PMstyleはこちら |
第27回(2002.12.02)
ソリューションとしてのプロジェクトマネジメント |
◆PMは何のソリューションか?
今回は、プロジェクトマネジメントが注目されるようになりだしてから、ずっと気になっていることを考えてみる。それは、プロジェクトマネジメントとはいったい何に対するソリューションなのだろうかということである。このノートの第19回に投資対効果の話を書いた。その続きでもある。
多くの人がプロジェクトマネジメントに期待しているものは、なんらかの問題点の解消である。プロジェクトマネジメントをきちんとすれば、コストを下げることができる、納期遅れを出さなくてすむ、人材を有効に使える、などなどだ。著者にプロジェクトマネジメントの導入のコンサルティングを依頼する企業もほぼ、例外なくそうである。つまりは、オペレーションレベルの問題解決のソリューションなのだ。
◆CBPのメトリクス
少し長くなるが、何度か紹介しているCBP(Center Business Practices)の「Value of Project Management in IT Organizations」という調査報告書で、価値のメトリクス(計測指標)にあげられているものを列挙する。これらが改善されればプロジェクトマネジメントは価値を提供していると見ている。
投資回収
市場投入時間
顧客満足度
戦略の実行
時間と予算
品質
労働時間の効率
スケジュールの効率
コストの効率
欠陥率
コンポーネントの大きさ
相互レビューにおける欠陥率
スタッフの生産性
応答時間
欠陥を直す平均時間
スケジュール見積もり
コスト/工数見積もり
欠陥率の見積もり
コンポーネントサイズの見積もり
品質見積もり
である。
これを、ざっと分類してみると、いくつかのカテゴリーがある。ひとつは、経営の戦略性の強化である。これには、投資回収時間だとか、市場投入時間、顧客満足の向上といった項目が該当している。二つ目は見積もり(計画)精度の改善である。見積もりとなっているものはすべてこれである。これらは経営品質の改善につながっていく。三番目は作業の効率の改善である。QCDに関する項目はすべてこれである。
◆改善されるメトリクス トップ3
さて、調査結果で、改善率が高いものを上から3つあげると
戦略の実行
顧客満足度
スケジュールの見積もり
の3つになっている。ただし、この調査では、従業員100名以下の企業、千人以下の企業、千人以上の企業に分類して調査結果を示している。このベスト3は全体でのベスト3であり、それぞれのカテゴリーで見ると異なるカテゴリーもある。(ちなみに低いもの3つは、コンポーネントの大きさ、同じくコンポーネントの見積もり精度、品質の見積もり精度である)。
この結果はたいへん興味深い。これらの企業がプロジェクトマネジメントのご利益だと考えているのは、コストや納期(市場投入時間)ではなく、かなり、経営戦略との関連の強いものなのである。
◆PMはアカウンタビリティのソリューション
これをどのように読むのか?プロジェクトマネジメントが与える最大のご利益はアカウンタビリティだと思う。あるプロジェクトで納期遅れのトラブルが発生しそうになったときに、僕のクライアントで「納期遅れが問題なのではない。いつできるかがわからないのが問題なのだ」と言った企業がある。そのとおりだと思った。確かに、ITの浸透により、ビジネスの流れが速くなってきていることは事実である。しかし、速さに対応する方法は自分たちのスピードを速めることがすべてではないだろう。むしろ、自社の活動のスピードを戦略的に定めることの方が重要かもしれない。そのときにキーになるのは、実行力である。言い換えると、自分たちの活動のアカウンタビリティを高めることである。そのための具体的な対策はスケジュールの見積もりの精度を上げることであり、また、実行の状況の把握をきちんとしていくことである。プロジェクトマネジメントによってそれが可能になり、自社の戦略を実行する力になり、また、それが顧客満足に通じているという風に読めるのではないだろうか?
これがプロジェクトマネジメントがビジネスに与えるソリューションであろう。
【参考資料】
Value of Project Management in IT Organizations、CBP
(書店では販売されていません。CBPのページから購入できます。
◆関連するセミナーを開催します
━【開催概要】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆ 本質に注目したコンセプチュアルな問題解決 ◆7PDU's 日時:【東京】2019年 03月 07日(木)10:00-18:00(9:40受付開始)
場所:国際ファッションセンター(東京都墨田区) 講師:好川 哲人(株式会社プロジェクトマネジメントオフィス) 詳細・お申込 http://pmstyle.biz/smn/conceptual_solve.htm 主催 プロジェクトマネジメントオフィス、共催PMAJ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【カリキュラム】
1.なぜ、コンセプチュアルであるべきか
2.コンセプチュアルな問題解決の流れ
3.本質的問題の発見
【エクスサイズ】問題の本質を見極める
4.本質に注目した創造的問題解決の方法
【エクスサイズ】本質に注目した問題解決
5.問題解決をコンセプチュアルにするポイント
【エクスサイズ】各ポイントのエクスサイズ
6.うまく行かないときの対応
7.コンセプチュアルな問題解決エクスサイズ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
|
|
前の記事 | 次の記事 | 記事一覧 |
|
著者紹介
好川哲人、MBA、技術士 株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
20年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「コンセプチュアル・マネジメント(無料)」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。
メルマガ紹介
本連載は、「PM養成マガジン」にて、連載しております。メルマガの登録は、こちらからできます。 |
スポンサードリンク |
|