発想”−(3)
“想定外”と“ゼロベース発想”−(4)
“想定外”と“ゼロベース発想”−(5)
―“想定外”と“ゼロベース発想”−(6)
“想定外”と“ゼロベース発想”−(7)
“想定外”と“ゼロベース発想”−(8)
“想定外”と“ゼロベース発想”−(9)
―“想定外”と“ゼロベース発想”−(10)


A.先月はFさんから“ゼロベース発想”4.1から4.3までの話があった。“ゼロベース発想”4は基本的にブランド化というビジネスモデルで、ブランド化にはビジネスの特徴を定量的な数値で表現する。見た目で人の心を捉える。使い心地で使用者を虜にするなどの手法があるが、これらを世界中に広めるために、Webで世界の人々を魅了させる感性も求められるという話だった。Fさんからは“ゼロベース発想”5.Xという話があったが今月は誰か外に話をする人がいるかな。

D.承知しました。私は“ゼロベース発想”に入る前に、なぜ、「日本が20年間もアイデアを出さずに過ごしたことへの反省」と「世界がどの方向に向かって動いているかを知る必要がある」と思っています。

A.対処療法ではなく本質に迫ろうというわけだな。面白いな。是非、話を進めてほしい。

D.キーワードは「グローバリゼーション」の本質です。「20年間の空白」と「将来の方向」はグローバリゼーションを正しく理解することで「反省」と「将来展望」を行うことができます。

@グローバリゼーションの意味を正しく理解しよう。
今世界経済を動かしているのは実質的に国際金融資本(米国・英国)です。冷戦が解消しましたが、先進国の経済成長が低下し、金融資本の収益が低下しました。世界経済の活性化を阻害しているのは、各国の規制です。金融資本は成長の止まった先進国への投資をやめ、成長率の高い新興国への投資を考えました。ところが実経済で回っている金を新興国へ投資することは簡単ではありません。そこでウォール街は投資案件に100倍のレバレッジ(1$投資に100$貸す)でデリバティブという金融証券を開発し、発売しました。米国は製造業を「企画・設計」までにとどめ、それ以降の製造を低賃金で且つ大量消費地である中国に委託し、巨大量産設備の建設を中国で行いました。彼らはそのための資金、技術と人材の提供を行いました。この流れに乗ったのが中国をはじめとする新興国です。そして中国の経済は爆発的に発展しました。逆に先進国の製造業の輸出が停滞しました。

Aグローバリゼーション環境下で勝利をあげる方法があるか:
Fさんが言われたのはグローバリゼーション下でどのようなビジネスがあるか考えようというのが“ゼロベース発想”5ではないかと思います。その1例を挙げると韓国です。韓国は中進国ですが、日本からの技術を導入し、松下幸之助の2番手商法(顧客関係性を重視し、技術製造は2番手で生産性重視)を実践しました。韓国企業は世界中の新興国へ社員を派遣し、現地消費者の潜在ニーズを確実につかみ、日本製品のリバースエンジニアリングで、世界中から安い部品を調達し、現地のニーズに合った商品を中国で生産し、比較的安値で家電製品を出荷することで、“ゼロベース発想”5を成功に導きました。
念のため記しますが、日本の家電業界は最新の高品質家電製品を世界同一発売しましたが、新興国消費者には高級品であったため、ソッポを向かれてしまいました。”ゼロベース発想”5はこれからの大きな課題です。

B空白の20年間日本は何をしてきたか?
:答えはタコの足(国債)を食べてきた
これまでのタコの足の食べ方:“既存的発想法”6の研究をする(反省法として正しく捉える)

Cアベノミクス的タコの足食い方:“ゼロベース発想”7とする。
 アベノミクスを本格的成功させるには、7.1するべきことへの発想と、7.2してはいけないことの発想を検討することになります。(弱者救済、重要アイテム以外は切り捨てる等)

A.グローバリゼーション環境でコマツなどが活躍しているが、それはなぜかね。

D.コマツは“ゼロベース発想”5の一例です。コマツは製品の販売だけを主とせずに、運用時の使いやすさ,タイムリーなメンテナンスにサービスで顧客満足度を高めています。小松では世界中に販売した製品の運用状況が本社の大画面に映され、運用や保守に必要な情報をタイムリーに提供することによって顧客から熱い信頼感を勝ち取っています。

A.グローバリゼーション下で日本が実施するべき戦略はあるのかね

D.それは私たちが考える問題ですが、日本国内にいいたままで卓上議論をしてもアイデアはでません。現地に行かないと私たちの経験・感性が活かされないからです。しかし、それ以上に大切なことがあります。Aで示されたタコの足は誰が食べているのかという問題です。この研究を来月お話しします。


以上

プロジェクトマネジメントを楽しむ バックナンバー
第1回 プロジェクトを楽しむには多くの仕掛けがいる
第2回 PMを楽しむ仕掛けは時間が生み出す
第3回 基礎をしらないとPMは楽しくならない
第4回 仕事を減らす楽しみを覚えよう   (2)  (3)


第7回 行動の中から楽しみを生み出そう(1)
第8回 行動を頭に合わせよう(2)
第9回 行動を頭に合わせよう(3)
第10回 目的があって仕事がある(1)   (2)   (3)

第13回 日本の『現場力』を再度強化しよう(1)
 
  (2)   (3)  (4)  (5)  (6)  (7)  (8)  (9)  (10)

第23回 「何か変だな」(1)〜「お客様は神様か?」
第24回 「何か変だな」(2)〜「頭を使う人々が、(生産性に)頭を使わないのはなぜ?」
第25回 「何か変だな」(3)〜「問題と課題の違いがわかるかな?」
第26回 「何か変だな」(4)〜「資格を取っても役に立たない?」
第27回 「何か変だな」(5)〜「「物事」とは何か?」
第28回 「何か変だな」(6)〜「タテマエとホンネ」とは何か?
第29回 「何か変だな」(7)〜「カタカナ言葉と漢字」
第30回 「何か変だな」(8)〜「これからは日本の時代って本当?」
第31回 「何か変だな」(9)〜「ものづくりは技術が基盤って本当?」
第32回 「何か変だな」(10)〜「サービスはタダか、サービスはマネーか?」
第33回 「何か変だな」(11)〜「少子化問題と一人っ子政策の討論」
第34回 「何か変だな」(12)〜「何か変だな!講演会」
第35回 「何か変だな」(13)〜「何か変だな!講演会2」
第36回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(1)〜PMOに消火活動チームの設置
第37回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(2)〜働く女性のために小学校の低学年児童の居残りは学校が面倒を見たら!
第38回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(3)〜アイデアは出すことより、実行+が難しい。実行が難しいから、皆考えなくなる
第39回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(4)〜How to の時代からWhat toへの転換
  (5)  (6)  (7)  (8)  (9)  (10)  (11)  (12)  (13)  (14)  (15)

第51回 「プロジェクトを実践して楽しもう!」(1)〜What toからHow to enjoy project managementへの転換
第52回 「プロジェクトを実践して楽しもう!」(2)―緊急時の対策― 〜What toからHow to enjoy project managementへの転換
  (3)  (4)  (5)  (6)  (7)

第58回 「プロジェクトを実践して楽しもう!」―情報を活用する能力(1)―〜What toからHow to enjoy project managementへの転換
  (2)  (3)  (4)  (5)

第63回 「世界が変化している。原理・原則を知って変化に対応しよう」―ビジネスの基本に戻ろう(1)― −変わる基本、変わらぬ基本の理解−
  (2)  (3)  (4)  (5)  (6)  (7)  (8)  (9)  (10)  (11)  (12)

第75回 「世界が変化している中で、日本人は自分のことをよく知っているのか」―勉強をしたバカとは何か勉強しよう(1)― 
  (2)  (3)  (4)  (5)  (6)  (7)  (8)   (9)  (10)  (11)  (12) 

第87回 「日本人がグローバリゼーション下で勝ち抜くための発想転換」−アベノミクスを成功させるためにー
“想定外”と“ゼロベース発想”−(1)

  (2)  (3)   (4)   (5)   (6)  (7)   (8)   (9)   (10)   (11)   (12)  

第99回 「日本人がグローバリゼーション下で勝ち抜くための発想転換」―グローバル市場で“勝ち抜くための戦略”−(1)

第159回 「日本人がグローバリゼーション下で勝ち抜くための発想転換」(73)―日本がグローバル市場で勝ち抜くためへの反省と提案−(1)

 
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