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第28回(2002.12.09) 
戦略的思考をしよう
 

◆マネージング・アインシュタイン
 著者が結構影響を受けた本「Managaing Einsteing」という本の邦訳が出版された。

優秀なオタク社員の上手な使い方―マネージング・アインシュタイン

というタイトルでダイヤモンド社からの出版だ。この本は、能力があるが、経験や経歴、知能レベルもまったく違うITエンジニアに代表されるようなハイテクワーカーたち(本書はこのような人をアインシュタインと呼んでいる)を、組織、あるいはプロジェクトの中でどのように使っていけばよいかという本である。すばらしい本なので、興味のある方はぜひ、お読みいただきたい。蛇足ながら、書き方はユーモアに満ち溢れているが、内容は忠実に組織論の学説を使って説明されており、IT系の仕事をしている方であれば、身近な話題で楽しく組織論を理解するという目的でも有用な1冊である。

◆アインシュタインが参加したいチーム
 さて、今回はこの中から、話のネタをとってみる。この本の中に自律的チームという話がでてくる。自律チームとは、「仕事」を遂行する責任だけではなく、「マネジメント」にも責任を追っているチームのことである。すなわち、本来的な意味合いでの、プロジェクトチームのことである。「マネージング・アインシュタイン」によると、アインシュタインが参加したくなる自律チームとは、以下のような性質を持つチームだそうである。

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(1)思い通りにプロジェクトを進める権限が与えられている
(2)仕事の進め方について、計画と管理を任されている
(3)自分たちのペースで仕事のスケジュールを決められる
(4)目標の設定とともに、所属メンバーの査定もチームが行う
(5)他のチームやプロジェクトと協力して仕事を進められる
(6)必要な研修が受けられる
(7)新しくチーム入りするメンバーを自分たちで選べる
(8)懲戒もチーム内で行える
(以上、「優秀なオタク社員の上手な使い方―マネージング・アインシュタイン」P121−122より抜粋)
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◆原点に立ち返る
 PMコンピテンシーなど、PMの特性について議論する動きがあるが、著者はプロジェクトマネージャーの適正について、いつもこの8項目を挙げて、「直感的に考えて、このようなチームを任せることができるかどうかを考えてみてください」ということにしている。また、逆にプロジェクトマネージャーになるには何をしなくてはならないかというときにも、この8項目を掲げることにしている。この8項目をみて、このチームを運営するために何が必要かということが理解でき、実行できるようになってくださいという言い方をしている。さらにいえば、プロジェクトマネジメントの手法がどうして存在しているかを考える場合にも、この8項目を考えてみるといい。

◆プロジェクトマネジメントとは問題解決
 ひとつだけ例を挙げてみよう。たとえば、「自分たちのペースで仕事のスケジュールを決められる」ためにはどうすればよいか?計画を管理を自らで行うことは大前提だ。やってはならないことはすぐに思う浮かぶ。顧客の意向を無視することだ。まず、顧客との折衝をうまく行えることが思い浮かぶ。つまり、ステークフォルダーをきちんと特定し、対応する戦略を作っておくこと。その点も含めて、リスクを的確に想定できることも重要である。さらに、これはメンバー各自が勝手に進めるということではない。自分たちのペースのペースを守ろうとしたら、自分の作業進捗の透明性を上げて、他のメンバーとの協調をとるしかない。そのためには、コミュニケーションをいかに上手に行うかが最大のポイントになる。といった具合である。

◆戦略的発想をしよう
 プロジェクトマネジメントというと、PMBOKだの、ISOだのという前に、基本に立ち戻り、何をしたいのか、そのためには、何をしなくてはならないかからスタートすべきである。つまり、

 「あるべき姿」→「ギャップ」→「課題」→「解決方法」=PM手法

という視点で捉えない限り、プロジェクトマネジメントがその企業に定着することはないだろう。ニューウェーブプロジェクトマネジメントのあるべき姿は上の8項目であるが、「あるべき姿」は企業それぞれであり、アインシュタインなんか要らないという企業もたくさんあるだろう。それはそれで、企業の戦略の問題である。その意味で上の8項目がすべての企業で「あるべき姿」になるとは思わないが、こういう戦略的発想が重要であることだけは間違いない。

【参考資料】
自律チーム型組織―高業績を実現するエンパワーメント



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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
20年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「コンセプチュアル・マネジメント(無料)」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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