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第79回(2013.08.13) 「プロジェクトマネジメントを楽しむ」 その79
「世界が変化している中で、日本人は自分のことをよく知っているのか」
―勉強をしたバカとは何か勉強しよう(5)―
渡辺 貢成 kosei.watanabe@sweet.ocn.ne.jp
(有)経営組織研究所 |
「世界が変化している中で、日本人は自分のことをよく知っているのか」―
−勉強をしたバカとは何か勉強しよう−(1)
−勉強をしたバカとは何か勉強しよう−(2)
−勉強をしたバカとは何か勉強しよう−(3)
−勉強をしたバカとは何か勉強しよう−(4)
A.今日の話は「世界が変化している中で、日本人は自分のことをよく知っているのか」というテーマに最もふさわしい話をする。先月号で約束した「グローバリゼーションとは何なのか」、アルジェリア人質事件で「日揮はなぜ、人質被害を受けたのに、いち早く現在の契約業務遂行を回答したか」という話をする。
まず、「グローバリゼーションの本質は何か」だが、マスコミを始め、政府、企業人も正確に把握していない。多分君達も説明できないだろう。本年7月に「人々はなぜグローバル経済の本質を見誤るのか」が出版された。
B.面白そうですね。分かりやすく箇条書きでお願いします。
A.分かった。グローバリゼーション下で起こっているのは3つの大きな構造変化だ。
(1)帝国主義の台頭と国民国家の退場=帝国化
(2)金融経済の実物経済に対する圧倒的な優位性=金融化
(3)均質性の消滅と拡大する格差=二極化
だ。
B.先生。これが分かりやすい説明ですか。私が知っている経済とまるっきり違いますね。分かりやすく説明してください。
A.本の前書きに、1995年を境に戦後経済の常識の多くが通用しなくなった。それは世界経済を支配する法則が一変したからだと書いてある。日本人の多くは1995年にインターネットの普及で経済の流れが速くなった程度で、経済の法則が変わったということに気がついていない。
B.私の会社では、経営方針も、業務遂行方式も全く変わっていませんよ。経費削減を一生懸命やらされていますが。
A.その常識が違ってきたんだな。論理的に説明すると難しくなるから、独断と偏見で分かりやすく説明しよう。
@19991年ソ連崩壊で唯一の強国となった米国(本当は國際金融資本)は、日本を始め欧州の先進国の経済が伸び悩んでしまった事実を見て、このままでは世界中が不況になってしまい、豊富な独占資本の使い道がなくなることに危惧の念を抱いた。しかし、先進諸国は規制をかけて自国の経済を守るから、規制のない市場をつくろうと考えたのがグローバリゼーションの本質だな。そこで新興国に対し、従来の植民地政策と逆の戦略を思いついた。金と技術と人材を提供し、新興国に製造を任せようと。新市場への参入は大きな危険が存在するが、それ以上に大きな利益が獲得できる。正しくはこの市場に乗り込まない限り、先進国もその国の将来はないというリスクを認知することだ。
B.先生、それではマスコミがTPPへ参加するべきか、やめるべきかと議論していますが、その議論はナンセンスではありませんか。規制のない市場に出かけて、その市場が求める価値を提供する努力で、日本再生を図る以外に生きる道はないということですね。
A.さすが、勘が鋭いね。何故日本人はグローバル経済の本質を見誤るか分かるかな。日本人はリスクから出発するから逃げ腰になる。中国や韓国人は金儲けから出発するから、新しい経済の本質を把握することを考える。本質を把握すると、リスクを避けることが出来る。本質が分からなければ、失敗の確率は高くなり失敗する。1990年以降、日本企業はグローバル市場で努力をする代わりに、リスクを恐れて国内志向になっている。しかし、数少ない企業がグローバリゼーションの中で活躍している。小松製作所、日揮も同様で、企業の体質をグローバリゼーションに合わせてきたから成功した。テロの問題もリスクの一つだが、恐れていてはビジネスが成り立たない。
C.日揮が出てきたのでアルジェリアの話をしてもらえませんか。
A.わかった。厳しい話だが、簡単にお話しする。1967年頃だったと思う。アルジェリアという社会主義国から石油精製プラントを受注した。当時世界で一番大きな石油精製プラントを定額請負金額で契約した。アラブ諸国との仕事は始めてであり、宗教、習慣の相違等でたいへん苦労した。この種の仕事が始めてであるアルジェ人の会社を使って仕事を進めた。国策としてアルジェ人の会社の倒産は防ぐというアルジェ側の方針があり、アルジェ側の不始末は日揮が全部引き受けてプロジェクトを完成させた。日揮の社員はアルジェリア人との仕事がトラウマとなり、アルジェからの第二期工事の入札に不参加を決めた。
C.國際入札を拒否することもあるのですか。
A.珍しいが、ないとはいえない。
C.どうなりました。
A.アルジェリア石油公社の総裁が来日し、「日揮は我々の理不尽な要求に対し、手抜きなどせず、誠心誠意立派な仕事をしてくれた。このようなまじめな会社は稀有の存在だ。今回は特命で発注する。前回の損害を加算するから引き受けて欲しい」といわれた。日本人はこの種の言葉に弱くてね、お引き受けしたよ。その後も引き続き仕事をさせてもらっている。テロはリスクだが、その発生確率は天災発生の以下だ。顧客の評価がビジネスでは優先する。継続が当然の決着だ。
以上
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