第159回(2007.09.11)
小規模プロジェクトに必要なマネジメントは何か?

◆はじめに

第151回で小規模プロジェクトのマネジメントという記事を書いた。この記事に対して、数名の方から2種類のまったく同じコメントを戴いた。

  第151回 小規模プロジェクトに対するマネジメントの必要性

(1)小規模プロジェクトには小規模プロジェクトのやり方をしなくてはうまくいかないことはわかっているが、PMBOK(R)に基づいた組織の標準はそれが考えられていない

(2)小規模プロジェクトは組織としては決まったやり方がなく、属人的になっている

というコメントだ。(2)に関しては、プロジェクトマネジャーに依存する部分が大きいのは仕方ないが、何らかの共通的なマネジメントは必要だ。そこで、あまり、重視せず、大は小を兼ねる、同じようにやっておこうという話になることが多い。


◆何もやらないよりはやった方がマシという錯覚

PMBOK(R)を適用するときに、必ず、問題になるのが膨大なドキュメントである。マネジメントをするのは目的がある。小規模プロジェクトに対して、マネジメントの目的が何かを考えずに手法の適用をすると、必ず、オーバースペックになるだろう。特に、PMBOK(R)のような標準は、いろいろなケースを想定して策定されているので、間違いなく余計なものが相当含まれていると考えた方がよい。

そこで、必要なものだけ取り入ればよいということになる。実際に、PMI(R)も自社、自分のプロジェクトにうまく適合するように使ってくださいという。ところが、この作業はそんなに単純な作業ではない。アプリケーションに適合させるのもかなりの努力を要するが、プロセスを省略するというのは勇気が要る。

減らそうとすれば、まず、プロジェクトマネジメントスタイルを明確にすることが必要になる。計画で何を押さえ、何をコントールしておけばプロジェクトがスムーズにいくかを見極める必要があるが、これが如何に難しい作業であるかは想像に難くないだろう。そこで、「やらないより、やった方がマシ」という錯覚に陥る。

この錯覚が何を引き起こしているかは説明するまでもないだろう。プロジェクトマネジメントの実行不全である。


◆オーバースペックな標準は実行不全を引き起す

ドキュメントを作ることが目的化してしまい、マネジメントそのものが実行しなくなる。計画ができ、PMOのレビューを受け、合格すれば安心してしまう。後は、チームのマネジメントではなく、上司に如何に報告するかを考え、動く。

「マシ」だというなら、計画を作らなくてもよいから、「必ず、毎朝、チームミーティングを行い、情報交換をする」といったことでも決めたほうがはるかにましだ。実際にそんなマネジメントで、何とかやっているプロジェクトも少なくない。


◆マネジメントとは何かを追求する

これもひとつの方法だが、一応、会社としてPMBOK(R)を使っていますという場合にはさすがにまずい。こんなときに、考えたいことがプロジェクトマネジメントの必要最小限はどこにあるのか?ということ。もっといえば、原理だ。

第153回で

  第153回 プロジェクトマネジメント原論

という話をしたが、例えば、これが原理だとして、そのためにはどのようなプロセスが必要かという整理が必要なのだ。これを我々はシンプルプロジェクトマネジメントと呼んでいる。


◆立上げプロセスのシンプルプロジェクトマネジメント

立上げを考えてみよう。立上げで何をしたいか?プロジェクトを実行するための条件を明確にし、それについて組織の承認をえることだ。一般的に考えれば他にもいろいろとあるが、小規模なプロジェクトであればこれだけやれば十分である。

プロジェクト憲章を作るに当たって、まずは、「プロジェクト発足経緯の確認」することが必要である。このためには、主要なステークホルダやプロジェクトスポンサーと面談をし、確認したり、あるいは議論する必要がある。特に、制約条件と前提条件の整理が重要である。その上で、プロジェクト憲章を作り、レビューを受ける。そして最後は、そのプロジェクト憲章を持ってプロジェクトスポンサーに相談をし、プロジェクト憲章の内容でプロジェクトを進めることの承認を得る必要がある。

これだけで、PMBOK(R)でやりたいことはやっていることになるだろう。計画プロセス、コントロールプロセスについてもぜひ、考えてみてほしい。

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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
20年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「コンセプチュアル・マネジメント(無料)」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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