第153回(2007.07.31)
プロジェクトマネジメント原論

プロジェクトマネジメントは、上位組織(プロジェクトスポンサー)から

 ・目的
 ・前提条件
 ・制約条件

を付与したプロジェクトについて、任命されたプロジェクトマネジャーがこの範囲で目的を達成する一連の活動である。

ここで目的とは、組織がそのプロジェクト(仕事)を実施する理由である。一般的に、その目的が一つのプロジェクト(目標)で目的が達成されることは珍しく、複数のプロジェクト(目標)により目的を達成することになる。プロジェクトスポンサーにとっての大きな課題は、如何に数少ないプロジェクトで目的を達成するかであり、そのためには、目的に対するプロジェクトの寄与度を管理し、寄与の大きなプロジェクトを選んで実施していくことが求められる。

ここで問題になるのは、プロジェクトの「目標」を誰が決めるかである。原則的には、目標はプロジェクト側が決め、その上でプロジェクトスポンサーの承認を得る。プロジェクトスポンサーがプロジェクトの目標を承認する基準になるのは、どの程度、目的に寄与しているかである。プロジェクトスポンサーは上にのべたように寄与を管理することにより、プロジェクトごとに「望ましい寄与度」を持っている。これと比較して、寄与が不十分だと判断した場合にはプロジェクトスポンサーはその目標を引き上げを要求し、プロジェクトマネジャーは抵抗する。調整が不調に終わった場合には、プロジェクトマネジャーを再任命するということもありうる。

このようにして、プロジェクトとして、目標、前提条件、制約条件が決定され、それに基づいて、目標を達成するためのアプローチが検討される。そして、そのアプローチに基づいてプロジェクト計画が策定される。

この一連のプロセスでポイントになるのは、プロジェクトスポンサーとの目標合意の際の基本的な人のパフォーマンスである。非プロジクト業務では、目標は業務実施者が通常のパフォーマンスを発揮することによって可能なものに設定する。従って、目標を承認する(あるいは決定する)管理者は、実施者のパフォーマンスを管理しておけば、高い確率で目標は達成される。ところが、プロジェクトにおいては、上に述べたように一つでも少ないプロジェクトで目的を達成したいという心理が働き、より高めの目標を設定するのが常である。従って、実施者のパフォーマンスだけを管理していても、その目標を達成することは難しい。

このような状況で、アプローチの検討においては、

 ・組織共通プロセスの効率化
 ・業務プロセスの効率化
 ・人(チーム)のパフォーマンスの向上

の3つの視点からさまざまな方策が検討されることになる。

後の2つについては、プロジェクトマネジャーの責任においてプロジェクトマネジメントの一環として実現される。しかし、最初の組織共通プロセスの効率化はプロジェクトではできない。ここは、プロジェクトスポンサーが引き取り、組織に働きかけていくことにより効率化が実現される。そして、プロジェクトは新しい組織プロセスと新しい業務プロセス、および、人(チーム)のパフォーマンス向上の3つを組み合わせることによって、プロジェクトスポンサーと合意した目標を達成することになる。

このようにして、アプローチは計画化され、その後、プロジェクトは計画によって統制される。そして、統制が成功すれば、目標は達成され、プロジェクトスポンサーが望んだ目的への寄与が達成される。

以上がプロジェクトマネジメントの原理である。

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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
20年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「コンセプチュアル・マネジメント(無料)」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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