第30回(2009.06.12) 「プロジェクトマネジメントを楽しむ」 その30
「何か変だな」(8)〜「これからは日本の時代って本当?」
渡辺 貢成
 kosei.watanabe@sweet.ocn.ne.jp
(有)経営組織研究所

「顧客は神様か?」−(1)08年11月号
「頭を使う人々が、(生産性に)頭を使わないのはなぜ?」−(2)08年12月号
「問題と課題の違いがわかるかな?」−(3)09年1月号
「資格を取っても役に立たない?」−(4)09年2月号
「物事」とは何か?(5)09年3月号
「タテマエとホンネ」(6)09年4月号
「カタカナ言葉と漢字」(7)09年5月号
−「これからは日本の時代って本当?」(8)09年6月号

B.このコーナーで勉強しているお陰で、いろいろと本を読むようになりました。先生から、質問が鋭くなったなどと褒められるようになったからです。
A.ははん! 何か鋭い質問を用意してきたね。
B.いや、単にわからないだけです。実は新聞を読みますと、100年に1度の不景気だと書き立てています。そしてGMは駄目だ、アメリカは駄目だなどと書いてありますがね、米国の景気の落ち込みより、日本の落ち込みが大きいらしい。これでは国民は将来に不安を感じて、買い物しなくなるから不景気がひどくなると思うのですがね。驚いたことに米国より日本のダメージが大きいって本当ですか。
A.なるほど。その通りだね。でも、別なことを聞きたいのじゃない。
B.米国は景気対策を打ち出していますよね。説明がついているから国民もわかりやすい。日本では国民全員に、サーと使えと、ポンと金を出すが、何の説明もない。効果があるか、ないか、無駄使いか、さっぱりわからない。
A.いい質問だね。今までは日本政府も理屈をつけて景気対策費を出していた。ところが全く効果がなかった。大きな声ではいえないが、景気対策費は誰が使うと思う?役所が金の使い道をきめて、公共投資や傘下の財団を通して金をばら撒くから、役所都合の使い方になって、天下り先や、その関連の組織が潤うって、景気対策にならなかった。理屈ぬきに国民に配った方が、確実に景気対策になるよね。
B.なるほどね。「国民は無駄使いをしない」とは賢い選択ですね。今の総理もオツなことをしますね。話はかわりますが、本屋へ行くと、政治、経済で3種類の本がありますね。@米国は信用ができない。これからなりふりかまわず、日本に色々と圧力をかけてくる。A日本は何も手を打たない。これでは日本は駄目になる。B色々あるが、これからは日本の時代だ、というものですがね。どうなんでしょうね。
A.いやー!難しい質問をするね。正直言って私にもよくわからない。著者は責任を持って、書いているから、質問に耐えるだけの論拠を持っているはずだ。書いている論点が異なっているだけで、すべて正しいが解答かな。
B.先生も国会的答弁になりましたね。知識人って、だから好きじゃないんだ。
A.ハハハ!厳しいね。では@、Aは単なる批判になるのでBについてだけ答えよう。
  戦後日本人は自信喪失で、米国礼賛できた。米国が進んでいたから仕方なかった。でも日本人は「ものつくり」で、米国に勝ったが、まだ自信をもてないでいる。
よく考えると、日本人が日本人を自信喪失状態にしている。それは米国流をバックボーンとした日本でのエスタブリッシュ(権威者、権力者)が日本を否定することで、地位を確保してきた。これは明治維新以来の伝統でね。ところが日本には江戸時代以前からの多くの伝統があり、舶来と国産をうまく使い分けて世界第2位の地位を築いた底力がある。よく観察すると、米国は企画力があり、実行力があって、格好よく見えるが、トップダウンで卓上の論理を進めるから、ほどほどのものしかできない。日本は米国流を採用し、トップは駄目だが、ミドルが頑張り、トップダウンの米国のよさを取り入れ、磨きのかかったものにする。日本はここで俺たちはすごいだろうと叫ぶべきだが、日本のエスタブリッシュは日本人を信用していないから世界で主張しない。そこで米国は日本流に米国流の名前をつけて発表する。これをエスタブリッシュはいち早く採用して商売にする。実際米国流の経営の中に日本流が多く採用されている。ここで日本人は自信を持つべきだが、残念ながら日本にないのは戦略開発力だね。
B.なるほど、なるほどと言いたいのですが。戦略開発力とは何ですか。
A.日本では米国流の戦略を勉強し、忠実に実行しているが、皆が忠実に習った戦略を実行するので、どの会社の戦略も同じ。結果は価格競争になる。ものまね戦略をやめて、新しい戦略を考えることだね。技術開発より重要だよ。
B.なるほどね。新しい戦略を考えると日本は万々歳という話しですか。日本は大勢いるミドルが頼りになるから、我々が頑張ればいいのですね。
A.頑張るって残業することじゃーないよ。自信を持って、誰も考えない戦略を考えることだよ。



プロジェクトマネジメントを楽しむ バックナンバー
第1回 プロジェクトを楽しむには多くの仕掛けがいる
第2回 PMを楽しむ仕掛けは時間が生み出す
第3回 基礎をしらないとPMは楽しくならない
第4回 仕事を減らす楽しみを覚えよう   (2)  (3)

第7回 行動の中から楽しみを生み出そう(1)
第8回 行動を頭に合わせよう(2)
第9回 行動を頭に合わせよう(3)
第10回 目的があって仕事がある(1)   (2)   (3)

第13回 日本の『現場力』を再度強化しよう(1) 
  (2)   (3)  (4)  (5)  (6)  (7)  (8)  (9)  (10)

第23回 「何か変だな」(1)〜「お客様は神様か?」
第24回 「何か変だな」(2)〜「頭を使う人々が、(生産性に)頭を使わないのはなぜ?」
第25回 「何か変だな」(3)〜「問題と課題の違いがわかるかな?」
第26回 「何か変だな」(4)〜「資格を取っても役に立たない?」
第27回 「何か変だな」(5)〜「「物事」とは何か?」
第28回 「何か変だな」(6)〜「タテマエとホンネ」とは何か?
第29回 「何か変だな」(7)〜「カタカナ言葉と漢字」
第30回 「何か変だな」(8)〜「これからは日本の時代って本当?」
第31回 「何か変だな」(9)〜「ものづくりは技術が基盤って本当?」
第32回 「何か変だな」(10)〜「サービスはタダか、サービスはマネーか?」
第33回 「何か変だな」(11)〜「少子化問題と一人っ子政策の討論」
第34回 「何か変だな」(12)〜「何か変だな!講演会」
第35回 「何か変だな」(13)〜「何か変だな!講演会2」
第36回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(1)〜PMOに消火活動チームの設置
第37回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(2)〜働く女性のために小学校の低学年児童の居残りは学校が面倒を見たら!
第38回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(3)〜アイデアは出すことより、実行+が難しい。実行が難しいから、皆考えなくなる
第39回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(4)〜How to の時代からWhat toへの転換
  (5)  (6)  (7)  (8)  (9)  (10)  (11)  (12)  (13)  (14)  (15)

第51回 「プロジェクトを実践して楽しもう!」(1)〜What toからHow to enjoy project managementへの転換
第52回 「プロジェクトを実践して楽しもう!」(2)―緊急時の対策― 〜What toからHow to enjoy project managementへの転換
  (3)  (4)  (5)  (6)  (7)

第58回 「プロジェクトを実践して楽しもう!」―情報を活用する能力(1)―〜What toからHow to enjoy project managementへの転換
  (2)  (3)  (4)  (5)

第63回 「世界が変化している。原理・原則を知って変化に対応しよう」―ビジネスの基本に戻ろう(1)― −変わる基本、変わらぬ基本の理解−
  (2)  (3)  (4)  (5)  (6)  (7)  (8)  (9)  (10)  (11)  (12)

第75回 「世界が変化している中で、日本人は自分のことをよく知っているのか」―勉強をしたバカとは何か勉強しよう(1)― 
  (2)  (3)  (4)  (5)  (6)   (7)   (8)  (9)  (10) (11)   (12)

第87回 “想定外”と“ゼロベース発想”−(1)
  (2)   (3)  (4)  (5)     (6)   (7)    (8)   (9)    (10)  (11)   (12)  

第99回 「日本人がグローバリゼーション下で勝ち抜くための発想転換」―グローバル市場で“勝ち抜くための戦略”−(1)

第159回 「日本人がグローバリゼーション下で勝ち抜くための発想転換」(73)―日本がグローバル市場で勝ち抜くためへの反省と提案−(1)

 
一覧に戻る
スポンサードリンク
読者からのコメント

■本稿に対するご意見,ご感想をお聞かせください.■

は必須入力です
コメント
自由にご記入ください

■氏名またはハンドル名
■会社名または職業
■年齢

  
このコンテンツは「プロジェクトマネージャー養成マガジン」としてメルマガで配信されています.メルマガの登録はこちらからできます.