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第32回(2002.02.17) 
プロジェクトマネジメントはなぜ変われないのか(2)
 

◆プロジェクトをやり遂げる
 前回からの続き。

 前回、企業の日常的な活動をプロジェクトとして行うようになり、企業におけるプロジェクトそのものの位置づけが変わっているというところまで話をした。プロジェクトマネージャー養成マガジンのセミナーで、たくさんの人と話をしたが、ITだけではなく、製薬などでも同じような現象が見られるようである。

 専門家を集めてプロジェクトを編成するのであれば、プロジェクトマネジメントの重要な作業は、(計数)管理と、調整である。ところが、前回も書いたように、現在のプロジェクトでは専門家を集めるというのは現実問題難しいので、管理と調整だけでは不十分である。そこで必要になるのが、リーダーシップである。リーダーシップという言葉がわかりにくければ、プロジェクトを牽引していく役割である。もっといえば、プロジェクトを最後までやり遂げることのできるリーダーが必要なのだ。

◆プロジェクトをやり遂げる5つの条件
 もちろん、精神論ではない。リーダーとして機能し、合理的に最後までやり遂げる能力を持っていなくてはプロジェクトマネージャーとして機能しない。そのためには、5つの条件が必要である。

(1)プロジェクトのあり方へのビジョンを持っている
(2)率先してビジョンに向かう
(3)プロジェクトをファシリテートする
(4)プロジェクトメンバーを支援する
(5)プロジェクトを通じてプロジェクトメンバーを育てる

◆ビジョンと実行
(1)のプロジェクトのあり方へのビジョンとは、「なぜ、プロジェクトでやるのか」ということに対して明確な考えを持っているということである。これがないと、計画は作れても実行ができない。何か、計画外のことが起こったときに、判断の基準を持たず、ましてやメンバーとそれを共有することができない。逆にいえば、「目の前の仕事をプロジェクトとして行っている意味」をメンバーと共有できて初めて、プロジェクトのゴールに達成する原動力を得ることができる。そのためには、まず、プロジェクトマネージャーが明確なビジョンを持つ必要がある。
 そして、それは計画に反映されるだけではなく、プロジェクトマネージャーが自らロールモデルとなり、「実行」していかなくては、プロジェクトで共有することはできない。これが2番目である。

◆ファシリテーション
 そうして動き出したプロジェクトは時として、方向性を失うことがある。そのようなときには、プロジェクトマネージャーは、少し高みに立ち、プロジェクトを正しい方向性に向けてファシリテートしていく必要がある。
 その場合に重要なことは、あくまでもファシリテートであることだ。つまり、「プロジェクトマネージャーのやり方」でメンバーがやることではない。あくまでもメンバーのやり方でプロジェクト作業を行うことに理解を示し、そのやり方でやり遂げるにはどうすればよいかをメンバーと一緒に考えてあげる。つまり、(これは要員レベルのファシリテートであるが)、作業を支援するのではなく、「立場を支援」するということである。
 ところが、そうはいっても、冒頭に述べたように、メンバーがそのような支援に値する十分なスキルを持っているとは限らない。そこで、メンバーのスキルを向上させることに同時に取り組む必要がある。そこでは、自らが自分の抱えている問題に気がつき、それを是正するために学習をし、対処していくという方向に「自己決定として」進ませる必要がある。プロジェクトには時間がない。だから、いわれたとおりやれというのは、必ずしも正しくない。リスクは低いかもしれないが、生産性も低い。自己決定させることはリスクを高くするが、そこで得られる生産性(リターン)も高くなる可能性がある。このリスクとリターンに人材の育成を重ね合わせるととるべき道は決まってくるだろう。

◆はやり言葉でいうと。。。
 ちなみに、この5つを、「はやり言葉」で書くと

(1)戦略的思考
(2)サーバントリーダーシップ
(3)ファシリテーション
(4)メンタリング
(5)コーティング

となる。これは、まさに、「マネジメント」でこの2〜3年注目されている流行モノである。


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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
20年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「コンセプチュアル・マネジメント(無料)」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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