第21回(2006.10.06)
システム工学
プロジェクトマネジメントオフィス 鈴木道代 
 
前回は、人的資源マネジメントの「プロジェクト・チーム編成」プロセスのツールと技法である「バーチャル・チーム」を取り上げました。

バーチャル・チーム

今回は、スコープ知識エリアの「スコープ定義」のツールと技法を取り上げます。

◆スコープ定義
「スコープ定義」プロセスでは、立上げプロセスで作成されたプロジェクト・スコープ記述書暫定版を詳細なプロジェクト・スコープ記述書として完成させます。
プロジェクトの要素成果物と、これら要素成果物を生成するために必要な作業について詳細に記述していきます。

そして、PMBOKでは、「スコープ定義」のツールと技法として、次の4つを挙げています。

・プロダクト分析:プロジェクト目標を具体的な要素成果物と要求事項に変換するための方法
         プロダクト・ブレークダウン、システム分析、システム工学、価値工学、価値分析、機能分析等の技法
・代替案識別:ブレーンストーミングと水平思考法
・専門家の判断:
・ステークホルダー分析

今回は、プロダクト分析の中のシステム工学を取り上げます。

◆システム工学
システムの定義とは「ある目的のために、いくつかの要素が、有機的に結合した、その全体」です。

例えば、系統式信号と呼ばれている、信号が次々と青になり、赤でストップすることなく車が効率的に走れるものなどがシステムです。
信号機一つ一つは普通の信号機なのですが、信号機を有機的に結合することで、バラバラで制御していた場合にはできなかった機能を実現しています。

つまり、車の流れを制御するという問題に対して、信号機全体を統合的に考えること(システム)によって解決しているということです。

システム工学は一言で言えば、このように問題を解決するという目的のために最適なシステムを構築するプロセスのことです。

問題を解決するためには、通常は帰納的方法と演繹的方法があります。

帰納的方法:問題に対してデータをとり、分析することで因果関係や構造を明らかにし、最も望ましい条件を探す
演繹的方法:目的は何かを考え、目的を実現するための方法を考える

システム工学は演繹的方法であり、何のためにシステムを組むのかという目的があり、その目的を解決するための方法論として出発してきました。

南洋の島に二人のセールスマンが靴を売りに行ったという話をよく聞きます。
一人は、
「島民はすべて裸足で歩いているので、靴の需要はない」
と報告し、もう一人は、
「一人も靴をはいていないので、島民全員に靴をはかすことができたら、靴は飛ぶよ
うに売れる」
と報告したそうです。

帰納的論理と演繹的論理の違いがここに端的に現れています。靴を売るという目的からの論理が後者の演繹的論理です。
システム工学はこのように演繹的方法で目的から問題にアプローチし、そのためにデータを取り、そしてシステムを構築していくという考え方です。

そのための具体的な手順については次回からにします。

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PMBOKは、米国PMIの商標(R)です。

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