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第151回(2007.07.10)
小規模プロジェクトに対するプロジェクトマネジメントの必要性 |
◆目的と目標と計画
これまで、プロジェクトマネジメントは、大規模化、複雑化するプロジェクトに対応できるように進化してきた。このため、どんどん、複雑になってきている。PMBOKでいえば、プロセスの数がどんどん増えてきて、あれもやれ、これもやれという感じになってきている。
このような中で、規模、複雑性に並ぶもうひとつの軸として注目されだしたのが流動性である。流動性とは、初期段階で決まったことがどのくらい変わるかである。
目的と目標という言葉がある。例えば、
目的:すべての顧客に対してソリューションを提供する
目標:○○の機能を持つ商品を△年△月までに、□□円以内の価格で提供する
というような使い分けがされる。この目標に対して
成果物スコープ(品質、原価を含む)
作業スコープ
スケジュール
コスト
に対する計画を作ってプロジェクトを進めていく。
◆注目されだした流動性
プロジェクトは目的が変わったら失敗である。というよりも、仕切りなおしだ。流動性の議論は、ビジネスの環境の変化により、目的を達成するために、目標を変えざるを得なくなることが多くなってきたという話だ。
やっかいなのは、流動性への対応と、大規模化への対応というのは相反することが多いことだ。プロジェクトが大規模になればなるほど、そのプロジェクトに従事するメンバーの数が増え、綿密な計画が必要になる。ところが、計画を綿密にすると計画の柔軟な変更が難しくなる。
そのように考えると、流動性と大規模性というのを同じ枠組みで扱うことには無理があるし、現実的でもない。プロジェクトの立上げを考えても、大規模なプロジェクトになればなるほど、初期の段階で可能な限り固めてから、プロジェクト実施中の変更は可能な限り抑えようという進め方になる。それでも実際には固まらない部分があるので、段階的詳細化のようなスコープマネジメントをする。
◆プログラムマネジメントがもたらすもの
ところが、最近、様子が変わってきた。プログラムマネジメントが登場してきたためである。プログラムマネジメントは、上に述べたようにプロジェクトの目的を達成するために目標を変えながら進めていくことを可能にするマネジメントである。そのために、プログラムマネジメントでは、プロジェクトの目的達成をいくつかの目標の集積に分ける。いくつかの目標のひとつひとつがプロジェクトになり、全体としてプログラムとして定義される。
これはある意味、画期的な変化である。段階的詳細化はあいまい性を扱う手法である。つまり、決まっていないことをプロジェクトマネジメントとして合理的に扱うために考えられた手法だ。
これに対して、プロジェクトをプログラム化するというのは変化を想定した考え方を可能にする。
◆小規模プロジェクトのマネジメントが全体の成功の鍵
例えば、こういう例を考えてみよう。SPA(Speciality store retailer of Private label Apparel)のシステムを作るとする。製造から小売りまでを顧客起点で連動させるというシステムだ。ところが、このような仕組み作りをする場合に、店舗の情報化をすることにより、店舗オペレーション(人間系)が変わってくることがある。すると、今のオペレーションを前提にして全体の仕様を決めても必ずしもうまく行か
ない。
そこで、全体構想をした上で、まず、小売りの管理のシステムを作り、その変化を引き起こしてしまう。その上で、小売りのオペレーションの変化を見ながら、それに併せて生産管理や流通管理のシステムを作っていく。
つまり、プログラムマネジメントの時代になってくると、従来のように大規模なプロジェクトを失敗させないためのプロジェクトマネジメントではなく、プログラムを構成する小規模なプロジェクトを柔軟に進めていくマネジメントが求められるようになってくる。
このようにプログラムマネジメントの時代を迎えて、これからは小規模なプロジェクトの柔軟なマネジメントというのが重要性を帯びてくることが予想される。
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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士 株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
20年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「コンセプチュアル・マネジメント(無料)」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。
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