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第24回(2008.12.09) 「プロジェクトマネジメントを楽しむ」 その24
「何か変だな」(2)
〜「頭を使う人々が、(生産性に)頭を使わないのはなぜ?」
渡辺 貢成 kosei.watanabe@sweet.ocn.ne.jp
(有)経営組織研究所 |
「顧客は神様か?」−(1)08年11月号
1. 先月号のおさらい。
B:Aさん、先月は「顧客は神様か?」でしたね。頭の整理のために復習してみますね。今まで長いお付き合いでお客さんに面倒を見てもらったから、お客様の言うことは多少の無理でも言うことを聞きますよ、という習慣は仕方がないと思っていた。しかし、時代がかわり、ビジネスがスピード化した現代では、お客様も自分の要求はきっちり決めて、仕事をさせないと、結局変更が多く、能率が悪く、変更の多い仕事の出来(品質)は悪くなり、お客さん自身が被害者になりかねない。欧米のビジネス習慣を取り入れて、正しく、早く、無理なく、無駄なく仕事をするやり方に慣れることが大切ですよ、ということでしたね。
2.今月のテーマ「知的業務の生産性を高めよう」
A:欧米流のやり方がすべて、正しい訳じゃあないが、日本の製造業を除いて、特に知的生産者(ホワイトカラー)の生産性が低いことがいわれているよね。生産性が上がらないと私たちの給料も上がらないからね。
B:知的作業をしている人たちはエリート層でしょう。なぜ、頭のいい人たちの生産性が低いのですかね。
A:大きな理由が2つあるね。第一は「他人の時間を大切にする」という発想がないこと。
第二は「仕事が好きなこと」かな。
B:第一の理由は分かりますよ。人にものを頼むときに「君、この仕事をやってくれ、すぐにだ」。仕事を終わらせて持っていくと、「君、これじゃ駄目だな。私の意図を汲んでいない。このように直してくれ」とくる。それなら最初から「これこれのものをつくれ」と要求を明確にして欲しいですよね。急ぎの仕事でなければ部下にやらせられたのに。
A:その通りだね。人にものを頼むには「使命・目的・目標」を明確にし、しかも早めにお願いすることが鉄則だ。多くのお客さんが要求書つくりに3ヶ月もかけて、出来上がったら「1ヶ月でつくってもってこい」という人が多い。業者が残業することなど当然だと考えているよね。発注者が業者の生産性を心がけたら、生産性は確実に3倍以上向上するし、コストが下がり、品質が上がるのでけどね。本当は金より時間が大切という発想がないからね。
B:その通りですね。しかし、第二の理由は「仕事が好きなこと」とは何ですか。
A:分からない! 皆さん残業が多いでしょう。調べると家の近い人ほど遅くまで残して
るよね。飛び入りの仕事が入るよね。彼は更に遅くまで残業しているかい。同じ時間に帰るよね。知的生産では簡単に2倍の仕事ができるわけ。彼は忙しくなると仕事の詳細な部分をはしょっているよね。実は3倍の仕事だって出来ますよ。要するに使える時間を目いっぱい使って気の済むまで仕事をしているわけね。これが生産性低下の一つの要因。何が言いたいかわかる。
B:何ですか?
A:労働生産性はどうやって達成したと思う。トヨタを見てごらんよ。このプロセスはお客が金を払ってくれるか、と5回呪文を唱え、ばっさりと不要なプロセス(仕事)を切り捨てたわけ。知的生産は頭の中でやっているから、周囲の人がばっさり切るわけにいかないわけ。
B:ではどうしたらいいのですかね。
A:簡単! 簡単! 仕事をするときにね、毎回今3倍の仕事を抱えているのだと思うことね。そこでこの仕事を1/3の時間で要求者が満足する内容とは何かを考える。実はこれこそが本当の仕事だよ。「短く、簡潔に、分かりやすい」ものをつくる習慣をつけることだね。「習慣づける」ことがポイント
B:なるほど!なるほど!
A:「電話の長いの、残業の多いの」は有能な人といえないね。有能な人材は結論をまとめてから電話をする。自分の結論の不備や誤りを修正するためだから電話が短くなる。その後のアクションも早く、残業はしない。多くの人は電話をしながら考えているから電話は長くなる。それから仕事に取り掛かるから残業になる。
B:なるほど!よく分かります。しかし、この文章を見たら怒って苦情きますよ。残業が忠誠心の証と考えている人が多いですからね。
A:上司が無責任で、多すぎる仕事を押し付けられて苦労している人も多いから、一般論でなく、心がけとして、次のことを実行しよう、に切り替えましょう。
@ 仕事は他人の時間の節約までを考えてお願いしましょう
A 仕事は持てる時間全部を使うことではなく、減らすことで、顧客満足度の高い仕事をすることを目指しましょう。
B:有難うございました。次回は米国で知的生産性が高いわけを教えてください。
以上
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プロジェクトマネジメントを楽しむ バックナンバー |
第1回 プロジェクトを楽しむには多くの仕掛けがいる
第2回 PMを楽しむ仕掛けは時間が生み出す
第3回 基礎をしらないとPMは楽しくならない
第4回 仕事を減らす楽しみを覚えよう (2) (3)
第7回 行動の中から楽しみを生み出そう(1)
第8回 行動を頭に合わせよう(2)
第9回 行動を頭に合わせよう(3)
第10回 目的があって仕事がある(1) (2) (3)
第13回 日本の『現場力』を再度強化しよう(1)
(2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9) (10)
第23回 「何か変だな」(1)〜「お客様は神様か?」
第24回 「何か変だな」(2)〜「頭を使う人々が、(生産性に)頭を使わないのはなぜ?」
第25回 「何か変だな」(3)〜「問題と課題の違いがわかるかな?」
第26回 「何か変だな」(4)〜「資格を取っても役に立たない?」
第27回 「何か変だな」(5)〜「「物事」とは何か?」
第28回 「何か変だな」(6)〜「タテマエとホンネ」とは何か?
第29回 「何か変だな」(7)〜「カタカナ言葉と漢字」
第30回 「何か変だな」(8)〜「これからは日本の時代って本当?」
第31回 「何か変だな」(9)〜「ものづくりは技術が基盤って本当?」
第32回 「何か変だな」(10)〜「サービスはタダか、サービスはマネーか?」
第33回 「何か変だな」(11)〜「少子化問題と一人っ子政策の討論」
第34回 「何か変だな」(12)〜「何か変だな!講演会」
第35回 「何か変だな」(13)〜「何か変だな!講演会2」
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第37回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(2)〜働く女性のために小学校の低学年児童の居残りは学校が面倒を見たら!
第38回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(3)〜アイデアは出すことより、実行+が難しい。実行が難しいから、皆考えなくなる
第39回 「世の中をよくするアイデアを出してみよう!」(4)〜How to の時代からWhat toへの転換
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第51回 「プロジェクトを実践して楽しもう!」(1)〜What toからHow to enjoy project managementへの転換
第52回 「プロジェクトを実践して楽しもう!」(2)―緊急時の対策― 〜What toからHow to enjoy project managementへの転換
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第58回 「プロジェクトを実践して楽しもう!」―情報を活用する能力(1)―〜What toからHow to enjoy project managementへの転換
(2) (3) (4) (5)
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