第3回(2007.03.09) 「プロジェクトマネジメントを楽しむ」 その3
基礎をしらないとPMは楽しくならない
渡辺 貢成
 kosei.watanabe@sweet.ocn.ne.jp
(有)経営組織研究所

◆ 第3回「基礎を知らないとPMは楽しくならない」

前回は「PMを楽しもう」の全容を基礎編、戦略編、実践編に分けて、それぞれの内容に表題をつけたが、これは構想だから旬の問題に合わせて適宜こらないと思うだろうが、しかし、今回は基礎編から出発しよう。

現在の日本は先進国であるが、昔々は後進国であった。若い人は違うが、残念ながら日本にはこの時代の習慣が未だに残っていて、米国に勝てないものがある。仕事を楽しむ程度が小さいことだ。後進国時代は米国から技術を導入し、これを忠実に採用してきた。米国の知識を知っていると、その人間のステータスが上がった。日本は米国技術を最善とみなし、米国に追いつくため、危険を冒さずに成功を目指した。残念ながら成功したことでこれが習慣となった。成功が「新しいこと考えない習慣」を定着させてしまった。日本人がすごいことを考えても企業の支配層は評価しない。米国産の技術、ツール、思想だけを受け入れるだけでなく、知っていることが実力であると錯覚しだした。その結果何が残されたか考えてみよう。もし、ゴルフの世界だったらどうか。ゴルフの本を読んで、シングルになったと誰も考えないよね。ところが不思議なことにドラッカーの本を読むと名経営者になった気になるから不思議だ。

話をPMの世界に戻そう。PMBOKの資格を取って実践してもうまくいかない。うまくいかないとPMは楽しくないよね。実践で実力がつかないとPMが楽しくならない。どうすれば実践力が身につくか考えてみよう。ゴルフはスコアがすべてだから、誰も本を読んでシングルになれると思っていない。ゴルファーは通常実践的な訓練からスタートする。しかし、ここから問題が始まる。練習の仕方でその人の将来が決まってしまう。ゴルフの教育と、PMの教育を比較しながら勉強しよう。ゴルフも物まねから出発する。悪いことではない。最初はハーフ60(プロはハーフ36でコースをまわる)ぐらいから出発する。最初はなにやら皆が楽しくプレーしているのを見て、自分も早く仲間入りしたいと思い、ゴルフの本を読み練習に励む。練習には工夫がいる。レッスンプロに基礎を学び、繰り返し実践してコースに出ると結果的に上達は早く、しかも到達レベルが高い。プロは5番アイアンを徹底的に教え込む。それ以外のクラブは使わせない。大学のゴルフ部は1年間ボールを打たせず、素振りをさせ、地面に線を引き、その線より先のターフをとる練習をさせる。ボールを打たないところがミソである。これで体が自分にあったスイングを生み出してくれる。基礎ができたらコースに出る。シングルはドライバーを打つときから戦略性を考え、飛ばすことだけをよしとしない。グリーン周りでは戦術を学ぶ。ドライバーの一打もパットも同じ一打であることを強く認識し、パッティングの練習に励み、この訓練でシングルの道を進むことになる。(図を参照「ゴルフ練習あなたはどちら?」)



では、アベレージゴルファー(100「ハーフ50」前後のスコアを出すゴルフ愛好者)の練習法を見てみよう。第一が自己流練習者で決してレッスンプロに学ばない。繰り返し練習が退屈だからだ。私と仲間は皆自己流だ。概して、ドライバーが好きである。ドライバーの練習から始める。ドライバーの飛距離を楽しむ。コースへ出る。OB(コースの外に出てしまう)に悩む。そこでまた練習に励むが、練習で決定的に悪い癖を体に叩き込む。コースに出ると常に実力以上のパーを狙い、ラフに入れて大叩きをする。グリーン周りで同じ失敗を繰り返す。でも人間は楽しい。朝、家を出るとき「今日こそは」と勇んで出かける。帰りは「思うようにならなかったが、いい場面もあり次回につながった」と心ひそかに思い、水分の抜けた体がビールを快く受け入れ、やはりゴルフは止められないと思う。これが通常のアベレージゴルファーの実態である。
 PMの世界ではどうだろうか。PMの基本を知って仕事をしているのだろうか。よく見ると我流である。業界を見回すとグローバルに活躍している業界は洗練している。国内対象の企業は世界の常識は日本の非常識的我流が通用している。これではシングルになれず、帰りの赤提灯だけが楽しみになってしまう。
 
次回はPM育成シングルとアベレージを考えてみる
  
プロジェクトマネジメントを楽しむ バックナンバー
第1回 プロジェクトを楽しむには多くの仕掛けがいる
第2回 PMを楽しむ仕掛けは時間が生み出す
第3回 基礎をしらないとPMは楽しくならない
第4回 仕事を減らす楽しみを覚えよう   (2)  (3)

第7回 行動の中から楽しみを生み出そう(1)
第8回 行動を頭に合わせよう(2)
第9回 行動を頭に合わせよう(3)
第10回 目的があって仕事がある(1)   (2)   (3)

第13回 日本の『現場力』を再度強化しよう(1) 
  (2)   (3)  (4)  (5)  (6)  (7)  (8)  (9)  (10)

第23回 「何か変だな」(1)〜「お客様は神様か?」
第24回 「何か変だな」(2)〜「頭を使う人々が、(生産性に)頭を使わないのはなぜ?」
第25回 「何か変だな」(3)〜「問題と課題の違いがわかるかな?」
第26回 「何か変だな」(4)〜「資格を取っても役に立たない?」
第27回 「何か変だな」(5)〜「「物事」とは何か?」
第28回 「何か変だな」(6)〜「タテマエとホンネ」とは何か?
第29回 「何か変だな」(7)〜「カタカナ言葉と漢字」
第30回 「何か変だな」(8)〜「これからは日本の時代って本当?」
第31回 「何か変だな」(9)〜「ものづくりは技術が基盤って本当?」
第32回 「何か変だな」(10)〜「サービスはタダか、サービスはマネーか?」
第33回 「何か変だな」(11)〜「少子化問題と一人っ子政策の討論」
第34回 「何か変だな」(12)〜「何か変だな!講演会」
第35回 「何か変だな」(13)〜「何か変だな!講演会2」
第36回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(1)〜PMOに消火活動チームの設置
第37回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(2)〜働く女性のために小学校の低学年児童の居残りは学校が面倒を見たら!
第38回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(3)〜アイデアは出すことより、実行+が難しい。実行が難しいから、皆考えなくなる
第39回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(4)〜How to の時代からWhat toへの転換
  (5)  (6)  (7)  (8)  (9)  (10)  (11)  (12)  (13)  (14)  (15)

第51回 「プロジェクトを実践して楽しもう!」(1)〜What toからHow to enjoy project managementへの転換
第52回 「プロジェクトを実践して楽しもう!」(2)―緊急時の対策― 〜What toからHow to enjoy project managementへの転換
  (3)  (4)  (5)  (6)  (7)

第58回 「プロジェクトを実践して楽しもう!」―情報を活用する能力(1)―〜What toからHow to enjoy project managementへの転換
  (2)  (3)  (4)  (5)

第63回 「世界が変化している。原理・原則を知って変化に対応しよう」―ビジネスの基本に戻ろう(1)― −変わる基本、変わらぬ基本の理解−
  (2)  (3)  (4)  (5)  (6)  (7)  (8)  (9)  (10)  (11)  (12)

第75回 「世界が変化している中で、日本人は自分のことをよく知っているのか」―勉強をしたバカとは何か勉強しよう(1)― 
  (2)  (3)  (4)  (5)  (6)   (7)   (8)  (9)  (10) (11)   (12)

第87回 “想定外”と“ゼロベース発想”−(1)
  (2)   (3)  (4)  (5)     (6)   (7)    (8)   (9)    (10)  (11)   (12)  

第99回 「日本人がグローバリゼーション下で勝ち抜くための発想転換」―グローバル市場で“勝ち抜くための戦略”−(1)
  (2)    (3)   (4)    (5)   (6)   (7)    (8)   (9)   (10)    (11)   (12)   (13)   (14)
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