1.先月8月号の解説
現場力の本を読むと、「仕事の見える化」、「意思決定の速さ」、「集団の実行能力強化」等が書かれている。これはこれで正しい。最近は世の中が便利になった。使い勝手のよいツールがソリューションとして提供される。
だが、問題はそれほど安易ではない。少し原点に戻って考える。仕事にはハードの提供とサービス(ソフト)の提供がある。ハードの提供も実はハードとソフトの提供でもある。では、ソフトとは何だろうか。極端な言い方をすれば「エンジニアリングと心」で成り立っている。旅館のサービスで考えてみると、心だけでおもてなしはできない。顧客を満足させる手順がある。顧客を満足させる設計(空間設計、到着から出発までの綿密な手順、個々の料理、接客術)がある。設計し、実行するまでがエンジニアリングである。心はこの個々の行動において発揮されるので、この基礎となるエンジニアリングなしには、心も顧客に通じない。
8月号ではこの考えに基づき、今グローバルで活躍中のプラント建設業界のエンジニアリングとIT産業のエンジニアリングのあり方の図を提供し、今回はエンジニアリング業界の説明をすることを話した。
2.プラント建設産業とIT産業のエンジニアリング業務の比較
(1)プロジェクトのライフサイクル設計
@構想計画:発注者が正しく実施する(構想計画が実施されないと、発注者は競争力のあ
る設備設計ができない)
A設計:フロントエンドローディング設計(100万以上の部品数で構成されるプラント
設計では数十社からの調達となり、変更の追従が困難なため、設計の初期に十分
な検討を行うことで、成功率を高めている。
マトリックス組織で高品質、高効率、競争力のあるコスト実現を図っている。
B調達(ハードの製作)
C建設
Dテスト、試運転
E引渡し
今回は上記@、Aについて詳細に説明、B以下は説明を省略する。
(2)エンジニアリング業界の成功要因
@グローバルなビジネス習慣に従って、正しく、やさしく仕事をしている。
・ 発注者が発注者の役割を正しく実行している
・ 契約が明確でその役割り分担が正しく守られている
・ Simple is the best.が守られている
・ 受注者はエンジニアリング業務の上流を正しく固め、変更を少なくする方式を守っている
A品質と生産性優先の仕組み
・ マトリックス型プロジェクト組織はエンジニアリング機能とマネジメント機能の分離で品質をプロセス(作業の流れの中)でつくり上げるという、デミング博士の発想を踏襲している。また、マネジメントという機能はエンジニアリングに必要な発注者の望むコンテキスト(顧客の思い)を含めた情報をエンジニアリング部門に送り続ける(作業インプット情報の提供によって品質の確保を維持しており、同時にQCDの全てにおいてチェック機能として貢献している)ことで品質向上に寄与している。マトリックス組織はエンジニアリング業務の量産方式とみなすことができる
・ 書類が完備されて、ミスの原因追及ができる
・ エンジニアリングノウハウが組織に蓄積され、業務処理が早くなっている
・ 現在は従来の1億円売上/社員数→1.5から2億円/社員数と生産性の向上
B組織成熟度
・ 国際標準化の採用
・ 社内、機能別組織標準化の整備
・ 国際アライアンスが容易な組織
を目指して組織の成熟度を高めている
以上
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