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第34回(2003.03.17)
マネジメントプロセスは管理されていますか? |
◆プロセスと評価
日本でもプロセス管理がだいぶ普及してきた。特に、営業、マーケティングなど、人的な要素が大きいプロセスにもプロセスマネジメントが行われるようになってきたのは注目に値する。「プロセスに注目する」という意味合いはしばしば、誤解されているので、最初にその意味を説明しておきたい。従来、日本型経営はプロセスに「注目」していた。それが成果主義ということで「結果」に注目するようになってきた。ところが皮肉なことに結果に注目するようになって、逆にプロセスの重要性に気が付くようになってきた。だから、昔のままでよかったじゃないかという意見があるが、これは誤解だ。昔、プロセスに注目していたのは評価対象としてプロセスに注目していたのだ。つまり、「一生懸命がんばったじゃないか。結果が出る出ないは運だから仕方ない」という発想でマネジメントを行ってきた。つまり、結果は問わない、成り行き任せというやつだ。今、プロセスが注目されているのは、結果を出すためであり、評価するためではない。プロセスを標準的に管理することによって、「一定の結果」を出せるだろうという発想である。例えば営業プロセスを標準化し、管理することによって営業成績の個人差をなくすという発想だ。よって、結果がでなければ、評価されることはない。言い換えると、個人の業績の前に、組織(チーム)の業績を評価しようという考え方に他ならない。連帯責任というわけではないが、いくらプロセスに忠実に行動していても、プロセスが不適切であれば、組織として結果は出ず、そのプロセスにしたがって行動してきたメンバーの業績は評価されない。一昔前の日本式の業績評価とは根本的に異なることがお分かりいただけるだろう。
◆プロジェクトマネジメントでは
そのような風潮の中で気になるのはプロジェクトマネジメントにおけるプロセスの管理である。例えば、PMBOK(R)を例にとれば、1つのフェーズの中にInitiation、Planning、Controlling、Execution、Closing5つのプロセスが存在しており、それぞれプロセスがさらに細分化されたマネジメントプロセスから構成されている。例えば、Planningには
スコープ定義
タスク定義
資源計画
スケジュール決定
予算決定
というマネジメントプロセスがある(説明の都合上、省略しているものがある。正確なマネジメントプロセスを知りたい方はPMBOK(R)ガイドを参照のこと)。
ところが、プロジェクトマネジメントでは、マネジメントプロセスの管理をすることは余りない。プロジェクトは一種の権限委譲なので、目的を達成さえできれば、その手段、つまり、プロセスは問わないということなのだが、実際にはマネジメントの品質というのは問題視されている。QCDやリスクに関しては、別途、ISOなどに沿って品質管理部門がプロジェクトの計画承認をし、結果の管理をしているし、若干のプロセスマネジメントもしている企業は結構あるが、プロジェクトマネジメントプロセスを全般的に管理をしている企業はあまり多くない。ここは混乱のないようにしてほしいのだが、ISOはプロジェクト作業のプロセスを管理するものであって、プロジェクトマネジメントのプロセスを管理するものではないし、ISO10006にしてもISO9000に従った作業を管理するためのプロジェクトを管理するためのマネジメント標準である。
ところが、QCDに限らず、コミュニケーションマネジメント、スコープマネジメントなどはマネジメントプロセスなどを管理する意義は大きいプロセスは多い。特に、進捗管理のプロセス、変更管理のプロセスは管理されることが望ましい。しかし、現実には、マネジメントプロセスの管理は、方針や指針という形で計画はあるが、管理はプロジェクトマネージャーに任されているのが現状である。
◆PMO
先進的な企業ではPMOがこのような役割を果たしているケースもあるようだ。しかし、どうも、マネジメントプロセスの管理は、プロジェクトへのエンパワーメントの弊害だと考えている人が多い。この認識も誤った認識である。
マネジメントプロセスを管理するとはプロジェクトマネジメントの内容を決めることではない。あくまでもマネジメントが正しい流れで行われているかどうかを管理することである。
したがって、マネジメントプロセスの管理はPMOのミッションのひとつであるとともに、プロジェクトマネジメントの組織成熟度を上げていくために不可欠な管理である。
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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士 株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
20年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「コンセプチュアル・マネジメント(無料)」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。
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