第51回(2011.04.08) 「プロジェクトマネジメントを楽しむ」 その51
「プロジェクトを実践して楽しもう!」(1)
−What toからHow to enjoy project managementへの転換−
渡辺 貢成
 kosei.watanabe@sweet.ocn.ne.jp
(有)経営組織研究所


−What toからHow to enjoy project managementへの転換−11年04月号


B.東日本大震災で日本は大きな打撃を受けました。これからの日本は何をしたらいいのでしょうか。

A.亡くなられた方々へのご哀悼と、被災者の方々へは、私たちが得意な分野で貢献することをお約束しましょう。

B.先生、得意な分野とはPM(プロジェクトマネジメント)ですか。PMで何ができるのですか

A.君が考えているPMとは何かね

B.何か実行したいときに、企画し、構想計画をつくり、関係者の合意を得て、資金を集め、計画を実行することですかね。

A.勉強した成果が出ているね。ではこのプロジェクトを成功させるKSF(主要な成功要因)は、君が指摘した中では何が重要かな。

B.先生がよく言われている構想計画ですかね。それとスピードだと思います。

A.模範答案だな。先月までWhat to の勉強をしたからね。それも正しいが、計画より実行することが、もっと難しい。計画通りにいかないことが多いからな。

B.先生、構想計画をしても、計画通りにいかないなら、多くの人が言っているように、PMは先が見えないから「まず仕事を進めてから考えよう」でいいではありませんか。

A.本当にそう思うか。計画をしなければ必ず失敗するよ。プロジェクトのように多くの人が参加する仕事は、計画書がないと参加者が同じ方向に歩き出せないよ。お客さんがとんでもないことを言い出したらどうするね。

B.計画書に基づいて話し合いを行います。

A,計画書があるから話し合いができ、合意することができる。しかし、ここでは交渉という作業がある。交渉のうまい下手がある。実行するには、環境の変化を読みながら進めなくてはならない。これは未経験者には難しい。

B.大型プロジェクトのマネジャーは経験15年が必要だということですね

A.その通りだ。プロマネの難しさは、更に責任が重いと言うことだ。しかし責任の重さは成功の暁には喜びも大きいことだな。成功と同時にずしりとした実力の増加を意識できる喜びだろうな。4月以降はプロマネの実践力向上について伝授したいと思っている

B.勉強になります。プロマネが直面する最大の困難は何ですか。

A.緊急なトラブル発生だな
緊急なときほど、目先の問題や関係者の心情にとらわれて、大局を見失いがちになる。しかし、大切なのは多くの人々の協力を得ながら効率よく成果を上げることだ。

B.東日本震災対策でローソンは社長自ら陣頭指揮で全国的な組織支援体制をつくり、関係者からいろいろとアイデアを募り、物品の確保、それを運ぶ車と燃料の確保し、被災地の店への送品と、破損店舗の仮設店舗での営業開始等を実施し始めたテレビを見ました。先生が言われるようにリーダーシップのある組織は動きが速く、被災地にとって真にコンビニエンスな店になりました。

A.コンビニ業界は日々の環境の変化が売り上げに大きな影響を与える。そこで各店舗からの情報と本社での作戦が一体となった機動力のある組織になっており、これが顧客への便利さを提供する原動力になっている。PMで言えば各店舗がタスクホースチーム化しているから緊急時に役に立つよね。

B.よくわかりました。庶民に利便さを売る組織と対照的なのが電力会社ですよね。経費は全部電力料金に加算できるので幸せな会社ですね。電力会社が「想定外の地震の被害で」といいわけが通るのですかね。事故の情報が隠されて、「今は心配ありません」が時間の経過と共に事態が悪くなっていく。その説明は誰が聞いても問題の核心がつかめない内容でした。

A.原発問題は多くの専門家が災害防止に努力をされている問題なので批判はやめよう。しかし、過去の事例から見て欧米人の安全に対する考え方は厳しく、シンプルで信頼できる。日本社会は組織維持と合意形成が先に立ち、対策が一歩遅れる嫌いがある。それは緊急時にプロジェクトを立ち上げ、緊急対策の権限を明確にする組織をつくらないからだろう。しかし権限を与えると言うことは判断の基準を与えるコトを意味し、日本組織は明確な判断基準を持たず稟議でこれまで処理してきた。ここに問題がある。

B.プロジェクト組織の権限は欧米ではどうなっているのですか。

A.欧米ではプロジェクトでの権限と責任は明確だが、プロジェクトでなくても個人の仕事の範囲、権限と責任が明確だ。また、責任を果たせば報酬がリンクしている。ところで君の会社ではプロジェクトマネジャーの権限と責任は明確かね。

B.いやー、あいまいなのですよ。
A.ここが日本式の欠点だと思うよ。私が働いていた会社はプラント建設だったが、権限と責任が明確だった。しかし、曖昧な組織は緊急時に実力を発揮できない。現場を知らない肩書き人間が指揮を執るから情報が不正確になり、2次的災害が発生する。それは外部に発信する情報の不統一性ですぐわかる。
B.そういえば今回の原発事故も情報が不明確で、人々に安心感を与えませんでした。

A.次回はプロマネの実践力の中で最も困難な緊急事対策の話をする。


プロジェクトマネジメントを楽しむ バックナンバー
第1回 プロジェクトを楽しむには多くの仕掛けがいる
第2回 PMを楽しむ仕掛けは時間が生み出す
第3回 基礎をしらないとPMは楽しくならない
第4回 仕事を減らす楽しみを覚えよう   (2)  (3)

第7回 行動の中から楽しみを生み出そう(1)
第8回 行動を頭に合わせよう(2)
第9回 行動を頭に合わせよう(3)
第10回 目的があって仕事がある(1)   (2)   (3)

第13回 日本の『現場力』を再度強化しよう(1) 
  (2)   (3)  (4)  (5)  (6)  (7)  (8)  (9)  (10)

第23回 「何か変だな」(1)〜「お客様は神様か?」
第24回 「何か変だな」(2)〜「頭を使う人々が、(生産性に)頭を使わないのはなぜ?」
第25回 「何か変だな」(3)〜「問題と課題の違いがわかるかな?」
第26回 「何か変だな」(4)〜「資格を取っても役に立たない?」
第27回 「何か変だな」(5)〜「「物事」とは何か?」
第28回 「何か変だな」(6)〜「タテマエとホンネ」とは何か?
第29回 「何か変だな」(7)〜「カタカナ言葉と漢字」
第30回 「何か変だな」(8)〜「これからは日本の時代って本当?」
第31回 「何か変だな」(9)〜「ものづくりは技術が基盤って本当?」
第32回 「何か変だな」(10)〜「サービスはタダか、サービスはマネーか?」
第33回 「何か変だな」(11)〜「少子化問題と一人っ子政策の討論」
第34回 「何か変だな」(12)〜「何か変だな!講演会」
第35回 「何か変だな」(13)〜「何か変だな!講演会2」
第36回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(1)〜PMOに消火活動チームの設置
第37回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(2)〜働く女性のために小学校の低学年児童の居残りは学校が面倒を見たら!
第38回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(3)〜アイデアは出すことより、実行+が難しい。実行が難しいから、皆考えなくなる
第39回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(4)〜How to の時代からWhat toへの転換
  (5)  (6)  (7)  (8)  (9)  (10)  (11)  (12)  (13)  (14)  (15)

第51回 「プロジェクトを実践して楽しもう!」(1)〜What toからHow to enjoy project managementへの転換
第52回 「プロジェクトを実践して楽しもう!」(2)―緊急時の対策― 〜What toからHow to enjoy project managementへの転換
  (3)  (4)  (5)  (6)  (7)

第58回 「プロジェクトを実践して楽しもう!」―情報を活用する能力(1)―〜What toからHow to enjoy project managementへの転換
  (2)  (3)  (4)  (5)

第63回 「世界が変化している。原理・原則を知って変化に対応しよう」―ビジネスの基本に戻ろう(1)― −変わる基本、変わらぬ基本の理解−
  (2)  (3)  (4)  (5)  (6)  (7)  (8)  (9)  (10)  (11)  (12)

第75回 「世界が変化している中で、日本人は自分のことをよく知っているのか」―勉強をしたバカとは何か勉強しよう(1)― 
  (2)  (3)  (4)  (5)  (6)   (7)   (8)  (9)  (10) (11)   (12)

第87回 “想定外”と“ゼロベース発想”−(1)
  (2)   (3)  (4)  (5)     (6)   (7)    (8)   (9)    (10)  (11)   (12)  

第99回 「日本人がグローバリゼーション下で勝ち抜くための発想転換」―グローバル市場で“勝ち抜くための戦略”−(1)

第159回 「日本人がグローバリゼーション下で勝ち抜くための発想転換」(73)―日本がグローバル市場で勝ち抜くためへの反省と提案−(1)

 
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