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第19回(2002.09.02)
プロジェクトマネジメントの費用対効果 |
No.17から続けているリーダーシップ考はちょっと重いので、今回は一回お休みで、少し軽めの話題を。
◆プロジェクトマネジメントは必須か
プロジェクトマネジメントのセミナーの講師をすると時々、「プロジェクトマネジメントがないとプロジェクトはできないのか」という質問を受けることがある。この質問、グッドクエスチョンだと思う。
例えば、ピラミッドを作るときに、プロジェクトマネジメントをしなければどうなっていたか?システムを開発するときにプロジェクトマネジメントをしなければどいうなるか?ピラミッドは今では検証することはできないが、たぶん、できていただろう。システム開発はどうか?これは今でも結構やっている。これもできる。
◆プロジェクトマネジメントで変わること
では、プロジェクトマネジメントをするのとしないのは何が違うのか?まず、プロジェクトマネジメントをしないということは計画をしないということである。計画をしないということは成り行き任せということである。いつできるかはできてみないと分からない、どのくらいの品質のものができるかもできてみないとわからない、いくら費用がかかるかもできてみないと分からないという世界だ。
プロジェクトができたかどうかの判断はプロジェクトの目的が達成できたかどうかなので、これをプロジェクトができたというのかどうかは目的次第である。「金や人はどれだけ使ってもいいし、どれだけ時間がかかってもよい。わが社の次の50年を支える基礎技術を開発する」というプロジェクトであればできたといえるだろうし、「6ヶ月後に運用開始する顧客管理のシステムを5000万円以内で開発する」という目的であればできたとはいえない。
◆プロジェクトマネジメントの役割
ここで両者に共通することがある。それは、プロジェクトマネジメントを行えば、コスト、時間をセーブし、成果物の品質を高くすることができる。しかし、これはできない基礎技術の開発ができるようになるという意味ではない。できないものはできない。しかし、例えば、計画に実験計画法を使うことによって、無駄な実験を省き、コストと時間を節約することはできる、といったような意味である。もちろん、例えば時間的な制約がある場合は、それにより始めてできるようになるケースもあるだろう。また、プロジェクトマネジメントを行えば品質が上がるという意味でもない。品質を上げようと思わないのに、品質は上がらない。
◆プロジェクトマネジメントにもコストがかかる
ここで考えなくてはならないことは、プロジェクトマネジメントにもコストがかかるという現実である。このコストはプロジェクトの必要経費だと考えがちであるが、本当にそうだろうか。確かにある範囲のマネジメントコストは必要経費だといってもよいだろう。しかし、例えば、5000万円の受注プロジェクトに2500万円のマネジメントコストをかけたとすると明らかに行き過ぎであろう。
◆プロジェクトマネジメントは投資
そのように考えると、プロジェクトマネジメントも一種の投資である。問題はその基準を何に求めるかである。考え方は3つあると思われる。一つ目は、プロジェクトそのものの重要性である。プロジェクトの重要性が高いものは、マネジメントコストの比率を高くすべきであろう。公的プロジェクトではプロジェクト評価基準が確立されているのでそのような基準を使うことができる。民間企業の行うプロジェクトは難しい部分があるが、これについては、プロジェクトポートフォリオのような手法を使って、優先順位をつけていくといった方法になるだろう。二つ目は、プロジェクトマネジメントの効用である。プロジェクトマネジメントにより、どの程度、プロジェクトのパフォーマンスが改善されるか?パフォーマンスの改善分がマネジメントコストの許容コストになる。注意すべきことは、パフォーマンスを時間とコストだけではなく、品質も含めた総合的な指標で捉えることである。三つ目は、そのプロジェクトがどのようなリスクをどの程度持っているかである。リスクが大きくなるとマネジメントコストの投資は大きくとるべきだろう。
◆プロジェクトマネジメントの適正投資
これらの要因をベースにして、適正な投資額を定量的に決めることができるかどうかは難しいところであるが、明確な方針を持ってマネジメントのグレードを判断していくことは重要だと思われる。そのような判断はプロジェクトをデザインする段階でするのが望ましいだろう。
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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士 株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
20年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「コンセプチュアル・マネジメント(無料)」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。
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