第65回(2012.06.08) 「プロジェクトマネジメントを楽しむ」 その65
「世界が変化している。原理・原則を知って変化に対応しよう」
―ビジネスの基本に戻ろう(3)―
−変わる基本、変わらぬ基本の理解−
渡辺 貢成
 kosei.watanabe@sweet.ocn.ne.jp
(有)経営組織研究所


−変わる基本、変わらぬ基本の理解−
「世界が変化している。原理・原則を知って変化に対応しよう」―ビジネスの基本に戻ろう(1)― 12年04月

−変わる基本、変わらぬ基本の理解−
「世界が変化している。原理・原則を知って変化に対応しよう」―ビジネスの基本に戻ろう(2)― 12年05月

−変わる基本、変わらぬ基本の理解−
「世界が変化している。原理・原則を知って変化に対応しよう」―ビジネスの基本に戻ろう(3)― 12年06月


A.今月は契約の話をしよう。私たちはかつて保険の外交員の口車に乗って入った保険で、問題が発生してもらえる金額に大きな差があるとこを実感してきた。「おかしいじゃないか」と苦情を言うと、「お客さん、契約書のここに書いてあります」と、虫眼鏡で見ないと読めない大きさの字で、保険会社に有利な内容が書いてあり、騙された経験をしているから、契約を少し勉強しよう。

B.保険会社ではなく、お客さんとの契約もそうです。ここでは細かいことは書いてなく、「問題が発生したときは、双方誠意を持って解決する」と書いてあります。

A.問題が発生するとその時はどうなるのかね。

B.お客さんから「双方誠意をもって解決するとある。君達からどのような誠意を見せるか、それによって今後の仕事を考えようではないか」と

A.それも一種の詐欺だな。グローバルの契約は違う。欧州の国々は宗教の影響を受けている。まず、ユダヤ教徒はユダヤの神様と契約を交わしている。これらの人々はユダヤ人と呼ばれている。プロテスタントが資本主義に影響をあたえており、契約は発注者Aと受注者Bと契約を結ぶが、神の前に対等な立場で契約をする。その理由は「発注者は発注者にしかできない業務があり、発注者はその責任を果す義務がある。受注者は受注者にしかできない業務があり、その責任を果たす義務がある」。そのため両者は対等であるという発想から来ている。現在では双方が協力することで最高の成果が得られるという実績が認められ、Win/Winの関係が好ましいと考えられている。

 契約には大きく分けて3つの型がある。(P2M標準ガイドブック参照)
@ 定額請負契約型:条件を定め、その範囲内で定額の契約を取り交わし、約束の範囲内で起こったリスクは受注者の責任とする方式。
A 実費償還型:新規のプロジェクト、研究開発プロジェクト等は未知の問題に挑戦するため、使った費用はある範囲内で全て支払いするという内容の契約方式。
B 単価契約型:契約上合意されている単価に完成物量を掛けることで、トータル額が決定される方式。
プロジェクト業務に関し、日本では@の定額請負契約が多い。これに対し、米国ではAの実費償還型契約が多い。

B.わかりました。米国は何故実費償還型が多いのですかね。受注者がリスクを引き受けるというのですから、定額契約にすれば発注者が得をしませんか。

A.私も同じことを考えた。そこで米国の友人に聞いた。米国では定額請負型で見積もり依頼すると、考えられるリスク全てを算出し、見積もりに含ませる。過剰のリスク分を支払うより、リスクを含まない実費償還型契約の方が安いという答えが返ってきた。

B.でも日本ではプロジェクトがリスクを算出し、見積もりに上乗せすると、営業は余計なものを見積もると受注できないといって切られてしまいます。

A.カットされたリスクは誰が責任をとるのかね。

B.それはプロジェクトですよ。営業は受注すれば手柄となりますが、赤字の責任はプロジェクトですから、不合理がまかり通るのです。

A.シェル石油の見積もりで、営業がリスクマネーを見積もりから外して提出した。ところがシェルから、リスク費はどこに入っているという質問があった。営業がカットしたと話すと、コンティンジェンシー予算がないプロジェクトは危険だといって追加してくれた。ただし、この費用はシェルの許可なしには使わせないという条件付となった。シェルと付き合ってわかったことは、リーゾナブルでない仕事をさせると、その無理がプラントに悪影響を与えるので、経験的に好ましくないといっていた。

B.リーゾナブルとは合理的な発想ですね。営業が安くして、責任はプロジェクトとるという発想は無理があります。日本のITプロジェクトは理由もわからずに納期を短縮する、変更はするが、追加を払わない。このため受注者は過酷な労働条件で病気になったりする。これは良い仕事をする条件からはずれ、製品の質が下がることを意味します。

A.グローバルの仕事をする時は世界で通用する常識で仕事をしてもらいたい。私たちも失敗の多くは、赤字受注プロジェクトを、マネジャーに責任をとらせる上司がいる場合、マネジャーは今まで使わなかった業者を採用し、結果的に使えない製品が納入され、その修復に金が掛かり、20億円を回収するための行為が結果的に50億円に膨れるケースをよく見かける。その上15年掛けて育てた有能なマネジャーが離職するケースをよく見かける。海外プロジェクトでの失敗は日本式商習慣が世界に通用しないことを知らないことによって起こされることを肝に銘じてもらいたい。


以上


プロジェクトマネジメントを楽しむ バックナンバー
第1回 プロジェクトを楽しむには多くの仕掛けがいる
第2回 PMを楽しむ仕掛けは時間が生み出す
第3回 基礎をしらないとPMは楽しくならない
第4回 仕事を減らす楽しみを覚えよう   (2)  (3)

第7回 行動の中から楽しみを生み出そう(1)
第8回 行動を頭に合わせよう(2)
第9回 行動を頭に合わせよう(3)
第10回 目的があって仕事がある(1)   (2)   (3)

第13回 日本の『現場力』を再度強化しよう(1) 
  (2)   (3)  (4)  (5)  (6)  (7)  (8)  (9)  (10)

第23回 「何か変だな」(1)〜「お客様は神様か?」
第24回 「何か変だな」(2)〜「頭を使う人々が、(生産性に)頭を使わないのはなぜ?」
第25回 「何か変だな」(3)〜「問題と課題の違いがわかるかな?」
第26回 「何か変だな」(4)〜「資格を取っても役に立たない?」
第27回 「何か変だな」(5)〜「「物事」とは何か?」
第28回 「何か変だな」(6)〜「タテマエとホンネ」とは何か?
第29回 「何か変だな」(7)〜「カタカナ言葉と漢字」
第30回 「何か変だな」(8)〜「これからは日本の時代って本当?」
第31回 「何か変だな」(9)〜「ものづくりは技術が基盤って本当?」
第32回 「何か変だな」(10)〜「サービスはタダか、サービスはマネーか?」
第33回 「何か変だな」(11)〜「少子化問題と一人っ子政策の討論」
第34回 「何か変だな」(12)〜「何か変だな!講演会」
第35回 「何か変だな」(13)〜「何か変だな!講演会2」
第36回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(1)〜PMOに消火活動チームの設置
第37回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(2)〜働く女性のために小学校の低学年児童の居残りは学校が面倒を見たら!
第38回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(3)〜アイデアは出すことより、実行+が難しい。実行が難しいから、皆考えなくなる
第39回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(4)〜How to の時代からWhat toへの転換
  (5)  (6)  (7)  (8)  (9)  (10)  (11)  (12)  (13)  (14)  (15)

第51回 「プロジェクトを実践して楽しもう!」(1)〜What toからHow to enjoy project managementへの転換
第52回 「プロジェクトを実践して楽しもう!」(2)―緊急時の対策― 〜What toからHow to enjoy project managementへの転換
  (3)  (4)  (5)  (6)  (7)

第58回 「プロジェクトを実践して楽しもう!」―情報を活用する能力(1)―〜What toからHow to enjoy project managementへの転換
  (2)  (3)  (4)  (5)

第63回 「世界が変化している。原理・原則を知って変化に対応しよう」―ビジネスの基本に戻ろう(1)― −変わる基本、変わらぬ基本の理解−
  (2)  (3)  (4)  (5)  (6)  (7)  (8)  (9)  (10)  (11)  (12)

第75回 「世界が変化している中で、日本人は自分のことをよく知っているのか」―勉強をしたバカとは何か勉強しよう(1)― 
  (2)  (3)  (4)  (5)  (6)   (7)   (8)  (9)  (10) (11)   (12)

第87回 “想定外”と“ゼロベース発想”−(1)
  (2)   (3)  (4)  (5)     (6)   (7)    (8)   (9)    (10)  (11)   (12)  

第99回 「日本人がグローバリゼーション下で勝ち抜くための発想転換」―グローバル市場で“勝ち抜くための戦略”−(1)

第159回 「日本人がグローバリゼーション下で勝ち抜くための発想転換」(73)―日本がグローバル市場で勝ち抜くためへの反省と提案−(1)

 
一覧に戻る
スポンサードリンク
読者からのコメント

■本稿に対するご意見,ご感想をお聞かせください.■

は必須入力です
コメント
自由にご記入ください

■氏名またはハンドル名
■会社名または職業
■年齢

  
このコンテンツは「プロジェクトマネージャー養成マガジン」としてメルマガで配信されています.メルマガの登録はこちらからできます.