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第33回(2003.03.03)
プロジェクトマネジメントはなぜ変われないのか(3) |
◆エンジニアリングとは何か?
エンジニアリングという言葉は、社会資本や生産設備を生み出す技術を言っていた。しかし、最近では、さまざまな学問分野で確立された理論を人間の社会生活に必要なものを創出する技術だと考えるのが普通である。
とまあ、なんとも大上段なスタートで恐縮だが、このテーマの第3回はここから始まる。
エンジニアリングというのはモノづくりの方法論である。その中には要素技術もあれば、工法もある。また、上に述べたようなエンジニアリングの範囲の拡大ともに、計量的な管理も含まれるようになってきている。
つまり、工程の定量化を行い、計測を行い、分析を行い、工法を決定していくこともエンジニアリングの領分である。たとえば、生産管理というのはエンジニアリングのひとつの活動であるし、「管理」というのはモノづくりにおいてはエンジニアリングの活動である。これをよく覚えておいて欲しい。
◆なぜ、管理がマネジメントなのか
一方で、マネジメントというのはずっと「管理」と同義だと考えられてきた。これに異議を唱えたのはドラッカーで、彼は、組織の生産性を上げる唯一の方法をマネジメントだと位置づけた。それゆえに、マネジメントというのはドラッカーが「発明した」と言われている。
なぜ、この話がややこしいかというと、「管理」でも人は動くからだ。管理で人を動かすというのはどういうことかといえば、「1を言って1をさせる」ということである。管理の必要性を理解しようとすると、マクレガーの理論などを理解する必要があるが、その辺の話は第28回「戦略的思考をしようで紹介した書籍優秀なオタク社員の上手な使い方―マネージング・アインシュタイン
を読めば楽しく勉強できる。
では、マネジメントとは何か?「1を言って2以上をさせること」である。もう少し、正確にいえば、「1を言って2以上をできるようにすること」である。これは極めて明確な違いだと思うのだが、なぜか、「管理」と「マネジメント」は混乱している。
◆プロジェクト管理とProject Management
「Project Management」はもともと、エンジニアリングの活動として位置づけられてきた。これは非常に分かりやすい。計画を作る。それもWBSのような細かい単位までブレークダウンした計画を作って、それを規範として管理をしていくのが「Project
Management」だからである。このような「Project Management」は日本語でいえば、プロジェクト管理である。これが成立する構図というのに注意しておいて欲しい。この考え方が成立するのは、モノを作ることが目的の場合である。ところが、ビジネスはモノを作ることが目的ではない。利益を上げることが目的である。このような環境では、計画が規範にはならない。1日で計画したものを半日でできれば、半日分は利益である。つまり、管理上は1すればよいものを、2や3して欲しいのだ。これはマネジメントの考え方である。「Project
Management」という言葉は、いつのまにか、こちらに変わってきている。Modern Project Managementという言葉はこれを意味している。
ところが、多くの企業ではいまだに、管理を重視している。
◆組織成熟度とマネジメント
プロジェクトマネジメントのフレームワークの中では、マネジメントは成熟度という形で議論されている(ただし、診断的視点であり、マネジメント手法の視点ではない)。CMMでも、OPM3(R)でもよいが、大体、5レベルの成熟度モデルのレベル5というのは、自律的に改善されるというレベルになっている。つまり、レベル4までは管理でカバーするレベルであり、レベル5はマネジメントでカバーするレベルである。
それゆえに、多くの識者はまずは、管理を導入しようと考える。われわれは、管理とマネジメントは異質のものであり、「管理の延長線上にマネジメントはない」、つまり、レベル4の延長線上にレベル5はないと考えている。レベル4までもマネジメントとして達成していくことが重要だと考えている。
企業戦略として、レベル4をゴールとするのであれば、管理の導入が最適の方法である。瞬く間に、収益性が上がっていくだろう。レベル5を目指すならマネジメントの導入以外にありえない。そこでは、個人のレベルのマネジメントから始まり、組織レベルのマネジメントへ進むことにより、成熟していく。
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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士 株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
20年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「コンセプチュアル・マネジメント(無料)」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。
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