第20回(2006.09.29)
バーチャル・チーム
プロジェクトマネジメントオフィス 鈴木道代 
 
前回は、「リスクの監視コントロール」のツールと技法であるリスク監査を取り上げました。

リスク監査

今回は予定を変更して、人的資源マネジメントの「プロジェクト・チーム編成」プロセスのツールと技法である「バーチャル・チーム」を取り上げます。

◆バーチャル・チーム
人的資源マネジメントの実行プロセス群の「プロジェクト・チーム編成」プロセスは、プロジェクトの完了に必要な人的資源、つまり、人を確保するプロセスです。人の確保においての新たな可能性として、バーチャル・チームという考え方があります。
そんなに新たな考えというわけでもなく、通信手段が発達している現代では当然と考えられていることですが。

それは、相互にほとんどあるいは全く顔を合わせないで役割を果たす、共通の目的を持ったグループのことです。バーチャル・チームでは、電子メールやビデオ会議などの電子コミュニケーションを用いてコミュニケーションを行いますが、やはり顔を合わせることが少ないため、より濃密なコミュニケーションを確実に行うための、コミュニケーション・マネジメント計画書の重要性が高くなってきます。

コミュニケーション・マネジメント計画書

PMBOKでは、バーチャル・チームの利点を次のように挙げています。

・広範な地域に住む要員でチームを構成できる
・同じ地域にいなくても、特殊な専門知識を持った専門家をチームに加えることができる
・自宅で働く従業員をチームに加えることができる
・シフトや就労時間の異なる要員でチームを構成できる
・移動に問題のある従業員をチームに加えることができる
・出張費用がかかるため、これまでできなかったプロジェクトを行うことができる

ところが、人的資源マネジメントの実行プロセス群のもう一つのプロセスである「プロジェクト・チーム育成」のツールと技法に「コロケーション」があります。
(以前のバージョンでは、作業場所の集結と日本語で呼んでいました)
PMBOKでは、チームとしての実行能力を高めるために、活動的なプロジェクト・チーム・メンバーの大部分または全員を物理的な同じ場所に集めることであると書いています。

バーチャル・チームとコロケーションは、概念としては全く相反することですが、要するに、バーチャル・チームであっても、グループではなく、チームとして実行能力を高めればいいということになります。
グループとは、専門性を持ち寄って分業で作業を進める人の集まりですが、プロジェクト・チームは、実行能力を高めるために「リアルチーム」である必要があります。

「リアルチーム」とは、カッテェンバーグが90年台前半に提唱した次のような考え方です。

『リアルチームとは、共通の目的、達成目標、アプローチに合意し、その達成を誓い、お互いに責任を分担する補完的なスキルを持つ少人数の人の集まりである。本質はメンバー間の合意にあり、合意のためには、心底、納得できる目的が必要である。』

リアルチームでは、目標の達成のために互いの経験に基づく知見をぶつけ合うことが求められ、他人の領域に入り込み、他人の経験から学習する姿勢が求められています。


まさしく、プロジェクト・チームのあるべき姿です。

また、バーチャル・チームが、チームとして動くためには、当たり前のことなのですが、

・早い時期の顔合わせ
  早く関係を築いておく
・頻繁なコミュニケーション
  同じ場所にいないため、定期的が連絡が必要
・率直なコミュニケーション
  相手の表情や態度がわからないため、率直な意見が必要

と言われています。

チームマネジメントについての詳細はこちら

次回は、「スコープ定義」のツールと技法を取り上げます。

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PMBOKは、米国PMIの商標(R)です。

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