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第19回(2008.07.11) 「プロジェクトマネジメントを楽しむ」 その19
日本の『現場力』を再度強化しよう(7)
渡辺 貢成 kosei.watanabe@sweet.ocn.ne.jp
(有)経営組織研究所 |
1.先月6月号の解説
米国での労働者に対する基本的な考え方はテーラーの科学的管理法で、「考える経営者および経営予備軍」によるトップダウンで、「労働者は考える必要はない」というの発想で今日に至っている。この考えを破ったのがデミング博士で、日本での実績が米国で彼の知名度を高めた所まで先月号で話した。
2.今月号の主役は『現場力強化』+『?』
今月は先月の続きから入る。確かにデミング博士がいなければ日本の品質がこれほど向上しなかったことは確かである。しかし、米国の現場力ではデミング博士がいくら頑張っても多分成功しなかったと思う。日本の『現場力』には世界でまねのできない何かがある。そこを日本人はより正確に理解する必要がある。米国人が持っていない日本的経営力を米国は国としてマルコム・ボルトリッジ賞として取り入れた。また、日本の現場が持つ@顧客満足度(お客様は神様)A絶えざる改善、B従業員満足という概念は、企業評価を財務一辺倒で行ってきた米国で、ハーバードビジネススクールのキャプラン教授によってバランスド・スコアカードとして取り入れられた。
これらの実践事例として、GEのウェルチ社長は、日本の現場力を米国で確立するために6シグマ方式を取入れ、成績優秀者には青帯、更に成績が上がると黒帯と報酬を与えた。同時に黒帯を取らないと役員にしないという徹底振りである。
では、日本式『現場力』だけで業績が上がるかと言うと、そういうことはありえない。『戦略』と『現場力』がドッキングする必要がある。近年『現場力』が弱くなったという声を聞く。これは半分正しい。しかし日本を弱くしているのは『戦略』不在もその一端を担っているが、他に大きな原因がある。
3.『現場力』弱体の最大の原因は?
原因は2つある。一つは日本の企業文化を変えることなしに、米国式成果主義を取り入れたことである。米国式成果主義を取り入れるならば、成果主意の最初の対象者は社長である。業績が下がると株主は会長、社長のすげ替えをする。従って米国企業はトップの決断が早い。米国では「現場の社員は命令に従って仕事をしているだけで、責任を取るほど重要な仕事をしていない」から業績低下の責任はないという発想で経営が行われている。だが、業績低下で日本の社長が責任を取って止めたという話しを聞いたことがない。「今、この難局に直面し、社長を止めるのは無責任である。業績が復帰するまで責任を持って続投する」が大方の社長の発言である。現場がよくないから私がネジを巻きなおすという発想である。従って責任は社員ということになり、社員がリストラの責任を取ることになっている。
同様に部長が売上げを伸ばしたいとき、部下に『売上げを上げろ』と怒鳴り散らす。それから後の責任は部下の成果ということになってしまう。これが日本式成果主義である。結局日本企業では「勝てる戦略を考える職務は誰かが明記されていない」ため、従来からこの曖昧性のために結局は誰も戦略を考えていないとも言える。今の成果主義は端的に言うならば「権限の委譲」を行わず「責任の転嫁」だけをしているにすぎない。ここで社員は会社に対する信頼感を喪失し、意気が上がらないのは当然である。
第二の原因は現場がものを考えなくなったことである。私たちは考えて仕事をしていますと言うかもしれない。世の中が便利になり人々は便利なツールを使うことを覚えた。型にはまるとツールは効果的である。しかし、現実はツールで処理できるものが多くない。ツール派はツールが使えないところでは考えることをあきらめるか、無理々々ツール使ってしまうかどちらかである。極端な話し、現実には知識はあるが成果を出せない人間を大量に製造しているといえる。
『現場力』の強化はこの前提があって成立する。
4.強い『現場力』とは何か?
前提条件が整えば、日本の『現場力』は世界最強になる。この答えは何か。
デミング博士が既に提言し、米国で取り入れられているマルコム・ボルトリッジ賞の基本的発想である米国的『経営の品質向上』+日本的『現場力』である。
日本版「経営品質賞」は内容的に形は整っているが、QC活動からボトムアップ的につくられた経営品質である。ボトムアップは現実的で好ましいが、決してブレークスルーできない運命にある。このことをデミング博士は見通していた。私たちは米国的経営の本質を理解しないと競争力強化ができないと思われる。しかし、日本的ボトムアップも忘れてはならない。
次回はこの問題を取り上げる。
以上
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プロジェクトマネジメントを楽しむ バックナンバー |
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第2回 PMを楽しむ仕掛けは時間が生み出す
第3回 基礎をしらないとPMは楽しくならない
第4回 仕事を減らす楽しみを覚えよう (2) (3)
第7回 行動の中から楽しみを生み出そう(1)
第8回 行動を頭に合わせよう(2)
第9回 行動を頭に合わせよう(3)
第10回 目的があって仕事がある(1) (2) (3)
第13回 日本の『現場力』を再度強化しよう(1)
(2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9) (10)
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第24回 「何か変だな」(2)〜「頭を使う人々が、(生産性に)頭を使わないのはなぜ?」
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