第15回「日本の『現場力』を再度強化しよう」(3)
1.2月号は
日本の高度成長期で力を発揮したのは、企業の現場力であった。当然のことながら現場力だけで世界一になったのではないが、米国に比して現場力が強かったことが世界一の競争力に繋がった。そこで世界中が現場力を見直し始めている。ではIT業界ではどうだろうか。IT業界でも重要なのは現場力だ。ではITの現場力とは何かの話をした。それには基礎という変化しない基盤と応用力という変化するものへの対応が実践力で、この習得が重要だという話をした。基礎がなくて応用力を発揮する組織は長期的な視点がなく、その場しのぎの対策に追われ、ただ忙しいだけで成果を出せない。IT業界が3Kといわれる所以はここから来ている。応用力とは諸般の事情を考慮しながら、基礎で許される許容内にまとめる能力である。これが長期的にも問題を起こさない解決法だからである。
2.今月は基礎を再度学ぼう
(1)プロジェクトマネジメントの基礎(PMBOKとP2M)を学ぶ、
「いまさら基礎!馬鹿にするなよ!」と思わないこと。
下記の図をみて、あなたは説明できるかな?
この図はものすごく大切なことが満載している。
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PM(プロジェクトマネジメント)における業務責任領域を示している。世界標準としての発注者と受注者の明確な役割分担が示されている。これを知らないと海外の人々と話し合いができない。常識だからである。 |
A |
プロジェクト計画は構想計画とシステム構築とシステム運用の一部で構成されている。そしてそれぞれの役割と資格者が存在する。構想計画はMBAでシステム構築のPMはPMPである。システム運用ではまた内容に応じて種々の資格者がいる。 |
B |
プロジェクトマネジメントにはプロダクトを創りあげるマネジメントとプロジェクトマネジメントを効率よく、安く、納期どおりに納めるマネジメントがある。PMBOKは後者の役割を担っている。 |
解説1
日本のIT業界はPMBOK(米国PMIが提供するPMの知識体系)である。IT業界の多くの人々は、PMBOK以前に顧客が構想計画を創りあげていることを知らない。それは発注者の役割だからである。IT投資をする発注者は企業戦略という最も大切なことをシステム構築の受注者に任せたりしない。他者に漏れたら戦略にならないからである。米国企業は大切な構想計画を実施するためにMBA資格者を採用している。米国には10万人以上のMBA資格者がいる。日本の発注者はMBAもいないし、受注者のPMPに要件定義を任せている。基本的に日本企業は戦略がないといえる。
解説2
再度説明するがPMBOKは構想計画で決めた、プロジェクトの使命・目的・目標を受けて、PMP資格者が効率よく、確実にシステム構築するのが役割である。ちなみにPMP資格者は20万人以上いるが、役割は構想計画ではない。
構想計画ができていないと、使命・目的・目標が見えないからPMがスタートできな
い。同時にWBSが書けないとPMBOKに示された、タイムマネジメント、コスとマネジメント、EVMも全て手をつけることができないが、PMBOKを実施していると思い込んでいる。
解説3
構想計画はプロジェクトの成果物をどのように創りあげるかというプロダクトのための出発点である。PMBOKはプロダクトのマネジメントを除いて、プロジェクトマネジメントのための手法であることを理解すること
次回は構想計画の話しをする。
以上
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