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第56回(2004.05.24) 
「二兎を追うもの一兎を得ず、、、か?」

二兎を追うもの一兎を得ず...か?

◆プロジェクトを必ず成功させる方法?!
 PM業界でよく言われるジョークに、「プロジェクトを必ず成功させる方法は、成功するプロジェクトだけを選ぶことだ」というのがある。これはプロジェクトマネジメントの立ち上がりプロセスでのプロジェクト評価の重要さを言っているという解釈もあるが、プロジェクトマネジメントの真髄は誰が考えても失敗しそうなプロジェクトを成功させることにあるという解釈もあり、意見の分かれるところだろう。

◆なぜ、複数プロジェクトを扱うのか
 その中で興味深いことは、複数のプロジェクトを扱うことの位置づけである。一口に複数のプロジェクトを同時にマネジメントするといっても、その目的はさまざまである。たとえば、自動車業界であれば、複数の開発プロジェクトを一人のマネージャーがマネジメントすることがあるが、これは技術移転や市場調整の意味合いが大きい。資源配分を企業レベルで最適化すると言う意味で、このようなやり方はプログラムマネジメントと呼ばれるものである。このような扱い方は、結構、多い。

 片や、IT業界に目を移すと、プロジェクトマネージャーの人材不足で一人の人が複数のプロジェクトをマネジメントしていることも多い。これも立派な理由である。特に、最近では、日本を代表するSI企業であるNTTデータまでが、小規模SIプロジェクトへの参入宣言をするくらい、市場におけるプロジェクトの小規模化は進んできている。このような経営環境においては、どうしても木目の細かいマネジメントが必要になってくる。したがって、プロジェクト組織もある意味で「アメーバー的な組織」にならざるを得ない。
 さて、このような状況で浮かんでくるのが、個別のプロジェクトマネジメントすら満足にできない組織が、複数のプロジェクトのマネジメントを実施できるものだろうかという疑問である。実は、この議論は過去に一度したことがある。

 プロジェクトで発生した問題は、プロジェクトの中で解決するか?

 複数のプロジェクトをマネジメントする
  

◆OPM3(R)
 昨年末に発表されたOPM3(R)が非常に面白いモデルを提示している。それは、

 プロジェクト → プログラム → プロジェクトポートフォリオ

という複雑化過程を

 標準化 → 計測化 → コントロール → 継続的改善

という成熟度の向上と組み合わせて組織成熟度を捉えている。このように考えると、高い成熟度に達するまでのパスは

 プロジェクトマネジメントの成熟度を上げ、その水平展開として、プログラムマネジメントの導入、ポートフォリオマネジメントの導入と進めていく

というアプローチと

 プログラムマネジメント、ポートフォリオマネジメントの導入と進めていく中で、個別プロジェクトの成熟度を上げていく

というアプローチがあることになる。

プロジェクトマネジメント成熟度モデル
PMI発行 Organizational Project Management Maturity Modelを参考に作成

◆二兎を追わないと、一兎も得られない!?
 今まで現実的な道筋としては、個々のプロジェクトがきちんとできるようになり、その上で、それをすべてのプロジェクトに対して行えるようにしようと考えられてきた。二兎を追うもの一兎を得ずという考えだ。
 しかし、戦略経営には、一兎だけを追いかけていると、二羽のウサギが協力して人間を翻弄して逃げてしまう、最初から二兎を追いかけないと、一兎も獲ることができないいう例え話もある。興味深い問題である。
 
【ご意見募集】
 みなさんはどう思われますか?

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    ・スケジュール管理とリソース管理
    ・リスク管理
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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
20年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「コンセプチュアル・マネジメント(無料)」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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読者からのコメント
「三本の矢」という話しがある。
一人で三本の矢は折れないが、三人で協力すれば折れる...と。
しかし、一人で三本の矢を折れる人間も居る。力があるからだ。
結局、力がない者は一本ずつ折らないと二本や三本なんて折れるはずがない。
又、力の無い者の噂\はプロジェクトにすぐ広まる。
そんな者が複数プロジェクトを見るとなると、求心力もなくなるのではないか。
少なくとも、プロジェクト配下の人間は警戒心を剥き出しにすると思う。
PMは努力してならず(34歳・プロジェクトマネージャー)
非常に分かりやすい、かつ、的を得た例え話ですね。
ツボを押せば、一本の矢を折るもの、三本の矢を折るのも同じなんてことはないのでしょうか?まあ、それが力のある人ってことなんでしょうね。
好川哲人
P2Mのプログラムマネージメントを読んだ時、個別マネージメントもできていない今の組織では、遠い将来の話として捕らえました。
ただ、マルチプロジェクトを『プログラムマネジメント、ポートフォリオマネジメントの導入と進めていく中で、個別プロジェクトの成熟度を上げていく』と考えれば、個別プロジェクトからアプローチするのと比較しても、十分トレードオフがあると思えます。
大変参考になりました。
大久保 明彦(38歳)
今までは、得意な分野だけを頑張れば良かった時代でしたが、これからは、関連の分野にも守備範囲を広げて、やっと受注に漕ぎ着けるという風に環境が変わってしまいました。例えば、情報処理システムと制御システムを個別にやっていたものを、融合させることでシナジー効果が生まれ、2兎追いかけて、3兎を得るというようなことを目指すのが、これからの時代だと思います。 敏(37歳・(株)日立製作所)
二兎の種類と追い方が問題だと考えます。企業戦略にあっている、二兎を終える体制がある、もしくは、二兎が類似していたり、両方ともに過去に経験があり捕まえる確率が高いのであれば、積極的に追いかけても問題ないと考えます。
要は自分の守備範囲に入っているかどうかが問題ではないでしょうか。守備範囲を超えて深追いすると、今まで捕れていたものも守備範囲外となり、結局一兎も得られなくなると考えます。
石原(MDIS)
理想的には、まず1つのプロジェクトが確実にこなせるようにしてから、組織横断的なプログラムマネジメントへ移行すべきであろう。しかし、現実は、そのようなプロジェクトでは、高収益が得られないために、会社戦略として、そういったマルチプルPMの実践が必要となる。つまり、走りながら考えるしかないという状況だ。筆者も、あまりたいした経験もなく、いきなりプログラムマネジメントに従事した経験があるが、そこでは、PMの基本は無論であるが、コミュニケーション能\力が非常に問われるということだ。幾層にもまたがった利害関係者の調整は、PM作業の90%以上になることは経験済みである。こうしたことからも、近年、コミュニケーション力に対する重要性が高まっているのだと思う。しかし、PMBOKなど体系立てられた座学である程度学ぶことの出来るPMスキルが大半であるのに比べ、コミュニケーション分野は少なく、それは座学ではあまり効果的に学ぶことはできないのが原状だ。これを打破するためにも、ITSSの活用し、それを実践で活かすことができるようなメンタリングなどのしかけつくりが今後注目を集めるものと考える 丹羽武志(インテック)