第88回(2014.05.16) 「プロジェクトマネジメントを楽しむ」 その88
「日本人がグローバリゼーション下で勝ち抜くための発想転換」
−アベノミクスを成功させるためにー
―“想定外”と“ゼロベース発想”−(2)

渡辺 貢成
 kosei.watanabe@sweet.ocn.ne.jp
(有)経営組織研究所


“想定外”と“ゼロベース発想”−(1)
―“想定外”と“ゼロベース発想”−(2)


A.14年度のテーマは「ゼロベースの発想」とした。日本はこの20年間の経済活動を通じて2流国家なりさがったと米国の政府高官は見ている。安倍総理は投げかけられた彼らのコメントに『アベノミクスを実施することで日本は1流である』ことを証明すると宣言した。だが、現実は昨年度のテーマ「勉強したバカ」の議論で、国民はこれまでの政府・官僚の近年の能力を信じていない。アベノミクスは従来の発想では成功しない。“ゼロベースの発想”が求められていると確信している。本日は君たちに『14年度のテーマである“ゼロベース発想法”について』意見をもらうことになっている。

E.多くの日本企業は過去の成功に従い、『モノづくり・技術』プラス米国式経営でグローバリゼーションに対応しました。一方新興国の起業家は『松下幸之助のビジョン:顧客関係性構築と2番手商法』を信奉し、グローバリゼーション競争に臨みました。結果はご存じのとおりです新興国起業家の勝利でした。

アベノミクスはこの環境下での日本再生策です。『アベノミクスの成功は“ゼロベース発想”で』という発想の転換が求められています。

“ゼロベースの発想”とは『既存の習慣や常識にとらわれることなく、それからくる概念を取り払って、ゼロの状態から事象を捉える思考法をいいます。枠を外して、発想の幅が広げる思考法』です。

C.Eさんの話は正しいと思いますが、ゼロベースの発想とは解決法がケースバイケースです。したがって抽象的な話を聞いても役に立ちません。皆さんもベテラン揃いですから、多くのトラブル処理の実績があると思います。トラブル処理は教科書では解決できず、各人が知らずにゼロベースの発想で処理しています。自分や仲間の経験談を話してくれるとわかりやすいのですが。

A.それは面白いな、どんな小さなケースでもいいから話してもらいたい。

B.アベノミクスと関連しませんがよろしいでしょうか。

A.わかりやすい具体例があればお願いします。

B.現状で原発関連の話はしたくないのですが、原発に関係なく『プラント建設工事の安全を原点から見直し、大成功をした事例』をお話しします。

・この現場は当時60万時間無事故無災害の記録をつくり、顧客から表彰されました。現場所長はこの記録をさらに延長したいと考えました。
・日本の現場には工事安全旬間があり、その期間は本社から安全部長が現場に派遣され、「安全に気をつけろ」と本社からの注意事項を伝達します。現場所長はこれを全員にオオム返しに伝達し、全員が復唱してセレモニーが終わります。所長はこのセレモニーはマンネリ化しており、事故防止を高めるには効果が薄いと考えました。現場関係者を集め、更に本質的に安全に貢献する方法を議論しました。そして次の答えを出しました。

1) 現場は小さなヒヤリ、ハットを皆経験している。300のヒヤリハットが重大事故につながるというデータがある。
2) 小さなヒヤリ、ハットの主なものは、踏み抜き、仮足場からの転げ落ち、不十分な足場、現場巡回中に頭をぶつける。命綱の不使用(重大)等である。
3) 具体的に実行したこと
@ 現場に中年のおばさんによる清掃班の常駐(常時現場を綺麗にしておく)
A 元請けがすべての足場を業者の要請に応えて設置する。ただし、工事内容と範囲を前日15時までに届け出をする
B 朝礼で本日の作業と安全のポイントを班長が作業員に復唱させる。
4)実績
@清掃班の活躍で現場がきれいになり、結果、作業員が現場を散らかさない作業をするようになった。
   A前日15時までに届け出た足場が完成しているため、仕事が順調に進み、足場がしっかりしているため、工事の品質が向上した。
C 業者は前日に作業内容を届けるために、1週間前から準備を始めるため、資材、作業員、アシスタントなどの準備が整い、作業が前倒しに進行した。
D 結果:目的の無災害記録はさらに更新できた。
5) 後日談、この結果を福島労働基準局管内で報告、福島地区全原発工事業者が本方式を検討し、採用することになった。結果原発工事現場が整然としてきたことにより、発電所が積極的に住民に対し、工場の建設現場見学を実施し始めた
6) 更に電事連安全責任者が協議し日本中の全原発で本方式を採用することにした。

A. この話のゼロベース発想の本質は何かな。

B. @現場は雑然としているのが当たり前という発想の打破
A足場を各業者に任せずに、元請けが統括したことで業者間の混乱を防止した
Bヒヤリ、ハットを重視した対策とその工夫をした
C合理的な計画に基づく工事の進め方が、工程管理、品質管理、コスト管理のすべてに貢献した。巨大な現場では統括管理の重要性を関係者が認識できた。


以上

プロジェクトマネジメントを楽しむ バックナンバー
第1回 プロジェクトを楽しむには多くの仕掛けがいる
第2回 PMを楽しむ仕掛けは時間が生み出す
第3回 基礎をしらないとPMは楽しくならない
第4回 仕事を減らす楽しみを覚えよう   (2)  (3)


第7回 行動の中から楽しみを生み出そう(1)
第8回 行動を頭に合わせよう(2)
第9回 行動を頭に合わせよう(3)
第10回 目的があって仕事がある(1)   (2)   (3)

第13回 日本の『現場力』を再度強化しよう(1)
 
  (2)   (3)  (4)  (5)  (6)  (7)  (8)  (9)  (10)

第23回 「何か変だな」(1)〜「お客様は神様か?」
第24回 「何か変だな」(2)〜「頭を使う人々が、(生産性に)頭を使わないのはなぜ?」
第25回 「何か変だな」(3)〜「問題と課題の違いがわかるかな?」
第26回 「何か変だな」(4)〜「資格を取っても役に立たない?」
第27回 「何か変だな」(5)〜「「物事」とは何か?」
第28回 「何か変だな」(6)〜「タテマエとホンネ」とは何か?
第29回 「何か変だな」(7)〜「カタカナ言葉と漢字」
第30回 「何か変だな」(8)〜「これからは日本の時代って本当?」
第31回 「何か変だな」(9)〜「ものづくりは技術が基盤って本当?」
第32回 「何か変だな」(10)〜「サービスはタダか、サービスはマネーか?」
第33回 「何か変だな」(11)〜「少子化問題と一人っ子政策の討論」
第34回 「何か変だな」(12)〜「何か変だな!講演会」
第35回 「何か変だな」(13)〜「何か変だな!講演会2」
第36回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(1)〜PMOに消火活動チームの設置
第37回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(2)〜働く女性のために小学校の低学年児童の居残りは学校が面倒を見たら!
第38回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(3)〜アイデアは出すことより、実行+が難しい。実行が難しいから、皆考えなくなる
第39回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(4)〜How to の時代からWhat toへの転換
  (5)  (6)  (7)  (8)  (9)  (10)  (11)  (12)  (13)  (14)  (15)

第51回 「プロジェクトを実践して楽しもう!」(1)〜What toからHow to enjoy project managementへの転換
第52回 「プロジェクトを実践して楽しもう!」(2)―緊急時の対策― 〜What toからHow to enjoy project managementへの転換
  (3)  (4)  (5)  (6)  (7)

第58回 「プロジェクトを実践して楽しもう!」―情報を活用する能力(1)―〜What toからHow to enjoy project managementへの転換
  (2)  (3)  (4)  (5)

第63回 「世界が変化している。原理・原則を知って変化に対応しよう」―ビジネスの基本に戻ろう(1)― −変わる基本、変わらぬ基本の理解−
  (2)  (3)  (4)  (5)  (6)  (7)  (8)  (9)  (10)  (11)  (12)

第75回 「世界が変化している中で、日本人は自分のことをよく知っているのか」―勉強をしたバカとは何か勉強しよう(1)― 
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第87回 「日本人がグローバリゼーション下で勝ち抜くための発想転換」−アベノミクスを成功させるためにー
“想定外”と“ゼロベース発想”−(1)

  (2)  (3)  (4)   (5)     (6)   (7)    (8)   (9)    (10)  (11)   (12)  

第99回 「日本人がグローバリゼーション下で勝ち抜くための発想転換」―グローバル市場で“勝ち抜くための戦略”−(1)

第159回 「日本人がグローバリゼーション下で勝ち抜くための発想転換」(73)―日本がグローバル市場で勝ち抜くためへの反省と提案−(1)

 
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